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「マンタの肛門」に入ってヒッチハイクするコバンザメを発見

  • 2026.5.13
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

海の世界には、他の動物にくっついて移動する“ヒッチハイカー”がいます。

その代表がコバンザメです。

コバンザメは背中にある吸盤のような器官で、サメやクジラ、ウミガメなどの大型海洋動物にくっつき、移動の手間を省いたり、食べ残しや寄生虫などを利用したりします。

ところが今回、米マイアミ大学(UM)の研究チームは、コバンザメがマンタの「肛門」とも表現される場所、正確には排泄や生殖に関わる「総排泄孔」に入り込む行動を記録しました。

研究成果は2026年5月11日付で学術誌『Ecology and Evolution』に掲載されています。

目次

  • コバンザメは、マンタの体の“中”に隠れていた
  • マンタにとっては迷惑な「ただ乗り」かも

コバンザメは、マンタの体の“中”に隠れていた

コバンザメは、まるで海のタクシーを使うように大型動物へくっついて暮らします。

背びれが変化した吸盤を使い、宿主の体にぴたりと張りつくことで、自分で泳ぐエネルギーを節約できます。

さらに、宿主の食べ残しや皮膚についた寄生虫を食べることもあるため、これまでは「宿主にも利益を与える掃除係」と見なされることがありました。

しかし今回、研究チームが2010年から2025年までの水中映像や写真を調べたところ、コバンザメの一種(Remora remora)がマンタの総排泄孔へ潜り込む様子が7例確認されました。

さらに、エラの部分に付着する行動も1例記録されています。

総排泄孔とは、排泄物を出すだけでなく、生殖にも関わる開口部です。

人間で言う「肛門」と完全に同じ構造ではありませんが、一般向けに言えば、マンタの体の後ろ側にある非常にデリケートな場所です。

実際の画像がこちら

観察例の中には、コバンザメが奥深くまで入り込み、外からは尾だけが見えているものもありました。

別の例では、体の半分ほどが外にはみ出した状態で、マンタの総排泄孔に入り込んでいました。

しかもこの行動は、フロリダやモルディブ、モザンビークなど複数の海域で確認され、現在知られている3種のマンタすべてで見つかっています。

また、成体だけでなく幼体でも観察されました。

つまりこれは、たまたま1匹のコバンザメが変わった行動をしたというより、非常にまれにしか見つからないものの、広い範囲で起きている可能性のある行動なのです。

マンタにとっては迷惑な「ただ乗り」かも

では、なぜコバンザメはそんな場所に入り込むのでしょうか。

チームは、現時点では理由を断定していません。

考えられる可能性の1つは、捕食者から身を守るためです。

外敵に驚いたコバンザメが、マンタの体のくぼみに逃げ込むように総排泄孔へ入り込んだ例もあります。

マンタの体の中に近い場所なら、外から見つかりにくくなるかもしれません。

実際の映像がこちら。音量に注意してご視聴ください。

もう1つの可能性は、です。

総排泄孔の周辺には排泄物や寄生生物が存在する可能性があり、コバンザメにとっては食べ物を得やすい場所なのかもしれません。

さらに、マンタが泳ぐときに生じる水流を避ける意味も考えられます。

外側に吸着しているより、体の開口部に入り込んだほうが水の抵抗を受けにくく、移動にかかるエネルギーを節約できる可能性があります。

しかし、マンタ側がこの行動を歓迎しているとは限りません。

ある映像では、コバンザメが総排泄孔へ入った直後、マンタが一瞬身震いするような反応を示しました。

また、胸びれを動かしてコバンザメを振り払おうとしているように見える行動も報告されています。

総排泄孔は排泄や生殖に関わる重要な部位です。

そこにコバンザメが繰り返し入り込めば、組織への刺激や損傷、不快感、生殖への影響が生じる可能性もあります。

つまり、これまで「コバンザメと宿主は仲の良い共生関係」と単純に考えられてきたものが、実はもっと複雑だった可能性があるのです。

ある場面では掃除係として役立ち、別の場面では一方的に利益を得て、さらに別の場面では宿主に負担をかけるかもしれません。

自然界の関係は、「相利共生」「片利共生」「寄生」といったラベルだけで綺麗に分けられるものではありません。

今回のコバンザメは、その境界線のあいまいさを、かなり衝撃的な形で見せてくれたと言えます。

参考文献

‘A combination of amazement and horror’: Hitchhiker fish hide in manta ray buttholes
https://www.livescience.com/animals/fish/a-combination-of-amazement-and-horror-hitchhiker-fish-hide-in-manta-ray-buttholes

Are remoras the ocean’s weirdest hitchhikers? These suckerfish invade manta rays in the most intimate of places
https://sciencex.com/news/2026-05-remoras-ocean-weirdest-hitchhikers-suckerfish.html

元論文

Hiding in Plain Sight: Evidence of Echeneidae Cloacal and Gill Diving Behavior in Manta Ray Hosts
https://doi.org/10.1002/ece3.73548

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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