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ドウェイン・ジョンソン×ベニー・サフディ監督が振り返る『スマッシング・マシーン』での初タッグや1990年代への想い「模索していた時代だった」

  • 2026.5.15

1990年代後半から2000年代前半における総合格闘技の世界で、“霊長類ヒト科最強”と呼ばれたマーク・ケアー。A24製作の『スマッシング・マシーン』(公開中)では、リングネーム“ザ・ロック”として活躍したプロレスラーであり、ハリウッドのトップスターでもあるドウェイン・ジョンソンが、ケアーの知られざる挫折と再生の人生を演じているキャスティングの妙がある。これまでのイメージを覆す彼の繊細な演技は、第83回ゴールデン・グローブ賞ではドラマ部門の主演男優賞候補となるなど高く評価された。MOVIE WALKER PRESSでは、来日したベニー・サフディ監督とハワイからオンラインで参加したドウェインにインタビューを実施。日本でもロケ撮影が行われた本作の時代背景などについて語ってもらった。

【写真を見る】『スマッシング・マシーン』のTシャツを着て来日したベニー・サフディ監督が、制作当時を振り返る

ドウェインとサフディ監督が、オンライン上で満面の笑みの2ショット! 撮影:岸豊
ドウェインとサフディ監督が、オンライン上で満面の笑みの2ショット! 撮影:岸豊

「対話の中で共通の理解が生まれ、とてもリアルで鮮やかなマーク・ケアー像をスクリーンで再現できた」(サフディ監督)

ドウェインとサフディ監督が組むのは今作が初めて。ケアーの人生を描くにあたり、ドウェインのキャスティングが欠かせないと考えたサフディ監督は、彼と親交のあったエミリー・ブラントにつないでもらえないかと打診したという。本作でブラントは、ケアーの恋人であるドーン役を演じているが、『オッペンハイマー』(23)では俳優として出演したサフディの共演者という縁があったのだ。

『ジャングル・クルーズ』(21)でも共演しており、すでに親交のあったドウェインとブラント [c]2025 Real Hero Rights LLC
『ジャングル・クルーズ』(21)でも共演しており、すでに親交のあったドウェインとブラント [c]2025 Real Hero Rights LLC

初対面の印象についてサフディ監督は「ドウェインと初めて会った時、“あ、この人わかる”という感じがしたんです。うまく言語化できないのだけれど、お互いが経験してきたことを学ぶにつれて、いろいろと分かち合えたんです。そういう対話の中で共通の理解が生まれ、深く協力し合い、とてもリアルで鮮やかなマーク・ケアー像をスクリーンで再現できたと思っています」と述懐。その言葉を受けたドウェインは「ベニーに会ってからは、すべてがとても明確になりました。いまここで使った言葉にもいくつか意味を成すものがあり、例えば彼は“鮮やか”と言いましたよね。ベニーは、とても“鮮やか”で、感情的な推進力を持つキャラクターを作り出します。彼らは深く(心に)傷を負っていて欠点がありますが、同時に救済ももたらします。アートはアーティストを反映するものですから、これはベニーにとって非常に特別な作品となると思っていました」と応えた。

「私の勇気を劇的に試すことができる初めての映画でもありました」(ドウェイン)

キャリア史上かつてないほどの繊細な役柄に挑戦したドウェイン [c]2025 Real Hero Rights LLC
キャリア史上かつてないほどの繊細な役柄に挑戦したドウェイン [c]2025 Real Hero Rights LLC

これまでベニー・サフディは、“サフディ兄弟”の名義で兄のジョシュ・サフディと共に第27回東京国際映画祭でグランプリに輝いた『神様なんかくそくらえ』(14)や、第70回カンヌ国際映画祭のコンペに選出された『グッド・タイム』(17)を監督してきたが、『スマッシング・マシーン』は監督として初単独名義の作品。このことについてドウェインは「私はベニーの初めての映画である『スマッシング・マシーン』で、彼の共同制作者、パートナーになれたことにとても興奮しました。それは、私の勇気を劇的に試すことができる初めての映画でもありました。だから、ベニーのことを本当に知りたかったのです。なぜなら、この映画がベニーを監督として、アーティストとして、そして人間として定義づける作品になるだろうとわかっていたから」と、自身がプロデューサーとしても本作に参加した理由も明かした。

また、負の要素を持った登場人物をリアルに描くことついてドウェインは「この作品を観ると、欠点だらけだけど、正しい行動をとろうとしている登場人物たちがいます。彼らはいつも正しい行動をとるわけではありません。時には失敗し、依存症と闘っている者もいます。しかし、どん底に落ちても彼らは立ち上がり、赦しへの希望を見つけ、すべては大丈夫だと頭を高く上げて立ち去ります。人生は混沌としていて、現実の人生はハリウッド映画とは異なります。現実の人生で私たちは、偉大さを追い求め、時にそれを成し遂げることができます。しかし、失敗した時には代償を払わなければなりません。でも、その代償を払うことが重要なのです。私はそれがアーティストとしてのベニーであることがわかっているし、それが人間としての彼であることもわかっている。つまり、作品内に見られるすべてのものが、ベニーそのものなのです」と指摘した。

鎮痛剤の依存症と闘うケアーの悲痛な姿 [c]2025 Real Hero Rights LLC
鎮痛剤の依存症と闘うケアーの悲痛な姿 [c]2025 Real Hero Rights LLC

「私が作りたかったのは、まるで仮想現実のようなもの」(サフディ監督)

今作はHBOで製作されたドキュメンタリー映画『The Smashing Machine:The Life and Times of Extreme Fighter Mark Kerr』(02)を劇映画化した作品。過去にも、第81回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー映画賞に輝いた『マン・オン・ワイヤー』(08)をロバート・ゼメキス監督が『ザ・ウォーク』(15)として映画化したように、ドキュメンタリー作品を基にして劇映画化した例はあるが、『スマッシング・マシーン』が特異なのはその再現性にある。例えば、ケアーが控え室で対戦相手と記念写真を撮影するくだりは、美術や衣装は勿論、会話の間合いまで再現されている。

【写真を見る】『スマッシング・マシーン』のTシャツを着て来日したベニー・サフディ監督が、制作当時を振り返る 撮影:岸豊
【写真を見る】『スマッシング・マシーン』のTシャツを着て来日したベニー・サフディ監督が、制作当時を振り返る 撮影:岸豊

舞台となった1990年代後半という時代を描くことの意義について、サフディ監督に尋ねると「私にとってこの時代設定が特別なのは、とても近いようで遠い時代でもあるという点です。それは、物事を(写真や映像で)簡単に記録できるようになった最初の時代でしたが、他人と共有できる場所がありませんでした。つまり、インターネットもYouTubeもソーシャルメディアもなかった時代です。それでも、まるで昨日の出来事のように、誰もがその時代の雰囲気を漠然と覚えているということが非常に重要な点だと思います。私がこの映画で捉えたかったのは、実際にそこにいるような感覚でした。私が作りたかったのは、まるで仮想現実のようなものです。その場所の匂いや雰囲気を感じ、登場人物たちと一緒にそこにいるような感覚を味わって欲しかったのです」と答えた。

日本人特殊メイクデザイナー、カズ・ヒロたちによるメイクで見た目もケアーそっくりに [c]2025 Real Hero Rights LLC
日本人特殊メイクデザイナー、カズ・ヒロたちによるメイクで見た目もケアーそっくりに [c]2025 Real Hero Rights LLC

サフディ監督は1986年生まれの現在40歳。一方のドウェインは1972年生まれの現在54歳。筆者とは年齢が近いドウェインは「当時はまだ若かった」と自嘲しながら、本作の時代背景について自身のキャリアと絡めながらこう語った「1990年代に入ると、テクノロジー企業が台頭し始め、ヒップホップ文化が台頭しました。そして、西海岸と東海岸の抗争が起こり、スポーツ界でも野球のホームランダービーなどの革命的な変化が起こり始めました。総合格闘技(MMA)の世界でも、1990年代にはジョン・マケイン上院議員がMMAとUFCを根絶しようと先頭に立ち、選手は苦労しました。日本には格闘技やプロレスがあり、アントニオ猪木がいて、全日本プロレス、新日本プロレスがありましたが、マークはブラジルに行って戦わなければなりませんでした。1990年代には本当にたくさんのことがあったので、まさに自分たちがなにをすべきか模索していた時代だったように感じます。そしてアメリカでは、ロドニー・キング事件、O・J・シンプソン事件、暴動など、本当にたくさんのことが起こっていました。そんな中、ある男が現れて『命を危険にさらすようなことをやってみよう』と言ったんです。でも、アメリカではそんな行為はまだ一般的ではなく、始まったばかりでした。『とりあえずやってみよう』と、これが私の1990年代に対する見解です」

取材・文/松崎健夫

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