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ジャルジャルとVaVaが語る、コントと音楽が生み出す余韻と効能

  • 2026.5.27

ジャルジャルの単独ライブツアー「っせ ーJARUJARU CONTE TOUR 2026SSー」で音楽演出を手がけたVaVa。コントの世界を彩る音とはどんなものなのか。2組が語る、制作の背景やコントライブにおける音楽の役割、そしてAIの話。

photo: Jun Nakagawa / text: Neo Iida

ジャルジャルとVaVa
BRUTUS

全国3都市を巡ったジャルジャルの単独ライブツアー「っせ ーJARUJARU CONTE TOUR 2026SSー」が5月24日に大団円を迎えた。現在は配信で視聴可能となっている本公演は、オール新ネタで構成された贅沢な90分間だ。コント一つひとつに愛すべき物語があり、時におかしく時に切ない人間模様が繰り広げられていく。クライマックスでは客席から歓声が上がり、爆笑と感動の中で幕を閉じた。

「っせ」を支えたのが、トラックメイカー・ラッパーのVaVaが制作した音楽だ。オープニング、幕間、そしてエンディングに至るまで、VaVaが手がけたトラックがジャルジャルの世界を彩った。

マネージャーが感じた両者の「オタク気質」

後藤淳平

単独ライブを一緒に作ってるスタッフさん……、言ってしまうとマネージャーがVaVaさんのすごい大ファンで。僕らの『ジャルジャルアイランド』っていうYouTubeチャンネルのコントにエキストラで出てくれたときにVaVaさんのスウェットを着てきて、ロゴが映り込むくらい。

福徳秀介

まあ公私混同があったみたいなんですけど(笑)。でもそれだけじゃなく、マネージャーは僕たちの単独ライブにVaVaさんの音楽が合うんじゃないかってシンパシーを持っていたらしいんですよね。それで提案してくれて。

マネージャー

VaVaさんは音作りに関してオタク気質なところがあると思っていて。ジャルジャルの、コントができればなんでもいいみたいな、コントオタクなところと合いそうだなと思ったんです。

VaVa

オファーをいただいたときにすごいびっくりして。え、僕でよければぜひと。いや、生きててよかったです。

後藤

僕たちもVaVaさんの曲を聴かせていただいてました。

福徳

はい。マネージャーが「福徳さんやったらこの曲が多分気に入ると思うんで」って教えてくれるんで。

VaVa

えーっ、嬉しいです。

自分は基本ゲームと音楽しかやらない生活スタイルなんですけど、そんな自分でも『ジャルジャルアイランド』は何本か見ています。物件探しの条件を言うコントが大好きなんですよ。駅直結、タワマン、3万円みたいな。

仲のいい子がずうっと「おきんたま入店」って口癖のように言っていて「それは何?」って聞いたこともありましたし(笑)、あと古民家カフェの回転率のコントの、後藤さんのかわいそうな役回りの人の表情がめちゃめちゃいいなあと。

後藤

うわ、嬉しいです。でもテーマがふわっとしてる段階で無茶なお願いをしてしまって。

VaVa

いや、全然明確でしたよ。僕はラッパーと一緒に仕事をすることが多いんですけど、大体そういう人たちの伝え方って、目をつむりながら「次は泡みたいな感じがいいっす」みたいな感じなんですよ。

いつも結構抽象的なので、むしろ今回はものすごく鮮明な情報を提示していただけてわかりやすかったです。

後藤

あっ、そうなんや。僕らまだ詰め切れてなかったんで、こんなお願い大丈夫かな……ぐらいの感じやったんです。普段はもっとやんわりしたオファーが多いんですか?

VaVa

めちゃめちゃ多いですね。もう感覚の世界の人たちと一緒に居すぎて。

福徳

厳密には僕らはVaVaさんとの打ち合わせには参加していなくて、演出を担当しているスタッフさんたちが内容を伝えてくれたんです。

コントで音楽を使うのにAIを利用することもあると伝えたら、VaVaさんが「AIでなんでもできる時代に僕に頼んでくれてありがとうございます!」と仰って、そこでテンションマックスになってたって話は聞きました。
ジャルジャルの福徳秀介
BRUTUS

AIと音楽、AIとコント

VaVa

(笑)。いやあ、今ってAIでお金をかけずに自分の言いたいことを伝えれば5分後ぐらいに何百曲もできてしまう世界じゃないですか。

でもAIが作るのは綺麗なものなので、こうやって僕に頼んでいただけたっていうことは、人間らしさというか、歪な土臭さみたいなものがあったほうがいいのかな、と最初に意識しましたね。

福徳

プロの方ってAIが作った音楽かどうかってわかるんですか?

VaVa

質感でわかりますね。でも、プロでもAIを楽曲制作のヒントにする人はいると思います。曲を作りすぎてインスピレーションが枯渇したから試しに使ってみるとか。自分も遊んでみることはありますしね。リリースしてない曲を違う曲っぽくしてみたり。違うフィルターを通してくれるから面白いですけど、結局やっていても面白くないんですよ。

やっぱり自分が聴きたい音楽を作るために音楽をやってるので。便利だし脅威だとは思いますけど、今はAIが作った音楽を聴く人はあんまりいないだろうなと思います。

後藤

そうですよね。AIが作ったとわかっているうえで心から聴けないですよね。

VaVa

YouTubeに上がってる80’sの曲を聴いてみたらAIで、うわぁみたいなこともあります。結局再生数とかでお金にしてるわけですよね。何とも言えない気分になりますけど、面白いなあとポジティブな気持ちではあります。

後藤

僕たちは、もしネタ作りの中でAIを使うことがあるとすると、生成AIで声だけ使うとかですね。例えばアナウンサーの実況の声とか。ネタの内容を考えるのに使うことはないですねえ。

VaVa

わかります。僕もやってみたことがあるんですよ。自分が書いた歌詞に対して続きを書いてみてって。何パターンかやったんですけど猛烈に良くなくて。結局綺麗なものが出来上がってしまうので、人間のクリエイティビティには敵わない。

福徳

AIとはちょっと違うんですけど、たまに別の人のネタのことで「これジャルジャルっぽいな」って言われることがあるんです。でも、いざそれ見たらどこがやねん!って(笑)。だから多分VaVaさんも「この曲VaVaさんっぽくない?」って言われても全然しっくりこないと思うんですよね。

VaVa

わかります。ほぼピンときたことないですね。違うし、全然かっこよくないです。

「それっぽいもの」は本物とは全くの別物ですもんね。コントっぽいもの、音楽っぽいものは作れても、根幹の部分が足りていないと何か違うな……となりますよね。

福徳

特に気持ちの問題とか、AIがわからない部分だと思うんですよね。

後藤

AIに何かを聞くとか、対話はできると思うんですよ。ただそこで出てきたものを演じるとなるとまた別物だと思います。
ジャルジャルの後藤淳平
BRUTUS

世に出したときに生まれるギャップ

福徳

普段曲作りをするとき、どうやってインスピレーションを感じていらっしゃるんですか?

VaVa

かっこいい曲を聴いたときかもしれないですね。いい曲だなと思ったときに、いきなり「作りたい!」って気持ちが上がるんですよ。インスピレーションがわっと出てきて、実際に作ってみる。最近はいろんな曲を聴きすぎて、自分の中でハードルが年々上がってきている気がします。

福徳

誰かの曲を聴いて、違う曲が作れるんですか?かっこいい曲一曲に対して、新しい曲が何個か降りてくるってことですか?

VaVa

そうですね。いったん自分のフィルターを通しますし、自分のこだわりもあるからどう頑張ってもその曲に似ることはないです。面白いのが、僕の周りの人たちは大体そうなんですけど、いわゆるヒットする曲、人に聴かれる曲って、制作期間がめっちゃ短いんですよ。

イチから楽曲を作り始めて、歌詞も書いて、レコーディングして、動画を作り終えるまで2時間、という曲がたくさん聴かれたり。あれって不思議だなと思いますね。

福徳

確かに、何回も何回も熟考して作っても、あんまり伝わらないこともあります。ヒットするって自分の好きとはちょっと層が違う感じがしますよね。だから割に合ってないなあと思います。真面目な人ほど割が合わないんじゃないですかね。

後藤

作ってから人前で何回もやらないといけないんで、一発目にやるまでに練習しすぎないほうがいいやつやな、みたいなことはありますね。

VaVa

へえ、そういうのあるんですね。

後藤

そうなんです。鮮度を保ったまま一発目にお客さんの前でやったほうがいい系のネタやな、みたいな。逆にちゃんとやっておいたほうがいいやつやな、とか。

VaVa

たくさんやると、つまり練りすぎてしまうんですか?

後藤

そうですね。鮮度がなくなっちゃう。

VaVa

多分、予定調和感が生まれるんですかね。めちゃめちゃ面白いですね。

前に出ない、飽きない、邪魔にならない音

VaVa

自分の音楽制作でも言えるんですけど、ドラゴンクエストの楽曲制作をしたすぎやまこういちさんは、プレーヤーは同じ街に何回も行くから、聴きたくなくても同じBGMを何度も聴くことになると。だから音楽はあくまでも雰囲気。前に出ない、飽きない、邪魔にならない、それでいて想像力を掻き立ててくれる曲を作らないといけない。そう話されていて、今回「っせ」の音楽を作るにあたって、同じだなと思ったんです。

まずお二人がいて、その後ろに音楽がある。どう華やかにしていったらお二人が目指すものに近いかな、みたいなことを考えて作りました。特にラストのところですよね。

後藤

確かに言われてみたら最後のクライマックスのところとかは、AIで作ったらあんな曲にはならへんやろうと思いますね。でもインパクトがありながら音楽は前に出すぎないっていうその塩梅、確かにありますね。

VaVa

幕間では余韻を楽しみたい気もするんですよね。でも、会場に自分がいたとして、静かすぎる音楽だと気まずくなるし、うるさすぎると一気に気分が悪くなってしまう。

単独ライブのテーマに一貫性があるじゃないですか。だからそれを邪魔しないように、ほどほど世界観に入ったまま時間が過ぎる感じですかね。それって普段自分の曲作るときとテンションは結構違うんですよ。自分のリズムみたいなものとは。

福徳

でも出ちゃいません?

後藤

しょうもない質問ですけど、VaVaさんのファンが偶然ジャルジャルライブに来てたとして、「あれ、この曲VaVaさんじゃね?」と思われたらそれって嬉しいですか?

VaVa

あ〜めちゃめちゃ嬉しいですけど、集中してほしいなあって。

福徳

バレたら曲が前に出たってことか。

後藤

隠しきれへんかったなみたいな。

VaVa

ヒップホップのプロデューサーとか作曲家の中には、曲のどこかに「VaVa」って入れたいっていう人もいますよ。つまりストリートアートのタグみたいなことなんで、これが自分のビートですよ、自分で作曲した曲ですよっていうのを前に出す。それは音楽のジャンル的な様式美でもあるので、僕もたまにそういう曲はありますけど、さすがに今回は違いますよね。

後藤

でも全体を通して聴いたときに、潜在的に特別だと思ってくれてるやろなと思うんですよ。

福徳

そうです。今回の単独は音楽が詳しくない人でも、心の奥でうっすら特別なものを感じてくれてるやろなと思います。

VaVa

無意識でも、うっすら感じていただいてたらめっちゃ嬉しいです。
トラックメイカー・ラッパーのVaVa
BRUTUS

クライマックスで弾ける音楽の力

VaVa

ジャルジャルさんは単独ライブにおいて、音楽ってどれくらい重要だと思ってらっしゃるんですか?

福徳

かなり大事です。初めて単独ライブしたのは20年ぐらい前ですけど、そのときはほんと二人だけでやってたんで、一緒にTSUTAYAに行ってCDを何枚も借りて、全部聴いて、このアーティストでいくかみたいな。流す順番もすごく考えて。

後藤

このネタの次はマイケル・ジャクソンにしよう、その次はビートルズか、みたいな。そうやって選んでましたね。

VaVa

ネタの余韻が感じられるように、関連づけて選んでいたんですね。

福徳

はい。それくらい重要視してました。どんどんスタッフも増えて、演出を任せるようになってからはある程度お任せしてますけど、音楽はかなり大事です。

最後、クライマックスのいちばん盛り上がるところでVaVaさんの音楽がかかると毎回うわーってなってましたね。

VaVa

歓声が上がって良かったです。「ここからもっと派手に」みたいなリクエストをいただいて作ったので。

福徳

クライマックスは本当にちょっと歪というか、あんまそっち系いかんやろっていう感じなんですよね。最初からダンダダンダンダンダンダンダダンみたいななんかイメージなんすけど、実際違うんですよ。それがピタッとハマる感じが面白いですよ。

VaVa

初めて作った雰囲気ではあります。ああいった雰囲気は、あの、あんまりラッパーの人とかはないので。

後藤

和の感じというか。

VaVa

そうですね。ちょっと昔の歌謡の雰囲気もありつつ、音質もちょっと悪くて。でもあんまりライブの情報を公開してなかったと思うので、来た人はびっくりするかなとは思いました。あのオープニングの映像もかっこよかったですし。

後藤

あ、あれ、オープニングが終わってキューンってなって「せっ」って言うじゃないですか。あれはVaVaさんの声ではないんですか?

VaVa

あれは僕じゃないんです。知らない外国の方です(笑)。

後藤

あっ、そうなんですね!

VaVa

声の素材を使って、会話の中の「Say」を抜き取って「っせ」として使ったんです。

後藤

そこだけ僕らの「っせ」じゃないんですね。

福徳

あれめっちゃかっこよくて、マネージャーが詳しいから「これってVaVaさん?」って確認したりして。それでもわからなかったんですよ。だからすっきりしました。

VaVa

そうですね。多分あの声を出すには僕の体があと2〜3倍ないと。

技というほどではないですけど、これがあったらおもろいだろうな、みたいな、それぐらいの感覚で楽しみながらやらせていただいた感じがします。

後藤

毎年、単独ライブを年2回やらせてもらってるんですけども、相変わらず全て新作のコントです。やっぱりこのVaVaさんの音楽も含めて、見終わった後に特別感というか、いいものを見たなって思ってもらえるようなものになってると思います。

福徳

今回VaVaさんに音楽をしてもらったことで高貴な感じがキュッとして、個人的には過去イチ手が込んでいるライブという感覚がありますね。ほんまはライブ前から「VaVaさんに音楽をやってもらいました!」って言いたかったんですけど、でもお客さんにはゼロで来てほしい気持ちもあって。ぜひ改めて配信でも見てほしいです。
ジャルジャルとVaVa
BRUTUS

profile

ジャルジャル

後藤淳平と福徳秀介によるお笑いコンビ。2003年結成。日常の違和感や人間関係の機微を独自の視点で切り取るコントで人気を集める。YouTubeチャンネル(ジャルジャルタワー、ジャルジャルアイランド)登録者数は300万人超を誇り、毎日のように新作コントを発表。劇場公演、単独ライブ、映像作品など幅広く活動を続けている。2025年の単独ライブツアーでは約3万9000人を動員した。


profile

VaVa

ヴァヴァ/CreativeDrugStore所属のトラックメイカー・ラッパー。ヒップホップを軸にしながら、ユーモアやポップネスを織り交ぜた独自のサウンドで注目を集める。ソロ作品のほか、数多くのアーティストへの楽曲提供や劇伴制作も手がけるなど活動は多岐にわたる。今回のジャルジャル単独ライブでは音楽演出を担当し、コントの世界観を音で支えた。

Instagram:@vava_cds


Information

「っせ ーJARUJARU CONTE TOUR 2026SSー」

ジャルジャルによるオール新ネタの単独コントライブ。2026年4〜5月にかけて、東京・大阪・名古屋の3都市で全21公演を開催。音楽演出をトラックメイカー・ラッパーのVaVaが担当。

配信視聴チケットはセット券の形で販売中。5/24(日)17:30公演の千秋楽生配信と5/30(土)18:00から配信を開始するジャルジャルの生解説付き配信の2コンテンツを視聴できる。

副音声付きの配信では、ジャルジャルが千秋楽の様子を自分たちで視聴しながら自分たちで解説していく。

【セット券】「っせ ーJARUJARU CONTE TOUR 2026SSー」(5/24・5/30)
¥2,500(税込み)
※チケットの販売は6/6(土)昼12:00まで
※見逃し配信は5/30(土)22:00~6/6(土)23:59まで
※配信終了予定時刻を過ぎますとライブ配信の視聴ができない場合がございます。予めご了承ください。
※【副音声なし/あり】ともに5/30(土)22:00から、見逃し視聴の開始が可能です。お客様の見逃し視聴期間は、FANY IDの会員種別によって異なります。FANY IDメンバーは見逃し視聴を開始してから24時間、FANY IDプレミアムメンバーは見逃し視聴を開始してから72時間です。ただし、公演の見逃し配信終了日時を過ぎての視聴はできません。余裕を持ってご視聴をお楽しみください。

URL:https://online-ticket.yoshimoto.co.jp/products/jarujarussetour26052430

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