1. トップ
  2. トレンド
  3. 捨てるところがない伝統の技 神田の老舗『いせ源』の潮騒コースで出会う極上肝豆腐

捨てるところがない伝統の技 神田の老舗『いせ源』の潮騒コースで出会う極上肝豆腐

  • 2026.6.29
image

昭和5年(1930年)築の純和風建築がどっしりと構える東京・神田にある『いせ源』の外観は、周囲のビル群のなかでひときわ異彩を放っています。東京都の歴史的建造物にも選定されているその建物、ただ古いだけじゃなくて、きちんと手入れされた佇まいに、この店が食と真剣に向き合ってきた歴史がにじみ出ているんですよね。創業はなんと天保元年、1830年。江戸時代から続く、都内唯一のあんこう料理専門店です。

年間600軒飲み歩くハツ「一度は訪れたい名店」(#95)

暖簾をくぐれば、そこは江戸の続き。お座敷席に通されると、畳の上に整然と並ぶ膳の美しさに、思わず背筋が伸びる感覚です。でも、堅苦しい雰囲気は全然なくて、むしろ居心地よくほっとできる空間なのが不思議なところ。

image

いせ源

個室もあるので接待や家族の集まりにも使いやすいですし、椅子席も完備されているので「和室はちょっと苦手で…」という方も安心です。

「潮騒コース」8,500円—あんこうの全部のせ、みたいな贅沢さ

今回いただいたのは、あんこう料理4品に前菜とおじやがつく「潮騒コース(8,500円)」。まず数種の冷菜が届いて、お酒を飲みながらゆっくり場をほぐす、気持ちのいいスタートでした。

image

数種の冷菜

「煮こごり」はあんこうのコラーゲンが冷えて固まった、ぷるりとした一品。口に入れた瞬間にするりとほどけて、じんわりと旨味が広がります。これだけで日本酒が一杯いけちゃいます。

image

煮こごり

あん肝であんこう自身を和える、江戸時代から伝わる伝統料理「とも和え」。濃厚なあん肝のコクと淡白な身の食感が絡み合って、「素材で素材を食べる」という発想の豊かさにちょっと感動しました。

image

とも和え

あん肝を豆腐と合わせた、なめらかでやわらかい「肝豆腐」は主張しすぎない上品な味わいで、コース全体のテンポをうまく整えてくれる、縁の下の力持ち的な存在です。

image

肝豆腐

〆のおじやまで旨味たっぷり!名代あんこう鍋

国産天然あんこう100%使用。秘伝の割り下で煮込まれた鍋は、テーブルに運ばれてきたときの具だくさんな見た目からして、もう気分が上がります。

秘伝の割り下で煮込まれた鍋

秘伝の割り下で煮込まれた鍋

出汁は醤油ベースのやさしい甘みで、あんこうの旨味をしっかり引き立てながらも、くどさが全然ない。身よりも皮の割合が多めで、ぷるぷるコラーゲンの食感を思う存分楽しめます。

あんこうの旨味が凝縮されたスープで仕上げるおじや。これを食べずにはいられません!お米は一粒一粒がしっかりしていて、鍋の旨味をたっぷり吸い込んでいる。あんこうの皮と一緒にすくって食べると、コラーゲンのとろみが加わってもう一段豊かな口当たりに。

image

おじや。

『いせ源』には、流行を追う派手さがありません。旬の時期にあんこうと向き合い、秘伝の割り下を守り、建物を手入れし続ける。その静かな積み重ねが、そのまま店の説得力になっている気がします。あんこうは「七つ道具」と呼ばれるほど捨てるところがない魚。皮も肝も身もゼラチン質も、すべてを料理に変えてきた先人たちの知恵が、このコース一食にぎゅっと詰まっていました。

【プロフィール】Hatsumi Itou(ハツ) 肩書き グルメハンター / 東京サロン主宰 実績 SNS23万人超。本当に美味しい店を厳選紹介。 テーマ グルメは最高のコミュニケーション SNS X
Instagram
TikTok

ハツの過去記事

黒ビールのコクが染みる牛バラ肉 六本木『cadeau』のほろほろ崩れるカルボナード
イタリアン『Drawn』のビンテージ空間で楽しむ、カニの旨味溢れる絶品パスタランチ
元記事で読む
の記事をもっとみる