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優秀な兄への劣等感、大学受験失敗。鬱々とした青年が祖母のドーナツ店で見つけた心の行き先とは? 古池ねじによる同名小説のコミック版【書評】

  • 2026.7.12

【漫画】本編を読む

『ドーナツ屋の夜のつれづれ』(煮込みそ:著、古池ねじ:原作、青井秋:キャラクター原案/KADOKAWA)は、古池ねじ氏の同名小説を漫画化した、深夜のドーナツ店を舞台にした心温まるヒューマンドラマだ。

東京で暮らす主人公の信也は、優秀な兄に対する劣等感をこじらせ、大学受験に失敗して鬱々としていた。思うように前へ進めずにいた彼は、父親の提案で京都にある祖母の店「カナドーナツ」を手伝うことになる。しかし6年ぶりに訪れた店は当時の素朴なドーナツ屋ではなく、女性客でにぎわう今どきの店に様変わりしていた。体力的に厳しくなった祖母が一見チャラそうなイケメン・レンに店を任せていることもあり、思い出とはほど遠いその光景に信也は戸惑う。

しかし、ひとつだけ変わっていないものがあった。口にしたドーナツの味が祖母が切り盛りしていたころのままだった。実は、レンは「儲かるとは思っていない、それでもこの店とドーナツが好きだから続けたい」という誠実な思いで店を守り続けていたのだ。そんなレンに翻弄され、ときに甘やかされながら、信也のクサクサとしていた心が少しずつ変わっていく。そして信也は店で手伝いをしながら過ごすうちに、カナドーナツに集まる人々の姿にも目を向けるようになる。

例えば、夜7時を過ぎるとひとりで店を訪れる小学生の男の子。彼はいつも窓の外をじっと見つめ、店内で静かに時間を過ごしている。常連客によると近所の子ではなく、母親とふたり暮らしで、その母親はドーナツ店の向かいにある居酒屋で夜も働いているらしい。信也は男の子が母親のいない寂しさから店に来ているのだと思っていた。しかし、彼がこの店に通う理由には、思いがけない気持ちが隠されていた……。

子どもながらに大切な人を気遣うその優しさを知ったとき、信也だけでなく読み手の心も温かくなるだろう。夜のドーナツ店で生まれる人と人とのつながりや思いやりを描いた小さなドラマを、ずっと見守っていたくなるはずだ。

文=つぼ子

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