1. トップ
  2. エンタメ
  3. “世界の男”と15歳差の電撃婚から9年、ドラマで「妻」を重ねてきた秋田美人の現在地

“世界の男”と15歳差の電撃婚から9年、ドラマで「妻」を重ねてきた秋田美人の現在地

  • 2026.7.27
undefined
2014年7月、映画『縁〜The Bride of Izumo〜』制作発表を島根・出雲大社で行い、白無垢姿を初披露した佐々木希(C)SANKEI

2017年の春、秋田生まれのこの女優の名は、作品ではなく私生活で人々の口にのぼった。15歳年上の“世界の渡部”ことお笑い芸人・渡部建との結婚。世間が受け取ったのは、電撃婚という三文字の見出しだった。

けれど佐々木希という人を、その一語で片づけるのはもったいない。私生活で「妻」になった彼女は、じつはそれ以前から画面の中でも「妻」を演じ続けてきた女優だ。現実の役と、作品の役。同じ言葉が二重に重なるところに、この人のキャリアの芯がある。

表紙を降りて芝居に立つ

佐々木希のはじまりは、雑誌モデルだった。『週刊ヤングジャンプ』のグラビアや、ファッション誌『PINKY』や『non-no』の専属モデルをつとめた。整った角度、隙のない立ち姿。誌面のなかの正解のような存在として、長く「見られる側」のいちばん前にいた人だ。

モデルにとって専属誌の表紙は、いわば約束された居場所である。そこを自ら手放して、俳優という不確かな場所へ軸足を移した。見た目の完成度で勝負する世界から、内側の温度で人を動かす世界へ。この移し替えは、外見の華だけを頼りにしていては成立しない。看板を降りるという選択そのものが、役を積み重ねていく彼女の姿勢の出発点になった。

興味深いのは、モデルとして極めた「静止した美しさ」が、女優としての武器に転じていくことだ。表紙の一枚は、動かない一瞬にすべてを込める仕事である。その凝縮の感覚を身につけた人が芝居に立つと、大きく動かなくても画面が持つ。誌面で鍛えた抑制が、そのまま役の佇まいに流れ込んでいく。

ずらしながら重ねる「妻」

女優・佐々木希をたどると、ふしぎなほど「妻」という役に呼ばれ続けている。2016年の映画『縁〜The Bride of Izumo〜』では主演をつとめた。演じたのは飯塚真紀という女性。神話の地を舞台に、縁と家族をめぐる物語の中心に立った。翌2017年、Huluで配信された『雨が降ると君は優しい』では、玉山鉄二演じる夫を持つ妻・彩を演じている。夫婦という閉じた関係の内側で、言葉にならない機微を抱える役だ。

2021年、テレビ朝日系の『にじいろカルテ』では、井浦新演じる医師の亡き妻・浅黄沙織をゲストとして演じた。すでにこの世にいない妻。画面に長くはいなくても、残された人の記憶の中で確かに生きている女性である。

同じ「妻」でも、白無垢の主演から、夫婦の内側を生きる役、そして不在によって存在する妻へと、立ち位置は少しずつずれていく。彼女はそのずれを1作ごとに引き受け、同じ肩書きの奥にある別の温度を演じ分けてきた。

見落としてはいけないのは、なぜ現場がくり返し彼女に「妻」を託すのか、という点だ。映像作品での妻という役は、派手さではなく、そこに人が暮らしている実感を出せる説得力がいる。整いすぎた華は、ときに生活感の邪魔になる。佐々木にくり返し声がかかるのは、その完璧な見た目の内側に、生身の温度をにじませられる人だからだ。モデル時代に磨いた「見せる」技術が、ここで「感じさせる」技術へと裏返っている。

中心の華から作品を支える側へ

近年の佐々木希は、物語の中心を華やかに飾る役から、作品の骨格を内側から締める役へと、立ち位置を静かに移している。

2025年、テレビ朝日系の『天久鷹央の推理カルテ』では、橋本環奈演じる主人公の姉・天久真鶴を演じた。主役の隣で物語を支える立場でありながら、姉という関係のなかに家族の重みを持ち込む役だ。そして2026年、日本テレビ系の土曜ドラマ『告白 ―25年目の秘密―』では、シングルマザー・竹田泉を演じている。

注目したいのは、この2作がどちらも「主役を輝かせるために欠かせない周辺」だという点である。主人公が主人公として立つには、その世界を信じさせる隣人がいる。物語を回す一人として、佐々木が担うのはその手応えの部分だ。看板の真ん中に立って絵になる、というだけの起用ではない。作品がその輪郭を保つために、内側で支える確かさが求められる位置である。

誌面の正解であることを求められた人が、いまは物語の説得力を担う人になっている。見られる側のいちばん前にいた経験は、捨ててきた過去ではなく、役を深くするための引き出しになった。中心を張れる華を持ちながら、あえて骨格の側に回れること。それは華だけの女優には引き受けられない成熟だ。

いまも新しい役を引き受ける

私生活の一報から始まった物語は、めぐって作品の話へと戻ってくる。現実で「妻」になり、画面でいくつもの「妻」を生きてきた女優は、いま主演の隣や物語の骨格を担う場所で、新しい役を積み続けている。秋田から出てきて誌面の正解になり、その看板を自ら降りて、生身の役の中に居場所を作り直した人。電撃婚という見出しの向こうで、佐々木希はずっと、演じることで自分の重心をキャリアの側に置き続けている。

見られる側のいちばん前から、見られることの内側へ。この移動は一度きりの転身ではなく、1作ごとに更新されてきた選択の積み重ねだ。次にどんな役を引き受けるのか。表紙を降りたこの人の現在地は、まだ広がっている途中だ。


※記事は執筆時点の情報です

の記事をもっとみる

注目コンテンツ