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「イケメンでもないし無名なのに…」一ノ瀬ワタルが語る、演技への覚悟。『ハイロー』で共演した山田裕貴がかけてくれた一言とは?

  • 2026.6.23

Netflixドラマ「サンクチュアリ -聖域-」の力士・猿桜役でブレイクを果たした、元格闘家の俳優・一ノ瀬ワタルさん。山田裕貴さんや横浜流星さんといった熱い共演者たちとのエピソードから、問題児と対峙する難役に挑んだ劇場映画初主演作への想いまで、たっぷりと語ってくれました。


山田裕貴らと切磋琢磨した「ハイロー」エピソード

一ノ瀬ワタルさん。

――5つのチームの抗争や友情を描いた映画『HiGH&LOW』シリーズ(2016年~)では、山田裕貴さんや鈴木貴之さんとともに、漆黒の凶悪高校「鬼邪高校(おやこう)」に属する関虎太郎役を演じました。この3人によるチームワークは、「ハイロー」ファンの中では今でも語り継がれています。

「ハイロー」は、どのチームにも必ずLDH所属の方がいらっしゃったのですが、なぜか鬼邪高のメンバーには誰もいなかったんです。だから、村山役の(山田)裕貴くんと古屋役の鈴木(貴之)くんと一緒に「俺ら、噛ませ犬みたいだね」と言い合いながら、「絶対やってやろうぜ!」と、熱い空気感を出していたと思います。

裕貴くんと鈴木くんは、役についてかなり深く話し合っていました。当時の僕は芝居のことがよく分かっていなかったので、その熱い光景を見守りつつ悩んでいたんです。すると鈴木くんが「いや、一ノ瀬くんは天才だから、頭を使ってもしょうがないよ」と言ってくれて。その言葉で一気に吹っ切れて、自分がやりたいように演じてみたら、監督がそのアイデアを採用してくださいました。

――そのアイデアについて、具体的なエピソードがあれば教えてください。

例えば、村山が、岩田(剛典)さん演じる「山王連合会」のコブラに喧嘩で負けた直後のシーンです。台本では「鬼邪高」全員で山王連合会に立ち向かう流れだったのですが、僕としては、あれだけ頑張った村山のところに真っ先に駆け寄りたいという気持ちが強くて。それで監督に「こういう芝居をやりたいです」と提案したら採用となり、裕貴くんも鈴木くんも素直に受け止めてくれました。

不思議なバランスとチームワークで作っていった思い出深い現場でしたし、あの3人だったからこそ、あの「鬼邪高」が生まれたのだと思います。

一ノ瀬ワタルさん。

――そんな「ハイロー」での活躍と、役作りで33キロも増量した『宮本から君へ』(19年)は、一ノ瀬さんにとって俳優人生の大きな転機となったのではないでしょうか。

ありがとうございます! それまでは見た目のキャラクターでキャスティングされることも多かったのですが、『宮本から君へ』のキャスティング担当だったおおずさわこさんから、「高い演技力が求められる役」「真淵を演じる俳優が決まらなかったから、映画版がなかなか撮れなかったんだよ」という言葉をかけられて。ものすごいプレッシャーでしたが、腹を括って勝負させてもらいました。

おおずさんは本当に厳しい方なのですが、裕貴くんから「おおずさんは、ちゃんとした熱量で向き合えば必ず認めてくれる人だよ。頑張って」と励ましてもらいました。

作品がクランクアップしたとき、おおずさんが「私の今回の手柄は、一ノ瀬ワタルを見つけたこと」と言ってくださったときは、本当に嬉しかったですね。

撮影というより、きつい部活だった「サンクチュアリ」の現場

一ノ瀬ワタルさん。

――『ヴィレッジ』(23年)では、空手家でもある横浜流星さんとのアクションシーンも印象的でした。格闘家出身同士の立ち回りはいかがでしたか?

お互いに信頼し合っていることを、拳を通じて感じましたね。通常、アクションシーンであっても、相手に直接当てることはないのですが、どうしても当てなければいけないシーンがあって。

横浜さんが「当てていいです。これで避けるんで」とサラッとキックボクシングの防御技(スリッピング)をされたので、「え、スリッピングできるの⁉」と驚いたのを覚えています。またいつか、一緒に戦ってみたいですね。

――そして、世界的な大ヒットとなったNetflixシリーズ「サンクチュアリ -聖域-」(23年)の主演に抜擢され、猿将部屋の力士・猿桜を演じられました。

今振り返ると、あれは撮影というよりも、きつい部活をやっているようでした。さらに言えば、本当に相撲部屋に入門したような感覚です。相撲部屋はキックボクシングのジムとも違いますし、土俵の上でできることといえば、兄弟子に胸を借りること。そして、神様に身を捧げる。何より過酷でしたが、だからこそ共演者みんなとの絆は深まりました。

――今、改めて振り返ると、一ノ瀬さんにとってどのような作品だったといえますか?

本当に、江口(カン)監督のおかげです。Netflixが莫大な予算を投じて力を入れている作品なのに、イケメンでもない、無名の俳優を主役に抜擢するなんて、ほとんどギャンブルに近いじゃないですか(笑)。それなのに江口監督は僕を信じて起用してくださった。その期待だけは、絶対に裏切るわけにはいかないという強い思いでやり切りました。

初めて、受け手として演じた

一ノ瀬ワタルさん。

――そして、満を持しての劇場映画初主演作『四月の余白』では、元半グレ・元受刑者という過去を持ちながら、全寮制の更生施設を経営する主人公・西を演じられています。

西を演じるうえで大切にしたのは、更生施設の子たちを心から愛するというか、「この子たちを幸せにすること。見捨てないこと」。これしかなかったですね。

今作は𠮷田(恵輔)監督の実体験も投影されているようで、役作りの段階でいろいろと怖い話をお聞きしましたが、現場はとても空気の良いチームでした。ただ、監督からはセリフの滑舌が良すぎると、注意されましたね(笑)。

――本作のキャッチコピーである「ひとは変わることができるのか。ひとはひとを変えることができるのか」について、一ノ瀬さんはどのように思われますか?

僕は、自分の中でルールさえ決めることができれば、人は変われると思っていますし、変えることもできると思っています。

というのも、僕がかつて内弟子をしていた「真樹ジムオキナワ」は空手道場もやっていて、そこにはどうしようもなく手がつけられない子どもたちもやってきていたんです。空手は、体罰ではない「痛み」を知ることができる競技でもあるからか、その子たちはちゃんと更生していきました。そういう光景を間近で見てきたからこそ、人はきっと変われるはずだと信じています。

――本作は、一ノ瀬さんのどのような新しい一面が見られる作品になっていますか?

正直、初主演映画だからといって、「一ノ瀬ワタルの新たな一面を見せてやろう」みたいなことは、まったく意識しませんでした。ただ、これまでは「自分がいいスパイスになって、このシーンを強烈に面白くしてやるぜ!」と思って演じることが多かったのですが、𠮷田監督に初めてお会いしたとき、「今回はいつもの濃い味の一ノ瀬さんじゃなくて、色々な共演者を受け止める『受け手』としての一ノ瀬さんを見せてほしい」と言われたんです。

監督のその言葉があったからこそ、いつもとは違うアプローチになったので、結果的に、今まで観たことのない一ノ瀬ワタルが見られる作品になっているかもしれません。

――最後に、今後の目標や展望を教えてください。

やっぱり、一番やりたいのは「サンクチュアリ -聖域-」の続編ですね。以前は、「どんな役でも器用にこなせる俳優になりたい」と思っていた時期もありました。でも、この世界には本当に天才というか、素敵な役者さんがたくさんいらっしゃいます。最近になって、自分はいわゆる「カメレオン俳優」にはなれないなと気づいたんです。

僕はあくまでも「いびつな形のピース」で、どこにでもピタッとハマるわけではない。けれど、このいびつなピースだからこそ、絶対にカチッとハマる役が必ずあると思うんです。そこにハマったときは、もうどこまでも貫いて、誰にも負けない唯一無二の俳優になりたいですね。

一ノ瀬ワタル(いちのせ・わたる)

1985年7月30日生まれ。福岡県出身。プロの格闘家を経て、俳優の道へ。「HiGH&LOW」シリーズ(15年~)や『宮本から君へ』(19年)などを経て、Netflix配信ドラマ「サンクチュアリ -聖域-」の主演に抜擢。今年は『炎上』のほか、『キングダム 魂の決戦』(7月17日より公開)にも出演している。

文=くれい 響
写真=佐藤 亘
ヘアメイク=星野加奈子
スタイリスト=皆川bon美絵

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