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「窓を開けると熱気が…閉めても暑い」SNSで見て憧れていたコの字の家、夏に起きた“想定外の事態”【一級建築士は見た】

  • 2026.8.6
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「SNSで見た中庭のある暮らしにあこがれて、コの字の家を建てたんです。でも夏は、中庭が暑すぎて出られなくて…。窓を開けると熱気が入ってくるし、日が沈んでも暑いまま。あこがれていたぶん、ショックで」

そう話すのは、2年前、郊外の住宅地に、地元の工務店で中庭のあるコの字の注文住宅(4LDK・延床約106㎡/土地約170㎡、約4,800万円)を建てたHさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。外からの視線を気にせず過ごせる中庭は、家づくりで一番の希望でした。

設計の打ち合わせで「中庭は夏に暑くなりやすいので、日よけを考えておくといい」という説明は受けていましたが、見た目を優先して、日よけは後から、と考えていました。それでも、はじめての夏の暑さは想定以上。あこがれの中庭は、夏のあいだ眺めるだけの場所になってしまったのです。

なぜ中庭は、夏の「熱だまり」になるのか

コの字の中庭の暑さには、間取りならではの理由があります。

まず、風です。中庭は建物に三方を囲まれ、残る一方も塀や壁でふさがれていることが多い場所。風の通り抜ける道がないため、日射で暖まった空気がその場にたまり、抜けていきません。

次に、床です。中庭でよく使われるタイルやコンクリートの土間は、直射日光を受けて昼のあいだに熱をため込みます。表面は素足で歩けないほど熱くなり、照り返しで体感の暑さも増します。ため込んだ熱は日が沈んでから放たれるため、夜になっても中庭にだけ暑さが残るのです。Hさんの中庭も、SNSで見たままの明るいタイル張りでした。

さらに、中庭にエアコンの室外機を置いていると、その排熱までこもります。囲われた安心感のある空間は、夏には熱の逃げ場のない「熱だまり」になりやすいのです。

「開けても閉めても暑い」のは、窓が中庭に集まるから

もうひとつの盲点が、窓の配置です。コの字の家は、外からの視線を防ぐ代わりに、大きな窓が中庭側に集中しがちです。風も光も、中庭頼みの間取りになります。

その中庭が熱だまりになると、窓を開ければ熱気が室内へ流れ込み、閉めても大きなガラス越しに日差しと照り返しの熱が入ります。夏に外から入り込む熱の7割以上が窓などの開口部から、という一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会のデータもあるほどです。Hさんの家も、リビングの大きな窓はすべて中庭に面していました。中庭の暑さは中庭だけの問題ではなく、家全体の暑さに直結してしまうのです。

Hさん夫婦はどう対応したのか

そこでHさん夫婦は、日差し・床・風の3つに分けて手を打ちました。

まず日差し。中庭の窓の外側に日よけのシェードを張り、直射日光を遮りました。日差しは室内のカーテンより窓の外側で遮るほうが効果的で、シェードはホームセンターなどで数千円から手に入ります。

次に床。タイルの一部にウッドパネルを敷き、鉢植えの緑を並べて、照り返しと夜まで残る熱をやわらげました。朝夕の打ち水も、蒸発するときに熱を奪う昔ながらの知恵です。

そして風。外の空気が涼しい朝夕は、中庭側の窓だけでなく、反対側の外周の窓もあわせて開けて、風の入り口と出口をつくりました。中庭に置いていた室外機には市販の風向調整板を付け、排熱が座る場所へ直接向かわないようにしました。

「真昼はあきらめて、中庭は朝と夕方に使う場所と割り切りました。風のある晩の夕涼みごはんは、この家にしてよかったと思える時間です」とHさんは話します。

中庭のある家は「夏の計画」とセットで

中庭のある家は、外からの視線を気にせず、カーテンを開けたまま暮らせる気持ちのいい住まいです。子どもを目の届く場所で遊ばせられる安心感も、この間取りならではの魅力です。一方で、囲われた中庭は夏に熱がたまりやすく、窓が中庭に集中するぶん、その暑さが家全体に及びやすい面があります。これから建てる人も、いま悩んでいる人も、以下を確かめてみてください。

・中庭の向きと夏の日差しの入り方を図面の段階で確認し、庇や日よけを計画に入れる
・床はタイルやコンクリート一色にせず、木や緑など熱をためにくい素材を組み合わせる
・中庭側だけでなく、外周側にも風の入り口・出口になる窓を確保する
・室外機の置き場所と、排熱の逃げ道を決めておく

囲われた中庭も夏への備えとセットで計画すれば一年を通して楽しめる場所になるので、あこがれの暮らしは無理なく実現できます。

参考:
まちなかの暑さ対策ガイドライン(環境省)
開口部からの熱の出入り割合はどの位か(一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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