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【60代映画】カンヌ出品作品!『箱の中の羊』は綾瀬はるかと大悟演じる夫婦再生の物語

  • 2026.5.28

綾瀬はるかさんと千鳥の大悟さんが夫婦役を演じて話題となっている映画『箱の中の羊』、5月29日(金)より全国公開です。 『万引き家族』(2018)『怪物』(2023)など国際的に評価の高いオリジナル作品を世に送り出し続ける是枝裕和監督の最新作。今作も第79回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品されました。 子どもを亡くしてから2年、表面上は日常を取り戻しているように見える夫婦が、息子の姿をしたヒューマノイドを受け入れたことをきっかけに、家族のあり方、夫婦の関係を見直す再生の物語。見どころを紹介しつつ、「食」のシーンにも注目しました。

ストーリー

そう遠くない未来。 建築家の音々(綾瀬はるか)と、工務店の二代目社長を務める健介(大悟)の夫妻は、7歳の息子・翔(桒木里夢)を2年前に亡くしていた。 2人は、息子の姿をした最新型ヒューマノイドを迎え入れることにするが、喜びいっぱいの音々と、戸惑う健介の間には温度差が広がるのだった。やがて予期せぬ事態が起こり、夫婦2人がそれぞれ息子の死に対して抱き続けてきた想いがあらわになる。 いっぽう、ヒューマノイドの翔はひそかにヒューマノイド仲間たちとつながりを持ち始めていた。

【見どころ1】子どもを亡くした夫婦の関係性の変化を繊細に演じた綾瀬はるかと大悟

7歳で亡くなった息子そっくりのヒューマノイドを家族として迎え入れた音々と健介の夫妻。「事件や事故で家族を亡くした遺族に対し、最新型ヒューマノイドを無償でレンタル」というサービスを知った際、妻は乗り気ですが、夫は「ハイエナやん。人の不幸で」と否定的な態度で温度差があります。 実際にヒューマノイドを迎え入れることになっても、「おかえり、翔(かける)」と喜びいっぱいの妻に対し、「いらっしゃい」と言うのが精いっぱいの夫は自分をパパではなく「おじさん」と呼ぶように伝えます。

ただ、2人の<ヒューマノイド翔>に対する感情や接し方は、最新のAI技術で成長していく言動を見て、少しずつ変化していきます。息子を失った過去も少しずつ明らかになり、ヒューマノイド同士が密かにつながっていくなど、ミステリアスな展開も。そして家族が抱えていた思いが表面化して心かき乱され、息子の死によって止まっていた時間が再び動き出すのです。 繊細な夫婦関係の機微を演じた綾瀬はるかさんと大悟さんの演技がすばらしく、<生前の翔>と<ヒューマノイド翔>を演じた子役の桒木里夢くんも自然体で魅了されますのでお楽しみに。

【見どころ2】「星の王子さま」、木、建築…様々なモチーフがちりばめられ、心地よい余韻が残る

タイトルの『箱の中の羊』は、サン=テグジュペリの『星の王子さま』に登場するエピソードから。「大切なものは、目に見えない」という有名な作品テーマが、この映画の根底にも流れています。

また、妻は木のぬくもりを大切にする建築家であり、庭に植えたレモンの木や植物を大事に育てていること。夫は工務店の二代目社長で、田中泯さん演じるベテランの大工を尊敬し、木の香りに癒されていることなど、作中には「手しごと」や「木」が象徴的なモチーフとして登場します。 これに対して是枝監督は「(木のネットワークとコンピューターネットワークを重ねて)目に見えない繋がりを描けるのではないかと思った」と、その意図を明かしています。ヒューマノイドと対比しているようでどこかつながっている「木」の存在を考えたとき、一組の夫婦、ある家族の物語でありながら、宇宙的な広がりも感じました。観終わった直後より、後からじわじわと余韻にひたれるような作品です。

【ここにも注目!】「食べんと死んでしまう」のが人間だから

ヒューマノイドは充電式で食べ物を口にしなくても大丈夫、というか機械なのでなにか食べたら壊れてしまいます。 それにつき合って「私も食べない」と言い出す妻に対し、夫が「わしは食べる。人間やから食べんと死んでしまう」と返すセリフが印象的。食べることのできないヒューマノイドと、過去に傷つきながらも食べることで生きようとする人間の対比が浮き彫りになっています。 食べ物を口にする、数値や理屈で計れないおいしさを感じる、見た目や旬を楽しむ、食べ方にも人柄が出る、これがAIとの違いで、人間らしさなのだとハッとさせられました。

妻の音々も、清野菜名さん演じる妹がお菓子を持って訪ねてきたときには、“急いで5分だけ冷やして”違う味を半分ずつシェアして食べていて、おそらく幼い頃から変わらないであろう姉妹の関係性が垣間見えました。 ヒューマノイドが登場するということでSF作品だと思われるかもしれませんが、人と人、人とヒューマノイド、そしてヒューマノイド同士の交流を描いた、あたたかみのある作品になっています。再生に向かう夫婦とヒューマノイドの行く末を、ぜひ劇場で見届けてください。

作品情報

『箱の中の羊』
5月29日(金)全国公開
 
監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:綾瀬はるか 大悟(千鳥)
桒木里夢 清野菜名 寛一郎
柊木陽太 角田晃広 野呂佳代 星野真里 中島歩
余貴美子 田中泯
©2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro.
 
 

この記事を書いた人 富田夏子

雑誌ライター歴21年。得意分野はエンタメ、フード、ライフスタイル。映画ライター/映画ごはん研究家として、「映画とごはんをつなぐメディア」をSNSで展開し、映画と食に関連する情報や体験をシェアしている。日本映画ペンクラブ会員。 雑誌やWEBへの映画レビュー連載歴は14年で、俳優や映画監督のインタビューも手がける。料理取材の試食は残さず食べる食いしん坊。

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