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7000万年前にいた「新種のラプトル型恐竜」を発見ーーサギのような魚を狩る食性か

  • 2026.5.31
※ 画像はイメージです/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

鋭い鉤爪を持ち、すばやく獲物に飛びかかる恐竜。

「ラプトル型恐竜」と聞くと、多くの人はヴェロキラプトルのような陸上のハンターを思い浮かべるかもしれません。

しかし、南米パタゴニアで見つかった新種の恐竜は、そのイメージを少し変えてくれる存在です。

アルゼンチンのベルナルディーノ・リバダビア自然科学博物館の研究チームは、約7000万年前の地層から、ウネンラギア類に属する新種恐竜を発見し、学名を「カンク・アウストラリス(Kank australis)」と命名しました。

この恐竜は、足にラプトル型恐竜らしい大きな鉤爪を持ちながら、首の構造などから、現代のサギのように水辺で魚を捕っていた可能性があるといいます。

研究の詳細は2026年5月28日付で学術誌『Journal of Vertebrate Paleontology』に掲載されました。

目次

  • 南パタゴニアで見つかった新種の恐竜化石
  • 乾いた荒野のハンターではなく、水辺で魚を狙う恐竜だった?

南パタゴニアで見つかった新種の恐竜化石

新種の恐竜化石が発見されたのは、南米アルゼンチン南部サンタクルス州、エル・カラファテ近郊にあるラ・アニタ農場です。

この地域には後期白亜紀マーストリヒチアン期の地層が広がっており、およそ7000万年前の南パタゴニアの生態系を知る手がかりが残されています。

発掘は2018年から続けられており、今回の恐竜の最初の化石も同年に見つかりました。

ただし、当初の化石は断片的で、それだけでは新種と判断するには不十分でした。

その後の調査で歯、椎骨、足指の骨などが追加で見つかり、特に2024年に発見された頸椎(けいつい)が、新種のウネンラギア類として認識する決め手になりました。

ウネンラギア類とは、後期白亜紀にいた小型から中型の獣脚類恐竜のグループです。

南アメリカ、南極、オーストラリア、マダガスカルなど、南半球を中心とした後期白亜紀の地層から化石が見つかっています。

【新種カンク・アウストラリスの復元イメージ画像がこちら

今回の新種は、いわばヴェロキラプトルのようなラプトル型恐竜を思わせる南方の親戚です。

足の第2趾には、他のウネンラギア類と同じく大きく発達した捕食用の鉤爪がありました。

一方で、歯には鋭く目立つ縦方向の隆起があり、首の骨には内部に空気の部屋を持つ含気化した構造が見られました。

これらの特徴は、新種を他の近縁種と区別する重要な手がかりです。

体の大きさは、近縁の恐竜(Neuquenraptor argentinus)との比較から、成体で全長2.5〜3メートルほどだった可能性があります。

同じウネンラギア類の中には、全長約5メートルに達した大型種(Austroraptor cabazai)もいましたが、新種はそれより小型で、比較的華奢な体つきだったと考えられます。

乾いた荒野のハンターではなく、水辺で魚を狙う恐竜だった?

今回の発見で特に興味深いのは、新種がどのような場所で、どのように暮らしていたのかという点です。

現在の南パタゴニアは寒く、比較的乾燥した印象の強い地域です。

しかし約7000万年前、この場所は今とはかなり違っていました。

古代の土壌や植物化石の分析から、当時の環境は温暖で湿潤だったと考えられています。

周囲には蛇行する川や小川、季節的にできる池があり、スイレンのような水生植物、魚、昆虫、さまざまな軟体動物が暮らしていました。

その水辺の世界に、新種もいたのです。

チームが注目したのは、新種の頸椎(けいつい)の構造です。

この首の骨には、筋肉の付着や首の血管を保護するための特殊な構造がありました。

こうした特徴は、現代のサギのように複雑な首の動きを行う鳥類で重要になります。

サギは水辺でじっと獲物を待ち、魚が近づくと、長い首をすばやく伸ばして捕らえます。

新種もまったく同じ行動をしていたとまでは言えませんが、首の構造や化石が見つかった環境を考えると、水辺で魚を捕る生活に適応していた可能性があります。

実際、新種の化石は魚類化石とともに見つかっており、ウネンラギア類が魚食性だったという見方を補強しています。

さらに、このグループには、細長い吻部(口先)、多数の歯、長く柔軟な首など、魚を捕るのに向いていたと考えられる特徴が知られています。

もちろん、彼らが魚だけを食べていたと断定することはできません。

同じ生態系には、カエル、トカゲ、カメ、哺乳類なども生息していたため、そうした小動物を捕食していた可能性もあります。

また、新種は常に捕食する側だったわけでもなさそうです。

同じ地域には、全長10メートルを超える大型肉食恐竜(Maip macrothorax)も暮らしていました。

新種は水辺で小さな獲物を狙う一方で、より大きな捕食者に狙われる存在でもあったかもしれません。

新種カンク・アウストラリスの復元アニメーションがこちら。試聴の際は、音量にご注意ください。

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今回の発見は、南パタゴニアにおけるウネンラギア類の分布の空白を埋めるものでもあります。

これまで北パタゴニアでは複数の種が知られていましたが、南パタゴニアでは種レベルで同定できる化石が乏しい状態でした。

新種は、北パタゴニア、南パタゴニア、さらに南極の記録をつなぎ、このグループが後期白亜紀の南半球に広く分布していたことを示唆しています。

ラプトル型恐竜というと、地上を駆ける俊敏な肉食恐竜というイメージが先に立ちます。

しかし新種は、その仲間たちが水辺にも進出し、サギのような狩りのスタイルを身につけていた可能性を教えてくれます。

7000万年前のパタゴニアの川辺では、鋭い鉤爪を持つ恐竜が水面を見つめ、魚の動きを待っていたのかもしれません。

参考文献

Heron-like, fish-eating dinosaur from 70 million years ago discovered in Argentina
https://phys.org/news/2026-05-heron-fish-dinosaur-million-years.html

元論文

New unenlagiid from the Chorrillo Formation (Late Cretaceous, Maastrichtian), SW Patagonia, Argentina
https://doi.org/10.1080/02724634.2026.2656456

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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