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海風が育んだ美意識。ポルトガル・ポルトの街並みに息づく歴史と、暮らしの情景

  • 2026.6.24

CREA Traveller 2026 夏号は「ポルトガル」特集。ヨーロッパ大陸の西の果て、大西洋の大海原を見つめてきたポルトガルの歴史と文化には、海との繋がりが常にあった。郷愁を表現する“サウダーデ”を胸に秘めた情緒的な側面に触れ、海風と太陽、人々の温もりで健やかな感性を取り戻す旅へ。


川沿いの丘陵の地形にオレンジの屋根が映える

オレンジ屋根が目を引く。建物には花崗岩を使用。

首都リスボンから電車に乗り2時間半ほどで到着する北部の都市ポルト。歴史を辿ると古代ローマ時代の紀元前1世紀に街として誕生したと言われており、ローマ人がPortus Cale(ポルトゥス カレ)(カレの港)と呼んでいたことから、国名の語源になった。

2003年に完成したインファンテ・ドン・エンリケ橋。丘の斜面に貼り付くように家が立つ。

ドウロ川周辺で勢力を持っていた貴族たちが南へと領土を広げていったことがポルトガル王国の建国に繋がり、ここが“発祥の地”という説もある。ただし、王宮があったり首都になったりした軌跡はなく、ひたすら商業の街として栄えてきた。

ストリートミュージシャンの音色が川の景色と相まって。

代表的な輸出品がポートワイン。酒精強化ワインとして知られている、甘口ワインは、17世紀後半ごろからイギリスへの輸出が始まり、今でも多くのワインセラーが軒を連ねるヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアから出荷されていった。テキスタイルや靴といった服飾関係の産業も盛んで流通の要所だったそうだ。「港街ポルトは、外からの人を受け入れるオープンな気質があり、気さくでホスピタリティが高い」と地元の人は話す。

ポルトガル有数の観光地でありドウロ川近くのレストランやカフェは客で埋め尽くされているが、訪れた店のスタッフは忙しいながらも、手際よくオーダーをとり、この料理に合うワインは? と尋ねれば、オーケーと笑顔で選んでくれる温かさがあった。

趣のあるカフェが多く、常に混み合っている印象。

「この街で生まれたことが誇りだし、大切に思っている」と話すポルト出身の人もいた。確かに、ファンタジーの世界に迷い込んだような美しい世界観がある。

ドウロ川を挟むようにして歴史地区とヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア地区があり、見渡せばこんもりとした丘陵にオレンジ屋根の建物が折り重なるように立っている。色合いや情景がまるで絵画のよう。地形的に建てられる場所が限られているため、密集せざるを得なかったのだが、それが功を奏した。かつては丘の麓に船会社や商人、庶民の家があり、高台に行くと富裕層の邸宅が立っていた。

街を歩いていると縦長の家が多いのに気づく。間口によって税が課せられる間口税があったためで、玄関を狭くして奥行きと高さを出して税金対策をしていた。

かつての間口税の影響か、玄関の扉がコンパクト。

建物が均一に揃っているのは、外壁の色、窓の形、バルコニーの位置や形状、屋根が場所によっては色までも規制されているからだという。中心地には近代的な建物はなく、マクドナルドやスターバックスが歴史的な建造物にあるのが何とも新鮮だ。

外壁に施されたアズレージョと扉、窓枠が赤で統一。

街全体がどこかのんびりして開放感があるのはドウロ川のおかげでもある。川辺で観光船が行き交うのを眺め、穏やかな風に吹かれているだけでも心地よい。実はポルトを大西洋の河口から入った場所に作ったのは激しい海風から守るためでもあった。

川には6つの橋が架けられ、シンボル的な存在がドン・ルイス1世橋。この橋からは旧市街と対岸のヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアの両方が眺められ、つい足を止めて見入ってしまう。

ドン・ルイス1世橋は二重構造になっており、上層にはメトロが走る線路と歩道が、下層には車道と歩道がある。
ドン・ルイス1世橋の南側にあるモロー庭園は憩いの場所。

朝夕に日差しで水面が輝き、夜のとばりが下りると街がやわらかな明かりで灯される。時間ごとの美しさがあり、どこまでも美意識が息づいている情景に心揺さぶられる。

文=梅崎奈津子
写真=平松市聖
協力=Visit Porto & North of Portugal

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