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女性は排卵期に「独創的なアイデア」が浮かびやすくなる

  • 2026.6.26
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

ふとした瞬間に、いつもより面白い発想が浮かぶ日があるかもしれません。

その違いは、単なる気分の問題ではなく、体の中で起きている生理的な変化と関係している可能性があります。

ポーランド・SWPS大学(SWPS University)などの研究チームは、女性の月経周期と創造的思考の関係を調べ、排卵期には「独創的なアイデア」が生まれやすくなる可能性を報告しました。

なぜ、排卵期に女性の創造的思考が高まるのでしょうか。

研究の詳細は2026年6月2日付で学術誌『The Journal of Creative Behavior』に掲載されています。

目次

  • 排卵期には「アイデアの数」ではなく「独創性」が高まる
  • なぜ排卵期に「独創性」が高まったのか?

排卵期には「アイデアの数」ではなく「独創性」が高まる

創造性と聞くと、絵を描く才能や音楽の才能を思い浮かべる人も多いでしょう。

しかし心理学では、創造性の一部を測る方法として「拡散的思考」という考え方があります。

これは、1つの正解だけを探すのではなく、自由な問題に対して、できるだけ多くの異なるアイデアを出す力のことです。

たとえば「レンガの変わった使い道をできるだけ多く考えてください」と言われたとき、花壇の重し、ドアストッパー、筋トレ道具、アート作品の材料など、どれだけ柔軟に発想を広げられるかを見るものです。

今回の研究では、18〜35歳の自然な月経周期を持つ女性69人が対象になりました。

参加者はいずれもホルモン避妊薬を使用しておらず、妊娠中や出産直後でもありませんでした。

研究チームは、参加者に月経周期の異なる時期に4回、実験室を訪れてもらいました。

その中には、月経直後の卵胞期初期、排卵期、排卵後から次の月経前にあたる黄体期後期が含まれていました。

排卵期かどうかは、家庭用の黄体形成ホルモン検査や唾液顕微鏡検査によって確認されています。

実験では、参加者に靴、タオル、レンガ、ボトルなどの日用品について、5分間でできるだけ多くの変わった使い道を考えてもらいました。

その後、参加者の月経周期を知らない評価者が、回答を「流暢性」「柔軟性」「独創性」の3つで評価しました。

流暢性はアイデアの数、柔軟性は発想カテゴリの広さ、独創性はアイデアの珍しさやユニークさを意味します。

結果、排卵期に高まっていたのは、アイデアの数やカテゴリの広さではなく、「独創性」でした。

つまり、排卵期の女性は、たくさんのアイデアを出すというより、より珍しく、他の人が思いつきにくいアイデアを出しやすくなっていたのです。

なぜ排卵期に「独創性」が高まったのか?

では、なぜ排卵期に独創性が高まるのでしょうか。

これまでには、排卵期の創造性の高まりを、進化的な観点から説明する考えもありました。

創造性は知性や柔軟な思考力を示すサインになりうるため、妊娠可能性が高い時期に創造的な表現が高まることは、パートナーを引きつけるためのシグナルなのではないか、という考えです。

しかし今回チームは、もっと直接的な体の仕組みに注目しました。

それが「生理的覚醒」です。

ここでいう覚醒とは、必ずしも性的興奮を意味するものではありません。

心拍や汗腺活動、交感神経の働きなどを含む、体がやや活性化した状態のことです。

チームは、参加者が課題に取り組んでいる間、利き手ではない手の指にセンサーを取り付け、皮膚電気活動を測定しました。

これは、交感神経の活性化に伴うごく小さな汗腺活動の変化を読み取る方法です。

すると、排卵期には非妊娠可能期よりも、生理的覚醒のピークが多く見られました。

さらに統計解析では、この生理的覚醒の増加が、排卵期と独創性の高まりをつなぐ要因になっていることが示されました。

興味深いのは、参加者自身は「今日はいつもより元気だ」「気分が高い」「性的に興奮している」とは報告していなかった点です。

つまり、本人が自覚していなくても、体のレベルでは排卵期に反応しやすくなっており、その状態が発想の独創性に影響していた可能性があります。

チームはさらに、排卵期のセッションの1つで、参加者に10分間リラックスしてもらう実験も行いました。

参加者はソファで休み、リラックス効果のある落ち着いた音楽を聴きました。

その結果、身体の覚醒は低下し、同時にアイデアの独創性も通常の排卵期より下がりました。

この結果は、排卵期の独創性上昇が、生理的覚醒と関係しているという考えを後押ししています。

ただし、今回の結果は「女性は排卵期にあらゆる面で創造的になる」と示したものではありません。

測定されたのは、あくまで拡散的思考課題におけるアイデアの独創性です。

芸術的才能、知能、仕事の成果、創作能力全般を測ったわけではありません。

また、リラックス介入は身体の覚醒を下げた一方で、気分にも影響していた可能性があるため、結果の解釈には慎重さが必要です。

それでも今回の研究は、創造性が純粋に頭の中だけで生まれるものではなく、体の状態とも深く結びついていることを示しています。

私たちの発想力は、意識していない体内の変化によって、静かに揺れ動いているのかもしれません。

排卵期に生まれる「ちょっと変わったアイデア」は、脳だけでなく、体全体が作り出している小さな創造性のサインなのです。

参考文献

New research sheds light on why women tend to generate more creative ideas during the ovulatory phase
https://www.psypost.org/new-research-sheds-light-on-why-women-tend-to-generate-more-creative-ideas-during-the-ovulatory-phase/

元論文

Creative Potential Peaks During Ovulation: A By-Product of Physiological Arousal
https://doi.org/10.1002/jocb.70117

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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