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振付演出家・竹中夏海がコント歌劇団を始動。ゆっきゅんと考える、「ここなら絶対大丈夫」と思えるエンタメとは

  • 2026.5.27

笑われるでも、笑かすでもなく、「笑い飛ばす」。そんなスローガンを掲げる〈紫芍薬(しゃくやく)歌劇団〉が、振付演出家・竹中夏海によって始動。6月7日の旗揚げ公演を前に、DIVA・ゆっきゅんと安心できるエンタメについて考える。

photo: Hiyori Korenaga / text : Sho Kasahara

BRUTUS

その場にいる誰も置いていかない、新しいコント歌劇団が始まる

ゆっきゅん

かなり前から「歌劇団をやりたい」って言ってましたよね。

竹中夏海

実は振付師の仕事に、どこか限界を感じていたんです。依頼があった楽曲に振りをつける以上、個人的に強く共鳴できる曲に出会えることもあれば、「これはどう表現しよう」と悩む曲に向き合うことも。そうした経験を重ねるうち、これは自分で作らないといけないなと思うようになったんです。そこから歌劇団という形が見えてきた。

もともとアイドルのライブ演出はしていて、コーナーを繋いで1つのストーリーを作ることには馴染みがあった。だから、コントと歌をシームレスにつなげる歌劇団に挑戦したいと思ったんです。ゆっきゅんには、歌のパートで出演してもらいます。

ゆっきゅん

決め顔で「歌劇団、やるよ!」って話してきた(笑)。「わしがやらねば誰がやる」って感じの目でおっしゃるので、私の楽曲でしたらぜひお使いくださいと伝えました。“むらしゃく”はどんな歌劇団ですか?

竹中

最近、カルチャー好きやお笑いファンの中でも、自分の感覚がアップデートされるごとに笑えないものが増えてきたっていう人が多い印象で。傷つくかもしれないと思いながら見るものって、笑えないじゃない?だから「絶対大丈夫」っていう気持ちでエンタメを楽しめる場所にしたい。

ゆっきゅん

セーフスペースとお笑いって、ちょっと距離がありますよね。危険ってわけではないけど、少し身構えてしまう瞬間があるというか。

竹中

ゆっきゅんは、安心して見られるエンタメってどんなものだと思う?

ゆっきゅん

私自身、よく「安心して見られる」と言われていて。うれしい半面、でもそれって大丈夫なのかなと悩んでいた時期があったんです。アイドルって「安心できない人」が売れるので。今にもいなくなりそうな人とか、傷だらけでステージに立っているような人、儚(はかな)さや脆さが価値とされる中にいる。私はそれへのアンチテーゼとしてDIVAを始めています。

結局、安心って「信頼」だから。見に来てくれている人は、ゆっきゅんが「ずっとステージに立ってくれること」を信じて来てくれているんだと思う。だから、安心して見られるエンタメは“私”です。

竹中

私はやっぱり「ないもの」を作りたい。十数年前までは、アイドルの振付という仕事はダンサーが妥協してやるもの、というのが強かった。でも、最初からその表現に魅力を感じてもいいじゃないか、という気持ちでこの道に入りました。だからこそ、前例の少ないものや、私自身が見たいものを形にしていきたい。私が作るものが、誰かが新しいものを探してるときのセーフスペースになればいい。

ゆっきゅん

わかります。私は、今まで誰も歌にしていない場所や感情、タイミングを歌ってきたと思ってる。好きな歌手や作詞家はたくさんいるけど、この人生を生きてるのは自分だけだから、その人たちにも書けない景色が絶対あるはず。歌になっていない情景を歌い続ければ、聴く人たちの人生が一つずつキラッと輝く。歌手のみんなで肩を組んでそれをやってるんだっていう意識があります。

竹中

今回の歌劇団も、やっぱりコントの世界って女性の割合が圧倒的に少ないし、だからこそ扱われてこなかったテーマもあると思うんです。エンタメ業界ではすごく面白い企画でも「前例がないから」という理由で通らないことが本当によくある。だったら自分で前例を作ればいいなって。こういうことを当たり前にやっている女たちが存在する、ということ自体に意味があると思う。

バタフライエフェクト的に、少しでも業界が変わるきっかけになったらいいなと思っています。
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profile

ゆっきゅん

1995年岡山県生まれ。青山学院大学大学院文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年に「DIVA Project」始動。5月26日にはDIVA5周年アニバーサリーライブ『CAN'T STOP DIVA ME』を恵比寿LIQUIDROOMで開催。

profile

竹中夏海

たけなか・なつみ/1984年埼玉県生まれ。振付演出家として幅広く活動。Podcast番組『Y2K新書』『我々は安心してエンタメが観たい』(TBSポッドキャスト)などのパーソナリティも務める。

Information

BRUTUS

紫芍薬歌劇団

女性の芸人、元アイドル、ミュージシャンらが集い、公演ごとに座組が変化していく“出入り自由”な歌劇団。旗揚げ公演は、6月7日に〈北沢タウンホール〉にて。一部コントの脚本協力として福田麻貴(3時のヒロイン)も参加。

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