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【独占インタビュー】「心臓に鳥肌が立った」東京ドーム決戦を経て――。ウェルター級の超新星・佐々木尽が、再び世界への渇望を叫ぶ理由(前編)

  • 2026.7.2

ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体王者の井上尚弥と、最強の挑戦者・中谷潤人が東京ドームで対戦した2026年5月2日。メインイベントに劣らぬ熱戦を展開したのが佐々木尽だった。5戦5勝の田中空を圧倒して東洋太平洋ウェルター級のベストを腰に巻いた。「心臓に鳥肌が立った」東京ドーム決戦を制した24歳が目指すのは、日本人の誰もたどりついたことのないウェルター級世界王座だ

5万5000人を沸かせた死闘「どちらかが倒れるまでやりたかった」

お互いの拳だけで12ラウンドを戦い抜くボクサーにとって、必要とされるものはたくさんある。たとえば、相手の弱点を突くテクニック、KOシーンをつくりだすパンチ力、無尽蔵のスタミナ、そして観客を魅了する華やかさ。この7月で25歳になる佐々木尽にはすべてが備わっているように見える。

佐々木の能力の高さを証明したのが2026年5月2日。井上尚弥と中谷潤人とのタイトルマッチに集まった5万5000人が「佐々木尽」の名前を記憶に刻んだはずだ。

「田中空選手との試合は絶対に勝たないといけなかった。相手のよさを壊すイメージで戦いました。3ラウンドくらいでKOするつもりでいたんですけど、なかなか倒せなくて判定勝ちになったのは残念。少し攻め方が単調だったかなと反省しています」

ダウンシーンはなかったものの、強打者同士の正面からの打ち合いで東京ドームの観客が沸きに沸いた。

「打ち合いになりましたけど、気持ちが折れることはなかった。ラウンドの制限なしに、どっちかが倒れるまでやりたかったですね。

あれだけの観客のいるところで試合をするのは初めてでしたけど、緊張はなくて、ワクワクして、楽しさにあふれていました。日常であんな空間はないじゃないですか。心臓に鳥肌が立つ感じで、『幸せだなあ』という思いが心の底から湧いてきました」

画像: 5万5000人を沸かせた死闘「どちらかが倒れるまでやりたかった」

勝利の先にあるこだわり。ファンを魅了する「佐々木尽」のセルフプロデュース

佐々木があの日の試合で求めていたのは、勝利と観客へのインパクトだった。

「コスチュームも自分なりにいろいろ考えてつくりました。自分はファッションにものすごく興味があって、Tシャツのデザインもしています。昔から、絵を描いたり、デザインしたりするのが好きなんですよ。

勝つこと以上に、佐々木尽を知らない人をファンにさせたいと考えていました。勝ってほっとした部分はありますけど、倒せなかったことに対しては悔しさがあります。見せたいものを見せられなかったから」

この試合で勝利した佐々木はマイクを持って「待ってろ、世界!」と言ってリングを降りた。

メインのタイトルマッチを東京ドームで見て刺激を受けた。

「世界のトップ同士の試合を見てシビれました。テクニックも洗練されていて、剣豪同士が真剣を持って切りあっているのを見ているような気持になりました。本当に、達人同士の試合でしたね」

佐々木が目指しているのは日本人がまだたどりついたことのないウェルター級の世界王座だ。

初の世界挑戦と、記憶を失うほどの衝撃「ノーマン選手は本当に強かった」

2018年8月にプロデビューして以来、19勝(17KO)して世界タイトルへの挑戦権をつかんだのが2025年6月。相手はブライアン・ノーマン・ジュニアだった。初回から積極的に攻め込んだが、5回46秒でKO負け。2カ月前からの試合までの記憶が消えるほどのダメージを負った。

「ノーマン選手は本当に強かったですね。自分の弱い部分を狙われ倒されてしまいました。引き出しの多さが違ったのかな。こちらの得意なところでは戦ってくれませんでした。

自分が攻める時には、ノーマン選手が違うところに動いている。ポジショニングと相手との距離の取り方がうまかった。動きが速いし、パンチも強かったですね。特にうまいと思ったのは、パンチを当てるための動きですね」

画像: 佐々木尽 WBOウェルター級戦 4回、ブライアン・ノーマン(右)を攻める佐々木尽=大田区総合体育館

敗戦は進化への教科書。地獄からの復活劇と「世界へのリスタート」

しかし、敗戦から学んだこともある。

「パンチの強さでは負けない。ただ、当てる位置とタイミングがいい。試合をしながら、『こんな動きもあるの?』とボクシングの奥深さを学んだような気がします。ノーマン選手が強かったのは間違いないけど、自分の足りないところを強化すれば勝負できると思いました。負けたことについては本当に悔しい。でも、自分の足りないところが見つかった試合でもありました。絶対に追い抜いてやると思っています」

衝撃的なKO負けから8か月、マーロン・パニアモーガン戦でKO勝利を飾り、世界挑戦に向けてリスタートを切った。

「また試合ができて本当に幸せでしたね。ノーマン選手との試合のダメージが大きくて、1カ月後に練習を再開しても吐き気がして気持ちが悪かったり……。でも、そこから復活できましたから。『もう一回、ボクシングができるんだ』という喜びがありました」

(後編に続く)

【取材・文=元永知宏(もとなが・ともひろ)】
1968年生まれ。立教大学卒業後、ぴあ株式会社に入社。チケット情報誌『ぴあ』に配
属になり、プロレス、ボクシング、キックボクシング、空手、総合格闘技などを担当
。1990年、2000年代のビッグマッチのほとんどを取材している。2015年からスポー
ツライターに転身。近著に『長嶋茂雄が見たかった。』(集英社)。

【佐々木尽|次回イベント】
■イベント 『Lemino BOXING PHOENIX BATLLE161』
■日時 2026年9月21日(月)
■時間 開場:12:00/開始:13:00予定
■場所 東京たま未来メッセ
■対戦カード
◉メインイベント:日本・OPBF・WBO-APウェルター級3冠10回戦
WBC世界同級13位/WBO-AP同級1位/OPBF同級チャンピオン
佐々木 尽(八王子中屋)
24戦21勝(18KO)2敗1分
VS
WBO-AP同級チャンピオン/日本同級チャンピオン
セムジュ・デビッド(中日)
11戦9勝(5KO)1敗1分
◉他、日本ユースタイトルマッチ3試合など

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