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汚染された川で「異種交配」の増加を確認

  • 2026.7.15
ソードテール属のハイブリッド / Credit:Dan Powell(Stanford University)

魚にとって鼻は、単に餌のにおいを探すための器官ではありません。

水中に漂う化学的な情報を読み取り、自分と同じ種の交配相手を見つけるためにも使われています。

しかし米スタンフォード大学(Stanford University)などの研究チームは、メキシコの汚染された河川で魚の嗅覚器官が傷つき、別種との交配が増えた可能性を示しました。

研究成果は2026年6月30日付で、科学誌『Current Biology』にオンライン掲載されています。

目次

  • においで保たれていた2種の境界が「川の汚染」で崩壊している可能性
  • 汚染された下流で2種が交雑集団へ変化

においで保たれていた2種の境界が「川の汚染」で崩壊している可能性

研究対象は、メキシコの山地河川に生息する近縁なソードテール属の2種、Xiphophorus malincheXiphophorus birchmanniです。(画像はこちら。※プレスリリース

どちらも全長約5センチで、同じ川に暮らし、交雑して子孫を残すこともできます。

それでも通常は、同じ種や近い遺伝的背景を持つ相手を選ぶ傾向があるため、2種の違いは保たれます。

こうした異なる種同士の交配を妨げる仕組みが「生殖的隔離」です。

ソードテールの配偶者選びでは、においが重要な手がかりになると考えられています。

今回、研究チームは、人間活動による水質変化が嗅覚を乱し、生殖的隔離を弱めている可能性を調べました。

調査はメキシコのウアステカ地方にある4つの河川の少なくとも10地点で行われました。

また研究チームは数千匹の魚のゲノムを解析し、それぞれが2種の遺伝的特徴をどの程度受け継いでいるかを調べました。

さらに水質や周辺の土地利用を調査し、魚の嗅上皮を顕微鏡で観察。

母親と胎内の胚の遺伝情報から交配相手の系統を推定し、一部では水質要因を再現した曝露試験も行っています。

その結果、交雑の状態は河川ごとに大きく異なり、都市化した町の下流では2種の遺伝的境界が崩れていました。

同じ場所では水質の変化、嗅覚組織の損傷、同じ系統の相手を選ぶ傾向の低下も確認されました。

より詳細な結果を次項で見ていきましょう。

汚染された下流で2種が交雑集団へ変化

特に大きな変化が見つかったのは、カルナリという町を通る河川です。

町の上流では、2種は同じ場所に生息していても、遺伝的には別々の集団として保たれていました。

ところが下流では、両種の遺伝的特徴をさまざまな割合で持つ魚が多数現れ、集団全体が連続的に混ざり合っていました。

そして下流の水は上流より濁り、硝酸塩やリン酸塩に加え、銅、鉛、カドミウムなどの濃度も高くなっていました。

また下流のメスでは、においを感知する嗅繊毛の欠損と、粘液を作る細胞の増加も確認されました。

研究者たちは、「ある意味で、人間が風邪で鼻づまりになったような状態だ」とたとえています。

さらに母親と胚の遺伝情報を比較すると、下流では自分と近い遺伝的背景の相手を選ぶ「同類交配」が上流より弱くなっていました。

このため研究チームは、水中の化学物質が嗅覚による相手の識別を乱し、異種との交配を増やした可能性を考えています。

ただし、汚染から嗅覚障害、配偶者選びの変化、交雑増加までの因果関係が、一連の実験で直接証明されたわけではありません。

今回示されたのは、水質変化と嗅覚組織の損傷、同類交配の弱まり、交雑集団の形成が同じ下流域で重なっていたという、強い状況証拠です。

そして、もともとの2種が1つの交雑集団に溶け合う「種の崩壊」が懸念されています。

こうした変化は、種の独自性そのものを失わせる可能性があります。

人間の活動は魚の命だけでなく、種の境界という見えにくい仕組みまで侵食しているのかもしれません

参考文献

Pollution linked to fish hybrids in Mexican river
https://www.eurekalert.org/news-releases/1134465

Pollution blurs the line between two fish species
https://news.stanford.edu/stories/2026/06/water-pollution-fish-species-hybridization-research

元論文

Increased rates of hybridization in swordtails are associated with water pollution
https://doi.org/10.1016/j.cub.2026.06.007

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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