1. トップ
  2. 甘やかされて育った人に共通する傾向とは。臨床心理士監修

甘やかされて育った人に共通する傾向とは。臨床心理士監修

  • 2026.7.3

「甘やかされて育った」と聞くと、わがままで自分勝手な人、というイメージが浮かぶかもしれません。けれど、本人が好きでそう育ったわけではありませんし、その傾向は大人になってからでも変えていけるものです。

甘やかされて育った人には、いくつか共通する傾向があります。それを知ることは、自分自身を振り返るときにも、身近にそうした人がいて困っているときにも、役に立ちます。

この記事では、「甘やかし」と「愛情」の違いから、よく見られる傾向、大人になって困りやすい場面、そして本人・周囲それぞれができる改善方法についてお伝えします。監修は、臨床心理士で公認心理師、一般社団法人マミリア代表理事・鎌田怜那さんです。

甘やかしと愛情はどこが違うのか

「甘やかすこと」と「愛情を注ぐこと」は、似ているようでまったく違います。この違いを理解することが、テーマ全体を考えるうえでの出発点になります。

愛情とは、子どもの気持ちを受け止め、安心感を与えながらも、年齢に応じた責任や我慢を経験させることを含みます。つまり、「気持ちは満たすが、課題は肩代わりしない」関わり方です。

子どもは、転んだり、欲しい物を我慢したり、失敗から学んだりしながら、少しずつ自立していきます。

一方、甘やかしとは、子どもが本来乗り越えるべき課題や我慢を、親が先回りして取り除いてしまう関わり方です。欲しい物をすべて与える、失敗しないように親が手を出す、わがままをそのまま通すといった関わりが続くと、子どもは「努力しなくても手に入る」「思いどおりにならないことはない」という感覚のまま育ってしまいます。

ここで混同されやすいのが、「甘えさせること」と「甘やかすこと」の違いです。

  • 甘えさせる
    子どもが求める愛情やスキンシップ、気持ちの支えに応えること。心の安定につながり、むしろ健全な成長を支える
  • 甘やかす
    子どもが自分でできること・乗り越えるべきことまで、親が肩代わりしてしまうこと

つまり、十分に「甘えさせる」ことは大切ですが、「甘やかす」ことは別の問題です。愛情と甘やかしを分けるのは、「子どもが自分で経験し、乗り越える機会を残しているかどうか」だと言えます。

甘やかされて育った人に見られやすい傾向

甘やかされて育った人には、次のような傾向が見られることがあります。すべてが当てはまるわけではなく、程度にも個人差があります。

思い通りにならないと強くストレスを感じる

子どもの頃から「欲しいものは手に入る」環境で育つと、思いどおりにいかない状況への耐性が育ちにくくなります。ちょっとした不便や我慢に強い不満を感じやすくなります。

人に頼ることが前提になっている

困ったときに誰かが助けてくれるのが当たり前だったため、自分で解決しようとする前に、まず人を頼る癖がつきやすい傾向があります。

責任を引き受けるのが苦手

失敗を親がカバーしてくれた経験が多いと、「自分の選択の結果を引き受ける」という感覚が育ちにくく、うまくいかないと人のせいにしがちになります。

地道な努力を続けにくい

すぐに結果が出ない物事や、コツコツ積み重ねる作業に対して、根気が続きにくいことがあります。

自分中心に物事を考えやすい

悪気があるわけではなく、「自分の希望が優先される」環境に慣れているため、他人の都合や気持ちに気づきにくいことがあります。

これらの傾向は、本人の「性格が悪い」のではなく、育ってきた環境の中で身についた"慣れ"や“クセ”のようなものです。新しい経験を重ねることで、十分に変えていくことができます。

次:甘やかされて育つと、大人になってこんな場面で困りやすい

甘やかされて育つと、大人になってこんな場面で困りやすい

甘やかされて育った傾向は、社会に出てから具体的な場面でつまずきとして表れることがあります。代表的な3つのシーンを見てみましょう。

1.仕事で注意・指摘を受けても改善しにくい

これまで叱られたり否定されたりする経験が少ないと、上司や同僚からの指摘を「攻撃された」「周りが悪い」と感じやすくなります。

本来は成長のためのアドバイスでも、強く落ち込んだり、反発したりしてしまい、フィードバックを受け止めるのが難しくなることがあります。

また、自分中心に物事を考えやすいため「そこまででもないだろう」と軽く受け流し、改善への意識が働かない傾向も見られます。それにより周囲の信頼を失ったり、スキルアップの機会を失うことも。

「なんでそうなる?」しゃべる内容がズレる人の思考回路とは

2.地道な下積みや雑務に不満を抱きやすい

すぐに評価や成果を求めてしまい、「なぜ自分がこんな仕事を」と感じて、地味な作業を続けられないことがあります。結果が出るまで努力を積み重ねる場面で、もどかしさを抱えやすいタイプです。

3.恋愛でパートナーに求めすぎてしまう

「自分の希望は満たされて当然」という感覚が残っていると、恋愛でも相手に多くを期待し、尽くしてもらうことが前提になりがちです。相手の事情や気持ちへの配慮が後回しになり、関係が一方通行になってしまうことがあります。

いずれの場面も、「相手が悪い」「環境が悪い」と感じやすいのが特徴です。しかし、他責思考ではなく「自分にできることはなかったか」と振り返る習慣を持つだけで、つまずきはぐっと減っていきます。

他責思考の人に見られる特徴とは。病気?性格?なぜ人のせいにしてしまうのか

甘やかされて育っても改善できる?

甘やかされて育った傾向は、年齢に関係なく改善できます。ポイントは、「気づき」と「小さな経験の積み重ね」です。ここでは、身近に思い当たる人がいて困っているときと、自分自身に思い当たるときに分けて紹介します。

身近に「困ったな」と感じる人がいるとき

身近に、甘やかされて育った傾向のある人がいて困っているときは、次のような関わり方が役立ちます。

何でも肩代わりしない

よかれと思って手を出し続けると、本人が経験から学ぶ機会を奪ってしまいます。本人ができることは、本人に任せましょう

境界線を引く

「これは引き受けるが、これはあなたの役割」と、線引きを言葉で伝えます。曖昧にすると、依存が強まりやすくなります

結果を本人に体験させる

失敗やその結果を、過度に守らずに本人に経験させることも成長のためには必要です

責めずに、事実を伝える

人格を否定するのではなく、「この行動がこういう影響を生んでいる」と具体的に伝えるほうが届きやすくなります

ただし、相手を「変えよう」とコントロールするのではなく、「自分はどこまで引き受けるか」を整えるのが基本です。変わるかどうかは、最終的には本人次第だからです。変わらないことによるデメリットは本人が引き受けることです。

「もしかして自分かも」と感じたとき

「自分は甘やかされて育ったかもしれない」と気づけたなら、それはすでに大きな一歩です。自覚することがもっとも難しいからです。次のような工夫から始めてみましょう。

「思いどおりにならないこと」に慣れる練習をする

小さな我慢や不便を、あえて避けずに経験してみる。耐性は、少しずつ育てることができます

小さな責任を引き受ける

「自分で決めて、結果も引き受ける」場面を意識的に増やすと、自立の感覚が育っていきます

指摘を「敵」ではなく「情報」として受け取る

注意されたときは「成長のヒントかもしれない」と捉え直してみましょう。改善方法が分からなければ相談してみましょう

相手の立場を想像する習慣を持つ

「この人は今どんな状況だろう」と考える癖をつけると、自分中心の視点から少しずつ抜け出せます

感謝を言葉にする

助けてもらったことを「当たり前」にせず、言葉にして伝えるだけで、人間関係は大きく変わります

「なんで私がしないといけないの?」と思ったときは要注意!

してもらって当然という考えが染み付いている証拠。「なんで私が?」と思ったときには「人生、何事も経験」「勉強させてもらいます」と言い換えるといいかもしれません。

このスキルが高まると、パートナーとのトラブルや子育てでのイライラの軽減にもつながります。将来のために、今から練習しておくという心持ちで取り組んでみてください。

監修者プロフィール

鎌田怜那(かまだ・れいな)

一般社団法人マミリア代表理事。臨床心理士、公認心理師。
【所属学会・協会】
・日本臨床心理士会
・日本公認心理師協会
・日本心理臨床学会
・日本アタッチメント育児協会
公式サイト https://mamilia.jp/

<Text:外薗 拓 Edit:MELOS編集部>

元記事で読む
の記事をもっとみる