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「SNSで見た吹き抜けに憧れて…」約3,700万円の注文住宅、初夏に30代夫婦が2階で直面した"誤算"【一級建築士は見た】

  • 2026.7.19
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「SNSで見た、吹き抜けのある開放的なリビングにあこがれて、思いきって取り入れたんです。明るくて気持ちいいんですが……夏は、冷房をつけてもなかなか涼しくならなくて」

そう話すのは、郊外に注文住宅(木造2階建て・4LDK・延床およそ35坪)を約3,700万円で建てたAさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。リビングに大きな吹き抜けを設け、光がたっぷり入る開放的な空間に仕上げました。

ところが夏になると、1階のリビングは冷房がなかなか効かず、吹き抜けに面した2階は蒸し暑い。電気代もかさむようになっていました。

なぜ吹き抜けは、夏に冷房が効きにくいのか

吹き抜けで冷房が効きにくくなるのには、はっきりした理由があります。

空気には、暖まると軽くなって上にのぼり、冷えると下に沈む性質があります。吹き抜けは天井が高く、空間が大きいぶん、暖まった空気が上のほう(2階や天井付近)にたまりやすく、夏はそこが暑くなります。

一方、1階で冷房をつけても、冷やすべき空間が大きいため、なかなか部屋全体に行き渡りません。その結果、上は暑く下はそこそこ涼しい、といった上下の温度差(温度ムラ)が生まれ、冷房の効きを感じにくくなるのです。

SNSの「開放感」と引きかえに

見落としがちなのが、開放感と冷暖房の関係です。

吹き抜けの魅力は、なんといっても明るさと開放感、家族の気配が伝わるつながりです。ただ、その大きな空間は、冷暖房の効率という面では不利に働きやすく、夏は2階が暑く、電気代もかさみやすくなります。SNSで見る吹き抜けの写真には、その開放感は写っても、夏の冷房の効きや電気代までは写りません。だからこそ、設計段階で建築士や施工会社としっかり対策を話し合っておくことも大切です。

さらに、吹き抜けの高い位置に大きな窓があると、そこから入る日差しで、いっそう暑くなることもあります。

Aさん夫婦はどう対応したのか

そこでAさん夫婦が取り組んだのが、空気を動かすことでした。

天井のシーリングファンや、床に置くサーキュレーターで空気をかき混ぜると、上下の温度差が小さくなり、冷房の効きがよくなります。Aさん夫婦は、まず手軽なサーキュレーターを吹き抜けの下に置き、上にたまった熱気に向けて風を送るようにしました。部屋全体の温度が均一に近づくぶん、冷房の設定温度を上げても快適に感じられ、電気代の節約にもつながります。資源エネルギー庁の試算では、冷房の設定温度を1℃上げるだけで、年間で約940円(約30kWh)の節電につながるとされています。

また、吹き抜けは断熱や気密の性能が現れやすい部分でもあります。これから建てるなら、設計の段階で断熱をしっかりしておくと、冷暖房はぐっと効きやすくなります。

その結果、2階の蒸し暑さもやわらぎ、電気代も落ち着いてきたそうです。

「風を動かすだけで、こんなに変わるとは思いませんでした」とAさんは振り返ります。

吹き抜けをつくるときは「夏の冷房」も考えて

吹き抜けには、たしかな魅力があります。高い窓から光が届き、時間帯を問わず家の中心が明るいこと。天井の高さがもたらす、数字以上の開放感。そして、1階と2階が空気ごとつながるので、「ごはんだよ」の声も、家族の気配も、階をこえて自然に伝わることです。子育ての時期には、この「気配のつながり」が安心につながるケースも多くみられます。

じつは、夏の暑さの悩みは、この魅力と同じ性質から生まれています。気配が伝わるのは、家の空気がひとつながりだから。空気がつながっているからこそ、温度もつながり、暖気は上へたまる。つまり吹き抜けの弱点は欠陥ではなく、魅力の裏返しなのです。だからこそ、取り入れるときは以下の点をあわせて考えておくと、魅力だけを長く楽しめます。

・冷暖房の計画(エアコンの能力や配置、シーリングファンなど)を設計の段階で考えているか
・空気を循環させるシーリングファンやサーキュレーターを取り入れられるか
・家の断熱や気密の性能は十分か
・吹き抜けの高い窓に、日差しを遮る対策があるか

大切なのは、SNSで見た「開放的な吹き抜け」が、夏には「冷房の効きにくい空間」にもなりうると知っておくこと。空気の流れや断熱を工夫すれば、あこがれの吹き抜けは、夏も気持ちよく過ごせる場所になります。

参考:
無理のない省エネ節約・空調(資源エネルギー庁)
扇風機とサーキュレーターの違い(パナソニック)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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