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12年前、主婦を“禁断の恋”に狂わせたイケメン俳優。映画監督としても高い評価を受ける現在地とは

  • 2026.6.12
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2006年10月、映画『ナチョ・リブレ 覆面の神様』PRイベントに出席した斎藤工(C)SANKEI

斎藤工と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのは、観られる人としての顔だろう。端正な佇まいで、画面の向こうから視線を集める俳優。だが、この人のおもしろさは別のところにある。重心は、いつも映画を成立させ、届ける側にあった。

観る人から、作る人へ。作る人から、届ける人へ。自分の立ち位置を、何度も引き受け直してきた俳優なのだ。観られることに満足せず、映画そのものを成り立たせる方へと歩いていく。その軌跡をたどってみたい。

観られる俳優として世に出た

高校生のころから『MEN'S NON-NO』や『POPEYE』などでモデルとして活動していた斎藤工は、2001年の映画『時の香り〜リメンバー・ミー』で吹石一恵とのW主演をつとめ、俳優としてのキャリアを踏み出す。2008年の映画『春琴抄』では、盲目の三味線の名手に仕える佐助を演じ、早くから繊細な役と向き合っている。

広く名が知られたのは、2014年のフジテレビ系『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』だ。上戸彩演じる主婦と惹かれ合う高校教師・北野裕一郎を演じ、社会現象と呼ばれるほどの反響を呼んだ。2017年には劇場版でも同じ役を演じている。端正な佇まいで視線を集める、観られる存在としての斎藤工が、ここで揺るぎないものになった。

カメラの後ろへまわる

だが斎藤の関心は、観られることだけにはなかった。2018年、齊藤工名義で長編映画『blank13』の監督を務める。

俳優が片手間に撮った作品ではない。第20回上海国際映画祭では、アジア新人賞部門で監督賞に輝いた。小さく公開された作品が評判を呼び、上映館を大きく広げていった。

その後も『ゾッキ』では竹中直人、山田孝之とともに共同監督を務めている。演じる人が、映画そのものを立ち上げる側へと本格的に動いた時期だった。観られる才能は、いつしか作る才能に裏返っていた。

映画館のない街へ映画を運ぶ

作る側からさらに一歩、斎藤は届ける側へと踏み出す。移動映画館プロジェクト「cinéma bird(シネマバード)」の発案者としての顔だ。映画館のない地域や被災地に出向き、お寺や体育館を一日限りの映画館に変える。スクリーンのない場所に、映画を観るという時間そのものを運んでいく試みだ。

2014年、宮城県石巻市にて始まったこの活動は各地へと広がり、2024年には文化庁長官表彰を受けた。映画を作る人は多い。それを、観られない場所にいる人のもとへ自ら届けにいく俳優は、そう多くない。

被災地で、はじめて大きなスクリーンに触れる子どももいる。観客のいる場所へ自分から出向き、映画と人を出会わせていく。スターの余技ではなく、これを十年以上も続けてきたところに、斎藤工の本気がにじむ。映画が好きだという思いを、観るだけでも作るだけでも終わらせない。斎藤工という人を読み解く核が、ここにある。

大きな座組の真ん中を担う

届ける器としての主演も、斎藤の重要な仕事だ。2019年の映画『麻雀放浪記2020』では、白石和彌監督のもとで坊や哲を演じ、長年あたためてきた再映画化の企画を背負った。

2022年の映画『シン・ウルトラマン』では、神永新二を演じている。庵野秀明が企画と脚本を、樋口真嗣が監督を務めた大きな座組の中心で、長澤まさみと組み、ウルトラマンになる男を静かに立たせた。前に出すぎず、それでいて作品の屋台骨を支える。作家の世界を成立させる器として、斎藤はそこにいた。

物語のなかでも場を束ねる

2026年は話題の映画『マジカル・シークレット・ツアー』への出演のほか、7月には『キングダム 魂の決戦』が控える。『キングダム』で斎藤が演じるのは、楚の宰相・春申君。六つの国の連合である合従軍の総大将であり、戦場全体を束ねる重石のような存在だ。

観られる人から始まり、監督として作り、シネマバードで届け、そして物語のなかですら場を成立させる側に立つ。斎藤工のキャリアは、観ること、作ること、届けることが一本の線でつながっている。スターであることに安住せず、映画という文化そのものを次の世代へ手渡そうとしているのだ。

立ち位置を変えながらも、その根にあるのは一途な映画への愛だ。Netflix『This is I』への出演も話題になったが、Prime Video Original『犯罪者』への出演も控える。映画を成立させる人の歩みは、これからも止まらない。


※記事は執筆時点の情報です

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