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「この方向性はないな」と却下した係長が、3か月後に同じ資料を堂々と配っていた→その横顔を見て声が出なかった

  • 2026.5.21

2週間かけた資料を3分で切り捨てた

設計部に異動して最初の大きな仕事だった。

新しい工程管理のフローをまとめた資料で、現場の担当者に足を運んで聞き取りを重ね、図版の作成まで2週間ほどかけた。仕上がりに自信があるとは言わないが、それなりに根拠を積み上げたつもりだった。

直属の係長に持っていくと、パラパラとめくって3分も経たないうちに返ってきた。

「この方向性はないな」

続けて「うちの現場には合わない」と言い、それだけだった。

どこが合わないのか、どう直せばよいかという言葉はなかった。

資料はそのまま机の端に置かれ、その日の打ち合わせは終わった。

(具体的な指摘が一つもない)と思いながら席に戻ったが、何も言えなかった。

異動してまだ日が浅く、係長の判断を覆せるほどの立場ではなかった。

翌週、別の部署を兼任していたベテランの主任が資料を手に取った。

黙って読み込み、「これ、かなりよく整理されているな。現場の声が反映されている」と言った。数日後、その資料をもとにした叩き台が部内の会議で使われると聞いた。

少しだけ息ができた気がした。

方向性を否定したのは係長一人の判断だったと、静かに確認できた。

でも、それだけではこの話は終わらなかった。

何事もなかったように配られた資料

そこから3か月が経ったころ、部内の定例会議に出席した。

係長が書類を配り始めた。受け取って目を落とした瞬間、手が止まった。

自分が作った資料だった。図版の構成も、見出しの言葉も、データの並べ方も、そのままだった。

係長は説明を始めた。資料の出どころを一言も触れないまま、淡々と内容を読み上げていた。

その横顔がいつもと全く変わらないことが、妙に怖かった。

(この人は覚えていないのか。それとも覚えていて、何も感じないのか)

どちらも同じくらい恐ろしかった。声を出そうとしたが、口は動かなかった。

議事録を取っていた隣の席の同僚がちらりとこちらを見たが、何も起きなかった。

あの「この方向性はないな」という一言が、頭のどこかで何度もよみがえった。

却下した人間が同じ資料を何事もなかったように配り、読み上げている。

その事実だけが、胸の奥に静かに沈んでいった。

会議が終わっても、その感覚はしばらく抜けなかった。怒りとも違う、もっとじっとりとした感覚。3分で切り捨てた人間が、3か月後に同じ資料で平然と説明に立っている。その光景が、今も頭から離れない。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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