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3時間だけ人間に化けられるたぬきと優しい人間の青年との物語。周囲との「違い」に悩みながらも日々頑張っている人に元気をくれる物語『たぬきはたぬき』【書評】

  • 2026.7.13

【漫画】本編を読む

「自分だけが周りとうまくいっていないのではないか」。そんな不安を抱えながら、毎日を懸命に生きている人は少なくないはずだ。『たぬきはたぬき』(堤葎子/徳間書店(COMICリュウ))は、「社会に少しなじめない」と感じている人の心に寄り添ってくれる作品である。

人間社会で暮らすたぬきの女の子・三つ葉の夢は、人間になること。人間の姿に化けることはできるものの、その時間はたった3時間だけ。そのためアルバイトをして生活費を稼ぐこともままならず、日々の暮らしはかなり苦しい。人間社会で自立して生きていきたい。けれど、自分の体の仕組みがそれを許してくれない。かわいらしい設定の中に、社会にうまくなじめないことの切実さがにじむ。

そんな三つ葉の前に現れるのが、同じ中華料理屋でアルバイトをする青年・露生だ。生活のために昼だけでなく夜も働こうとした三つ葉は、ついに限界を迎え、店の裏で動けなくなってしまう。心配した露生が三つ葉を探しに来たそのとき、彼女は人間の姿を保てなくなり、たぬきの姿に戻り、彼にたぬきであることを知られてしまう。だが露生は、三つ葉を問い詰めることも、アルバイト先に告げ口することもせず、ただそっと助けてくれた。そんなさりげない優しさが彼女の運命を変えていくことになる。

三つ葉が露生からもらったジュースの缶を、宝物のように大切にしている場面が印象的だ。缶に花を挿して飾る彼女の姿からは、人の優しさを真正面から受け取り、それを大切にする心が伝わってくる。誰かにもらったうれしいひとことや、ちょっとした気遣いを自分はちゃんと受け止めているだろうか。そんなことを考えさせられるだろう。

人間になりきれなくても、三つ葉は三つ葉のままでいい。そんなメッセージが、周りと同じようにできなくても、自分らしい生き方を大切にしてほしいと読み手に伝えてくる。2026年7月13日発売の2巻とあわせて楽しんでほしい。

文=つぼ子

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