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「隣の迷惑考えてよ」 電車内で音漏れしている男。だが、男がスマホを落とした瞬間、状況が一変

  • 2026.5.29
「隣の迷惑考えてよ」 電車内で音漏れしている男。だが、男がスマホを落とした瞬間、状況が一変

今日はハズレだ、と思った朝

通勤電車が混み始める時間帯のことだった。

その日は少し遅めに家を出たが、運よく座れた。

かばんをひざの上に置き、目的の駅までもうすぐというところで、隣の席が空いた。

座れた席のすぐ隣に、少し遅れて人が座ってきた。

ヘッドホンをつけたまま、かなり大きな音で音楽を流していた。

隣に座っただけで、ドラムとベースがはっきり聞こえてくる。かなりの音量だ。

しばらくすると、その人がリズムに合わせて足で床をドン、ドンと叩き始めた。

シートが微かに振動するくらいの強さで、一定のテンポを刻んでいる。

周囲の乗客が、ちらちらとこちらを見ている気もする。

自分が出しているわけではないのに、なぜか居たたまれない。

(注意しようか)

そう思いかけて、やめた。朝から波風を立てるのも気が重い。今日はハズレの席を選んでしまったと、窓の外に目を向けた。

イライラが積み重なっていくなかで

その後も音漏れは続いた。曲が変わるたびに音量が上がったり下がったりするが、隣の人が気にするそぶりはない。

足踏みも続いている。

ドン、ドン。シートが微妙に振動する。

(隣の迷惑考えてよ)

(せめて、もう少し音を絞ってくれれば)

でも声には出せなかった。

どんな反応が返ってくるかわからないし、朝の時間帯に余計なトラブルは避けたい。

こちらが気を揉んでいるのに、当の本人はまったく意に介していないように見える。ただひたすら、目的の駅が近づくのを待った。

次の駅のアナウンスが流れると、隣の人がようやく立ち上がった。

(もうすぐ終わる)

そう思ったとき、床にパタンと音がした。

「落としましたよ」の一言が、朝を変えた

スマホが足元に滑っていた。

反射的に拾い上げて、立ち上がろうとしていたその人に差し出した。

「落としましたよ」

相手の顔が、一瞬驚いたように固まった。次の瞬間、深く頭を下げた。

「ありがとうございます!」

声はきちんとしていて、お辞儀も丁寧だった。そのまま扉が開いて、降りていった。

残されたのは静寂だった。音漏れも足踏みも、もうない。車内がふっと落ち着いた空気に戻る。

さっきまであんなに気になっていたのが、嘘みたいだ。

窓の外の景色を眺めながら、朝から思いがけず人のためになれた気がして、気分がずいぶん軽くなった。

拾って渡しただけの、ほんの数秒のことだ。でも、あの深々としたお辞儀がまだ目に浮かぶ。イライラしていたことも、どこかへ飛んでいった気がした。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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