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【石黒賢さん】学芸会で“木”しかやったことない全くの素人から俳優に。「つまづくのは当たり前と思っているからへこたれない」

  • 2026.5.2

【石黒賢さん】学芸会で“木”しかやったことない全くの素人から俳優に。「つまづくのは当たり前と思っているからへこたれない」

5月9日に開幕する舞台『ハムレット』に出演する石黒賢さん。俳優として長くキャリアを重さねるなか、初出演となる“シェイクスピア作品”に挑む思いとは? 3回にわたってお届けします。

毎年ひとつ、新しいことを。今年のテーマは「シェイクスピア」

「毎年ひとつ、新しいことを始めるんです」

そう楽しげに話す石黒賢さんの声には軽やかさがある。野菜作り、サーフィン、ピアノ、タップダンス……。これまで挑戦してきたものを挙げるだけで、彼の好奇心の幅がわかる。

今年選んだのは「スペイン語」と「シェイクスピア」。スペイン語については、「特に理由はないんだけど(笑)。いつか旅先で使えたらなって」と肩の力が抜けている。では、シェイクスピアは?

「5月から舞台『ハムレット』に出演することも、きっかけのひとつではあります。ただ、長く携わっているウィンブルドンテニスの番組の取材でイギリスに行くと、現地の友人たちとの会話にシェイクスピアがよく出てきていたんですよね。会話の端々に作品のセリフを引用したりして。イギリス人にとって、シェイクスピアってそれくらい生活に根づいているものなんだなと、前から興味を持っていました」

ハマったら抜け出せない。その意味がわかるように

興味はあったものの、どこか敷居が高い——。そんな印象を持っていたという、シェイクスピア作品。ところが『ハムレット』の台本を読み進めるうちに、その先入観は崩れていった。

「この年齢になって、人間というものが少しはわかるようになってきたからなのか、登場人物たちの言動がリアルに感じられるんです。『こういうことあるよな』『なくはないよね』って。セリフを口にすると、さらにその思いは強まります。言葉って、感情が生まれた瞬間に出るものですよね。逆に、何も考えずにふっと出る言葉もあれば、準備して口にする言葉もある。このセリフはどっちなんだろう……? そうやって一語一語を精査していく作業は、本当に時間がかかる。でも、クローディアスの心情を想像するのがおもしろくてね。先輩たちが『シェイクスピアは一度やるとハマるよ』と言っていた理由が、少しわかってきた気がします」

プライドは邪魔なだけ。できないことは“おもしろい!”

新しい世界に飛び込めば、「できない自分」と向き合う瞬間が必ずある。挫折しそうになることはないのかと尋ねると、石黒さんはあっけらかんと笑った。

「全然ありますよ。でもしょうがないじゃない。だってできないんだもん(笑)。いや、『俺ならできるはずだ!』とは思ってますよ。でも、そもそも“できない”から始めたこと。つまづくのは当たり前だよなって思っているから、へこたれないんです」

その潔さの根っこには、デビュー当時の経験がある。

「全くの素人から俳優を始めたのがよかったのかもしれません。デビュー作の現場で監督に『なんでこんなことができないんだ!』と怒鳴られても、『できませんよ、これがデビュー作なんですから』って平気で言ってましたから(笑)。『学芸会で木しかやったことないんですよ、俺』みたいな。監督には『しょうがねぇなぁ』と、呆れられていましたね」

その裏で、彼は撮影がない日も現場に足を運び、先輩の姿から演技や現場での居方を学んだ。

「僕、図々しいんですよ。だからすぐ『教えてください!』って突撃しちゃう(笑)。そうやって、いろんな人たちから学ばせてもらってきた。『知らないことは学べばいい』という精神は、あの頃から変わっていないのかもしれません」

長いキャリアを積むほど、過去のプライドが新しい挑戦の足かせになることもある。だが、今の石黒さんにはそんな気配は全くない。

「プライドなんていらないんですよね。知らないことは学べばいいんですから。知らないことを知るって、すごく楽しいことだと思うんです。自分の知らないことやできないこと、初めてのことをおもしろいと思えれば、人生はもっと豊かになるんじゃないかな。今回の『ハムレット』も、そんなまっさらな気持ちで向き合っていきたいと思っています」

プロフィール
石黒賢さん 俳優

いしぐろ・けん●1966年、東京都生まれ。
83年、ドラマ「青が散る」で俳優デビュー。以降、数多くのドラマ、映画で活躍。
近年の出演作に、ドラマ「半沢直樹 第2部」「アイシー〜瞬間記憶捜査・柊班〜」、映画『マスカレード・ナイト』『劇場版 おいしい給食 Road to イカメシ』他多数。
2008年からWOWOW「ウィンブルドンテニス」でスペシャルナビゲーターを務め、現地取材や中継で大会の魅力を伝える。
また、海外の子ども向け絵本の翻訳も手がける。

【Information】『ハムレット』

デンマークの王子・ハムレットは、父王の急死と、その直後に母ガートルードが叔父クローディアスと再婚し、彼が王位についたという現実を前に、深い喪失と混乱の中にいた。そんなある夜、父の亡霊が現れ、自分はクローディアスに毒殺されたのだと告げる。衝撃の真実を突きつけられたハムレットは復讐を誓い、狂気を装いながら宮廷の人々の反応を探り始める。疑いと孤独が彼をむしばみ、恋人オフィーリアや友人たちとの関係も次第にねじれていく。やがてハムレットは、芝居を使って叔父の罪を暴こうと試みるが、その一手が思いもよらぬ悲劇の連鎖を呼び起こし……。

作/ウィリアム・シェイクスピア
演出/デヴィッド・ルヴォー
翻訳/松岡和子
出演/市川染五郎、當真あみ、石川凌雅、横山賀三、梶原 善、柚香 光、石黒 賢 他

【東京公演】 2026年5月9日~30日 日生劇場
S席1万4000 円、A席9000 円(いずれも税込)

【大阪公演】 2026年6月5日~14日 SkyシアターMBS
S席1万4000円、A席9000円(いずれも税込)

【愛知公演】2026年6月20日~21日 名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)大ホール
1万4000円(税込)

舞台『ハムレット』公式サイト https://hamlet2026.jp/

撮影/園田昭彦

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