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【60代エンタメ・舞台『リア王』発表会レポ】中村芝翫らキャストが語る傑作悲劇の魅力とは?「リア王は現代の家庭にも起こり得る物語」

  • 2026.6.10

2026年は、シェイクスピア四大悲劇のひとつ『リア王』の上演が相次ぐ“リア王イヤー”です。その中でも注目を集めているのが、9月に東京・新橋演舞場で上演される中村芝翫さんの『リア王』。

中村芝翫さんは、『オセロー』『夏の夜の夢』に続く3度目のシェイクスピア作品への挑戦となります。製作発表には松下由樹さん、朝月希和さん、井上小百合さんら主要キャストも登壇し、それぞれが作品への思いや役づくりについて語りました。

前列左からグロスター伯爵役・村田雄浩さん、リア王役・中村芝翫さん、ゴネリル役・松下由樹さん。後列左から演出家・井上尊晶さん、エドマンド役・大野拓朗さん、リーガン役・朝月希和さん、エドガー役・三浦涼介さん、コーディリア役・井上小百合さん

「待望の3人の娘」中村芝翫、“リア王”への覚悟を語る

演出の井上尊晶さんから「いつかは『リア王』をやれたら」と言われていたという芝翫さん。

「まだ遠い先の話だと思っておりましたが、私も昨年還暦を迎えました。リア王とは違い、私は3人の息子がおります。今回は、待望の3人の娘でございますので、思いっきりこの舞台で老害を発揮しようと思っております」

「井上さんからは『いつも怒っていてください。激しく怒っていてください』と言われていますが、私は人生であまり人を怒鳴ったことがありません。でも、お酒を飲まない人のほうがお酒を飲む芝居がうまいこともありますよね」

会場を笑いに包みながらも、役への向き合い方に冷静な視点をのぞかせました。

「これは現代の家族の物語」松下由樹が語るゴネリル像

リア王と激しく対立する長女ゴネリルを演じるのは、松下由樹さんです。

「芝翫さんが怒鳴っていても、こちらも負けず劣らず睨みをきかせて厳しくいたいと思います。長女として『お父さん、それは違うのではありませんか』という正当性を持っていたいですね」

「『リア王』は遠い世界の難しいお話ではなく、現代の家庭にも起こり得る物語だと思っています。観客の皆さんにも身近に感じていただけるようなお芝居にしたいです」

と、役作りや作品への思いを語り、「長女役」のリーダーシップを発揮しました。

「ただそうなっただけ」朝月希和が見つめるリーガンの人生

次女リーガンを演じる朝月希和さんは、シェイクスピア作品の人物描写の奥深さに魅力を感じているといいます。

「言葉の一つひとつに、その人物の思いが何層にも込められているのがシェイクスピアの魅力だと思っています」

当初はリーガンに冷たい女性という印象を持っていたそうですが、

「井上さんから『今まで生きてきて、ただそうなっただけだから、わざと怖くしなくていい』と言っていただきました。その人物の背景をしっかり考えながら稽古に臨みたいと思います」

「愛は言葉では測れない」井上小百合が語るコーディリアのまなざし

姉たちとは対照的に、父への愛を美辞麗句で表現できず、リア王の怒りを買ってしまう末娘コーディリア。

演じる井上小百合さんは、自身と役柄との共通点を次のように語りました。

「私自身も、言葉をうまく繕うことが苦手なほうです。『リア王』は娘の愛を言葉で測ろうとしたことから始まる悲劇ですが、愛は言葉だけで表すものではなく、日常の中にあふれているものだと思っています」

また、

「コーディリアには、お姉さんたちにはないドライな面も感じています」

と、自身の解釈も打ち明けました。

もうひとつの家族の悲劇──グロスター伯爵一家

作品の中で、リア王の家族の顛末と並行して描かれるのが、グロスター伯爵家の物語です。

グロスター伯爵役の村田雄浩さんは、『リア王』の台本を読んだ感想を次のように語りました。

「もちろん哲学的で深い作品ですが、昼ドラや、私が出演していたドラマ『渡る世間は鬼ばかり』のような家庭劇にも思えました」

さらに、

「グロスター伯爵には息子がふたりいますが、実際の私はひとり娘の父親です。芝翫さんには娘について語れると思います。私は息子の育て方を教わりたいですね」

と続け、会場を和ませました。

正妻の子であるエドガー役の三浦涼介さんは、意気込み十分。

「シェイクスピアというと難しいイメージを持たれるかもしれませんが、先輩方の素晴らしいお芝居を間近で学びながら、精いっぱい努めたいと思います。とにかく、村田さんについていきます」

一方、野心に燃える庶子エドマンド役の大野拓朗さんは、

「悪役を演じる機会はこれまであまりありませんでした。今回は大いに暴れ回って作品をかき乱したい」

と意欲を見せ、さらに、

「石井美樹子さんの新しい翻訳を、井上さんがどのように立ち上げていくのか、演劇ファンのひとりとしても楽しみです」

と期待を寄せました。

「ここでしかできない『リア王』を」演出家が描く舞台の核心

「どうすればお客さまにこの大きな作品の中へ入っていただけるのか、どう作品を手渡せるのかを考えています」

と、演出を手がける井上尊晶さん。

「台本はいじらない・マイクは使わない・幕開けから3分で観客を劇の世界に引き込むという、蜷川(幸雄さん)からの3つの教えを実践しながら、東京・新橋演舞場でしかできない『リア王』を作ります」

と展望を明かしました。

「今は本当にさまざまな『リア王』がありますが、同じ作品でも演出によってこれだけ違うものになります。それが演劇の特権だと思っています。

歴史ある新橋演舞場で上演できることに身の引き締まる思いです。ここでしかできない『リア王』を皆さんと一緒につくりたいとも思います」

「どう若い世代へバトンを渡すか」は人生のテーマ

最後に芝翫さんは、襲名10年の節目となる今年、この作品に挑む意味について語り、締めくくりました。

「年老いながら人生をどう歩んでいくのか。どう若い人たちにバトンを渡していくのか。それはひとりの人間にとって大きなテーマだと思います」


父と娘の対立から始まり、家族の愛、老い、継承という普遍的なテーマを描く『リア王』。中村芝翫さんがどのような王を見せるのか、新橋演舞場での上演に期待が高まります。

公演概要

『リア王』
【作】W.シェイクスピア
【訳】石井美樹子(河出書房新社『真訳 シェイクスピア四大悲劇』収録)
【演出】井上尊晶 【キャスト】
リア王 中村芝翫
ゴネリル 松下由樹
エドガー 三浦涼介
リーガン 朝月希和
コーディリア 井上小百合
エドマンド 大野拓朗
オズワルド 大堀こういち
コーンウォール公爵 駒井健介
オールバニー公爵 中村松江
ケント伯爵 二反田雅澄
道化 小倉久寛
グロスター伯爵 村田雄浩 飯田邦博 / 野村龍一 大塚航二朗 奥田一平
山口祥平 中村芝晶 大石英玄 三村瑛毅 【会場】新橋演舞場
日程】2026年9月6日(日)~22日(火・祝)
【観劇料】
1等席 14,000円
2等席 9,000円
3階A席 5,000円
3階B席 3,000円
桟敷席 15,000円 【チケット発売日】7月25日(土) 10:00より電話・Web予約受付開始
〈電話〉チケットホン松竹(10:00~17:00) 0570-000-489
〈web〉チケットWeb松竹

この記事を書いた人 杉村道子

カルチャー系を中心にインタビュー記事を執筆しています。趣味は歌舞伎、落語、ミュージル、ストレートプレイに小劇場と、ひたすら雑食舞台鑑賞。年に何本見ているのか、最近は怖くて数えていません。

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