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『田鎖ブラザーズ』猛烈に怖かった第6話。静かな圧力で迫る“とんとん先生”に身震い

  • 2026.5.29
ドラマ『田鎖ブラザーズ』場面写真 (C)TBSスパークル/TBS width=
ドラマ『田鎖ブラザーズ』場面写真 (C)TBSスパークル/TBS

岡田将生と染谷将太が主演を務めるTBS金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』。第6話の終盤、エンディングの主題歌とエンドロールが、まだ残り10分という段階で流れ始めた。「これは何かが起きる」という予感とともに、「こわい~!」と震えながら、身動きもできず画面に釘付けになった視聴者も多かったのではないだろうか。息づかいや心臓の音まで聞こえてきそうな緊張のシーンが続いた。

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◆岡田将生×染谷将太、新井順子Pが贈るクライムサスペンス

1995年に両親を殺害された田鎖兄弟の物語を見つめた本作。2010年4月27日、殺人罪などの公訴時効が廃止された。しかし兄弟の両親殺害事件が時効を迎えたのは、その2日前だった。もう法では裁けない犯人を追うため、兄・真(岡田将生)は刑事に、弟・稔(染谷将太)は検視官になった。

プロデュースは、『アンナチュラル』『MIU404』『最愛』などの名作を世に送り出してきた新井順子。完全オリジナルの本作も、期待を裏切らない密度で、毎話展開している。各話で現代の事件が並走しながら、過去の事件の真相へと少しずつ近づいていく。その構造が、本作の見どころのひとつだ。

6話までの流れを簡単に振り返っておく。兄弟が、犯人だと信じて追ってきた津田雄二(飯尾和樹)は、末期がんで死亡。ノンフィクション作家だった津田は、何かをつかんで追っていたらしく、現時点では兄弟自身も、津田は犯人ではないとみている。一方、捜査を続けるうち、兄弟の父・田鎖朔太郎(和田正人)が勤めていた辛島金属工場では、かつて拳銃が製造され、暴力団・五十嵐組に流れていたらしいことが分かってきた。津田が生前につけていた取材ノートには、その証拠となる記録が残されているとみられ、五十嵐組が回収したらしいが……。

◆犯人は小池係長? もっちゃん? ここまでに見えてきたこと

まず、怪しさ漂いまくりの小池係長(岸谷五郎)。もともと兄弟の両親が殺害された当時、捜査一課で事件を担当していたが、今は真と同じ強行犯係で、係長(警部補)をしている。真に向ける視線など、視聴者の間でも疑惑の目が集まる筆頭のキャラクターだ。だが、彼は真犯人ではないだろう。

その根拠は、小池が兄弟に「津田は犯人じゃない」と告げているからで、もし彼が真犯人なら、津田が犯人だと思わせたほうがいい。小池に周囲にバレたくない、後ろめたい点があるとしたら、五十嵐組とのつながりが考えられる。第6話の五十嵐組へのガサ入れは失敗した様子だが、これは小池が五十嵐組へ情報を流したためではないか。

続いて、辛島金属工場の元工場長(長江英和)の妻で、山岳写真家の辛島ふみ(仙道敦子)。かつて工場を手伝っていた関係で、拳銃製造という過去にも当然タッチしている。このふみが、これまた相当怖かった。津田が生前、取材ノートを彼女に買い取るよう打診していたことも明らかになっており、そのノートの存在を処分したい相手なのは明らか。ただ、こちらも、彼女が気にしているのはあくまで「拳銃製造という過去」であり、兄弟の両親殺しの犯人ではないと見る。

そのふみに、今回脅されているように映ったのが、ずっと兄弟の傍で兄弟を支えてきた、町中華屋の亭主もっちゃん(山中崇)だ。第6話ではもっちゃんの母・茂木カル(三谷侑未)が初登場。高齢にもかかわらず、辛島家のお手伝いさんのように動いていた。もっちゃんは、ふみに何かを握られているようだ。もっちゃんが真犯人とは思わないが、兄弟に知られたくない何かがあるのだろう。町中華のパートをしていた、兄弟の母親(上田遥)との間に何かがあったのか、という予想もできる。兄弟のことを心から思っているという点は信じたいが、まだまだ謎が残る人物だ。

そして自身も事件被害者の晴子(井川遥)。兄弟の幼なじみとして彼らを支え、質屋を営みながら、元新聞記者としてのキャリアを活かし、兄弟に手を貸している。第6話では、彼女自身のバックボーンが明かされた。小学生の頃、事故で母と弟を亡くし、数年前には父が海に落ちて亡くなっている。家族を全員失った人物だ。母と弟を亡くした「事故」とはなんだったのか。父の転落死の詳細も語られていない。そもそも、あの事件当日、なぜあの場所にいたのかも気になる。兄弟の幼なじみ、という関係性だけではくくれない謎が、晴子には残っている。

◆被害者の痛みも、加害者の痛みも「おあいこ、とんとんです」

さて、第6話。もっともインパクトのあった人物について改めて触れたい。第5話で成田温子(中島ひろ子)が携帯メッセージを送った「先生」として触れられ、第6話で姿を現した市役所福祉健康課の相談員・秦野小夜子(渡辺真起子)。視聴者の間では「とんとん先生」の名も広がりつつある秦野が怖すぎた。

穏やかな声のトーン、寄り添うような言葉遣い。しかしその実、相手の感情を巧みに掘り起こし、静かに誘導していく。「一人で抱え込むのは苦しくないですか」「私はその根に花を咲かせるお手伝いをしているんです」。聞こえはいい。しかしその言葉の一つひとつが、じわじわと相手の復讐心に火をつけていく。

被害者の痛みも加害者の痛みも「おあいこ、とんとんです」とささやきながら、相談者の手を自分の手で優しく包み、そっと叩く。手の甲にふたつのホクロが見える。「とんとん」というリズムで叩くたびに、そのホクロが目に入る。怖い。そして、この絶妙な不気味さと怖さは、渡辺真起子という俳優でなければ成立しなかっただろう。圧巻。穏やかさと狂気を同居させる佇まい。お見事というほかない。

そんなとんとん先生・秦野の「正体」について。一部では、30年前の兄弟の両親殺害事件からすべてを操ってきた黒幕ではないかという説もある。確かに、真が「田鎖」と名乗った瞬間の反応は意味深だった。しかしこの説には懐疑的だ。「珍しい名前なので」という秦野の言葉通り、当時広く報道された事件として記憶に残っていた、という解釈で十分ではないだろうか。これまでの本作の構成を見ても、現代の事件は、数話をかけて積み上げられていく。秦野もまた、この数話をかけて描かれた事件の黒幕として捉えるのが自然だ。

◆「とんとん先生」を前に流した、真の涙は本物か

では、秦野とは何者なのか。第7話予告の「私は仕事をしただけですよ」という台詞が、ひとつの答えを示しているようにも思う。彼女の指す「仕事」とは、被害者への共感や犯人への怒りではなく、信念。「とんとんが正義」という歪んだ確信のもとに動いている人物像が浮かび上がる。ただし、秦野の言う「とんとん」理論には、突っ込みも入れたくなる。特に第5話。大学受験に落ちた息子(齋藤潤)を持つ温子が、採点ミスを隠した大学理事長を殺した(とされる)事件。採点ミス隠ぺいと理事長の死が「とんとん」? 秦野の「正義」は、結局、彼女が人をコントロールする喜びのために立てられた「正義」でしかないのではないか。

歪んでいようと、秦野なりの正義で動いているとして、なぜわざわざ刑事である真に近づいたのか。すでに相談者・宇野孝道(山本浩司)には疑いが持たれている。自分へ捜査が及ぶのも時間の問題だ。警察内部から捜査を遮断できる存在が必要だったのだろうか。“田鎖”という聞き及びのある、過去の事件の遺族・真はその標的になりえる。

そしてあのクライマックス。真の涙は本物だったのか。「本当は何か作る仕事がしたかった。父ちゃんみたいに」。相談室で、真は涙を流した。あれは演技だったのではないか。真というキャラクターを振り返るに、第1話から、オープンカフェで通りすがりの女性たちの雑談が耳に入るや、戻って座り聞き耳を立てていた真。第6話の冒頭で、スリを捕まえたのも、偶然といえば偶然だが、日常的に街の様子に気を配っていた結果だろう。「牛を育てる」携帯ゲームも彼の性格を表している。感情的な面を見せることもあるが、根っこでは、コントロールする(したい)側の人間だという印象がある。そんな真が、よく知りもしない相手に、あの短時間で落ちるだろうか。

そもそも真は、当初から犯人に“復讐”したいと思い続けてきた。犯人ととんとんでは?と言われたところで、響く要素がない。最初の事件の犯人が、復讐を遂げようとしていた際にも、「いいんじゃないですか」と言い放っていた。防犯カメラに映る宇野の姿も、チームに報告していない。もともと、真は真自身の正義で動いている。復讐心を焚きつけるという懐への入り方は、真には通じない。もし仮に、秦野がいま、真が復讐すべき相手として導くのならば、当時の担当刑事だった小池か、ということになるが。

さらに「一人で抱え込むのは苦しくないですか」と秦野は孤独に入り込もうとするが、秦野の計算には、見落としがある。真には稔がいる。「家族にも言えないことがあるでしょう」と隙間に入ろうとしていたが、それでも真は一人ではない。そのことは、なにより真自身が、一番分かっているはずだ。

真と稔。復讐のために警察官になったふたりの兄弟が、どう互いを信じ、どう真実に辿り着くのか。物語は核心に近づきつつある。(文:望月ふみ)

金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』はTBS系にて毎週金曜22時放送。

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