1. トップ
  2. エンタメ
  3. アニメ『ねずみくんのチョッキ』ポプラ社プロデューサーが語る、50年以上愛される絵本、アニメ化の裏側【インタビュー】

アニメ『ねずみくんのチョッキ』ポプラ社プロデューサーが語る、50年以上愛される絵本、アニメ化の裏側【インタビュー】

  • 2026.5.16
アニメ『ねずみくんのチョッキ』より
アニメ『ねずみくんのチョッキ』より

この記事の画像を見る

カラフルな枠の中にちょこんと小さく佇む赤いチョッキのねずみくん——。主人公のねずみくんが、大好きなねみちゃんや愉快な動物たちといっしょに過ごす日常は、いつでも笑いや驚きでいっぱい。「ねずみくんの絵本」シリーズは、1974年からのべ44冊が刊行され、三世代にわたって愛され続けるロングセラーだ。

そんな本作がこの春、TVアニメとなって登場。絵本の世界観をみごとに表現した映像が話題を呼んでいる。アニメがもっと楽しくなるような見どころや制作裏話をプロデューサーの片岡桃佳さんに聞いた。

ストーリーの面白さが際立つ仕掛けが

——絵本は2024年に50周年を迎えたロングセラーです。アニメ化には、どのような想いがありましたか?

片岡桃佳さん(以下、片岡):「ねずみくんのチョッキ」は2014年に迎えた40周年をきっかけに、絵本の枠を超えて商品化などの本格的なIP展開を始めました。今でも全国を巡回している原画展には多くの方にご来場いただき、長年愛され続けてきたロングセラーの力と可能性を実感しています。そうした流れの中で、アニメ化の企画をずっとあたためていました。ねずみくんをこれから50年、100年先まで愛されるように育てたいという想いがあったんです。

——3世代にわたって読み継がれている絵本で、新作が出るのを楽しみにしている愛読者も多いと思います。

片岡:絵本シリーズは、2019年に上野紀子先生(絵を担当)が亡くなられてからも、なかえよしを先生(作者)がデータで絵を加工し、新たな作品を生み出しています。こんなにも長く新刊を出し続けているロングセラーは、他にはないのではないでしょうか。自分が子どもの頃に読み聞かせてもらって笑ったページと同じところで、今の子どもたちが笑う姿をみて、いつの時代も変わらない絵本の本質が詰まった作品だとあらためて思います。

——アニメ化にあたって、作者のなかえ先生からはどんなお話があったのでしょうか。

片岡:上野先生の絵をアニメでも再現してほしいというお話があり、私たちも、媒体は違いますがアニメになっても絵本を読んでいる時の空気感や読後感、ページとページの間を大事にしたいと考えていました。はばら監督からご提案いただいた画面上にページめくりが出てくるアイデアは、なかえ先生からもいいねと仰っていただきました。

——本作の大きな特徴でもある「枠」や鉛筆で描かれた絵などが忠実に再現されていて、「絵本がそのままアニメになっている」という嬉しさと驚きがありました。

片岡:ありがとうございます。特徴的な、余白のある構図はもちろん、絵や文章もできる限りシンプルに。ということを追求した絵本なので、余白の中で想像することをアニメでも楽しんでいただけたらうれしいです。書き込みや色が多い子ども向けアニメも多い中、いっけん寂しく見えるかもしれませんが、こういう形だからこそ、原作のもつ「この先どうなるの?」というストーリーの面白さにくぎ付けになってもらえると思います。

——ゾウさんが歩くたびに画面が揺れるなど、アニメーションならではの表現も楽しめますね。

片岡:アニメは、上野先生が鉛筆で濃淡をつけながら表現した繊細なタッチと立体感を出すために、3DCGで制作しています。デフォルメした表現なら2Dのほうが向いていると思いますが、どうしても色がベタ塗りになってしまうので。アニメーションならではの表現として、例えば2話の「また!ねずみくんのチョッキ」では、鉛筆1本で描かれた水の風合いに、いきいきと流れるような動きが加わっていたり、アヒルさんの尻尾が可愛くプルッと動いたり、細かいところをすごくこだわって丁寧に作ってくださっています。

アニメ『ねずみくんのチョッキ』より
アニメ『ねずみくんのチョッキ』より

長年活躍するベテランたちが集結

アニメ『ねずみくんのチョッキ』より
アニメ『ねずみくんのチョッキ』より

——声優は、津田健次郎さんと能登麻美子さんのお二人がいろんな動物を演じ分けられています。ねずみくんの声を一言聞いたとき、すぐに「ねずみくんだ!」と思いました。

片岡:キャラクターボイスを発表した当時は、「津田さんの低音イケメンボイスがねずみくん!?」というお声もありましたが、おっちょこちょいで恥ずかしがり屋で、思わず応援したくなる愛らしいねずみくんをみごとに演じてくださっていますよね。能登さんのねみちゃんも本当にイメージ通りで、とっても可愛いです。お二人のキャスティングは、まるで読み聞かせを聞いているような落ち着きと、たくさんの動物たちをお二人で演じていただくので、お芝居の幅の広さにも着目してお願いしました。

——東京スカパラダイスオーケストラによる主題歌「グッドラック!マイフレンド feat.ムロツヨシ & さかなクン」にも注目ですね。どんなコンセプトで制作されましたか?

片岡:ねずみくんシリーズは、思いやりや想像することの大切さを伝える作品であるのと同時に、みんなで笑えるユーモア絵本としても支持されています。そのエッセンスを大切に、アニメ本編を見終わったあとも、子どものみなさんが一緒に歌って、踊って、楽しい気持ちになってもらいたいなと、スカパラさんにお声がけさせていただきました。たくさんの楽器でひとつの音楽を作り上げていることが個性豊かな動物たちの物語と重なり、第一線で活躍し続けるかっこよさにも、なかえ先生との共通点を感じました。

——歌にムロツヨシさん、ソプラノサックスにさかなクンと、豪華なメンバーになりましたね。

片岡:お二人ともスカパラさんと以前からご一緒されていて、そのご縁から実現しました。ムロさん、さかなクン、津田さんをはじめ、長年活躍されているベテランのみなさんが子どもたちのために力を貸してくださったのが印象的でした。

ねずみくんが教えてくれる“楽しい偶然”

ねずみくんの花ことば なかえよしを:作、上野紀子:絵
ねずみくんの花ことば なかえよしを:作、上野紀子:絵

——4月8日には新刊『ねずみくんの花ことば』(ポプラ社)が発売され、シリーズ44冊目となりました。ちなみに、これまでの作品で、片岡さんのお気に入りの一冊はありますか?

片岡:『コップをわったねずみくん』(1980年刊行)は読み聞かせをしてもらったことをよく覚えている一冊です。コップを割ってしまったねずみくんが、お母さんに嘘をついて誰かのせいにしようとするのですが、ねみちゃんのせいにまでしちゃうの? って(笑)。想像って、最初は嘘から始まることがあると思うし、ねずみくんが考える言い訳は突飛じゃないところが子どもらしくてリアルで面白いです。子ども心に、ねずみくんも自分と似たようなところがあるんだな、よかった…とどこか安心した記憶があります。何でもない日常のひとこまを切り取って、物語にしてしまうところがすごいなと思います。

ねずみくんシリーズは、深い味わいと同時に、動物たちの日常を切り取った面白さがあると思います。ねずみくんとねみちゃんもそうだし、ライオンさんやウマさんも。一冊一冊が、日常の中の1日。本を開いたとき、みんなの楽しい日々を垣間見ている気がして幸せだなって思うんですよ。

絵本『ねずみくんの花ことば』より
絵本『ねずみくんの花ことば』より

——そういうところが、なかえ先生が仰る「目に見えない大切なこと」や「思いやり」なのかもしれません。

片岡:なかえ先生はよく「セレンディピティ」(※)のお話をしてくださいます。それは、日常の出来事に目を向け、目には見えないけどあるものを感じ取ることで育まれていくものでもあり、その感覚が「ねずみくん」という存在につながっているのだと思います。親子でいっしょにアニメを楽しみ、会話を交わす中で、毎日の中にある楽しいことや素敵なことに気づく――子どもが本来持っている感性を、あらためて感じてもらえるきっかけになれば嬉しいですね。そして大人の方にも、想像する楽しさを思い出してもらえたらと思っています。

取材・文=吉田あき

※セレンディピティとは…素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見したりすること。また、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。

TVアニメ『ねずみくんのチョッキ』

放送:NHK Eテレ

毎週土曜日 あさ9:30~放送中

元記事で読む
の記事をもっとみる