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「労働時間を長くしたいのは誰なのか?」東大が調査した結果

  • 2026.6.26
Credit: canva

みなさんは、今の労働時間をどうお考えでしょうか?

「もっと働く時間を減らしたい」「給料を増やしたいので、もう少し長く働きたい」

いろいろな意見があるかと思います。

そこで東京大学 社会科学研究所のチームは、「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」、通称「東大社研パネル調査」を実施。

その結果として、労働時間を長くしたいと考えている人の割合やその理由を明らかにしました。

目次

  • 労働時間を長くしたい人は「少数派」
  • 「もっと働きたい」意欲に隠された裏の事情

労働時間を長くしたい人は「少数派」

近年の日本では、労働力不足を背景に、企業側から「従業員の労働時間を増やせないか」という議論が出ることがあります。

しかし、働く側の意向を見ると、その見方はかなり慎重に考える必要がありそうです。

東大社研パネル調査では、収入になる仕事をしている回答者に対し、「労働時間を短くしたいか、長くしたいか」を尋ねています。

2024年と2026年の結果を男女別に見ると、労働時間を長くしたいと答えた人は、男性で2〜3%、女性で6%にとどまりました。

一方で、半数以上は「今のままでよい」と答えています。

さらに、男性では約4割、女性では約3割が「労働時間を短くしたい」と回答していました。

つまり、多くの働き手は、現在よりも長く働くことを望んでいるわけではありません。

人手不足だからといって、働く人たちの側に「もっと長く働きたい」という大きな需要があるとは言いにくいのです。

この傾向は2024年と2026年でほとんど変化しておらず、労働時間を増やしたい人が急に増えているわけでもありません。

では、少数派である「労働時間を長くしたい人」は、どこに多いのでしょうか。

調査から見えてきたのは、就業形態と個人年収との強い関係です。

正規雇用では、労働時間を長くしたい人は男性2%、女性1%と非常に少なくなっていました。

正規雇用ではフルタイムで働いている人が多いため、それ以上の追加的な就業を望みにくいと考えられます。

一方、非正規雇用では、労働時間を長くしたい人の割合が男性13%、女性12%と高くなっていました。

また、個人年収別に見ると、年収が少ない人ほど労働時間を長くしたいと考える割合が大きくなっていました。

ここから考えると、「もっと働きたい」という意向は、単純な仕事への意欲というより、収入を増やす必要性と結びついている可能性があります。

「もっと働きたい」意欲に隠された裏の事情

では、労働時間を長くしたいと思っていた人は、その後、本当に労働時間を増やしていたのでしょうか。

この点を調べられるのが、同じ人を継続して追跡するパネル調査の強みです。

研究チームは、2024年に「労働時間を長くしたい」と回答した人について、2026年にかけて労働時間がどう変わったのかを分析。

その結果、実際に労働時間が増えた人は、男性で25.8%、女性で63%でした。

月あたりの労働時間で見ると、男性は平均5.1時間、女性は平均19.4時間増加していました。

この結果は、同じ「労働時間を長くしたい」という意向を持っていても、男性と女性では実際の変化の出方が異なることを示しています。

特に女性では、もともとの労働時間が短いケースが多く、増やせる余地が比較的大きかった可能性があります。

さらに重要なのは、女性がどのような経路で労働時間を増やしていたのかという点です。

調査では、2024年に非正規雇用だった女性のうち、労働時間を長くしたい意向を持っていた人では、27.7%が2026年までに正規雇用へ移っていました。

これは、女性全体における非正規雇用から正規雇用への移動率である8.6%よりもかなり高い数値です。

つまり、労働時間を増やしたい女性の一部は、単に今の仕事で勤務時間を増やすのではなく、非正規雇用から正規雇用へ移ることで、実際の労働時間を増やしていたと考えられます。

ここで重要なのは、「労働時間を長くしたい人がいる」という事実だけを切り取らないことです。

その人たちは就業者全体では少数であり、特に非正規雇用や低年収層に偏っていました。

つまり、背景には「もっと働きたい」という前向きな希望だけでなく、「働く時間を増やさなければ十分な収入を得にくい」という事情がある可能性があります。

労働力不足への対応を考えるうえでは、単に労働時間を延ばす方向だけでなく、短い時間でも安定した収入を得られる働き方や、希望する人が正規雇用へ移りやすい環境づくりも重要になります。

今回の調査は、「誰がもっと働きたいのか」を見ることで、日本の働き方の課題を浮かび上がらせたものです。

労働時間を長くしたい人は少数ですが、その声の背後には、収入や雇用形態に関する切実な問題が隠れているのです。

参考文献

労働時間を長くしたいのは誰なのか?(PDF)
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400290549.pdf

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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