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優しさと陰険さは両立する――「いい人だから安全」とは限らない理由

  • 2026.4.26
優しさと陰険さは両立する / Credit:Canva

「あの人はいい人だから大丈夫」――そう思っていた相手に、裏で陰口を言われていた。

そんな経験に、心当たりはないでしょうか。

人当たりがよく、親切で、周囲からの評価も高い。それなのに、なぜか人間関係のトラブルの中心にいる。

そんな人物は、決して珍しくありません。

私たちはつい、「優しい人は他人を傷つけないはずだ」と考えてしまいます。

しかし最新の心理学研究は、その直感に疑問を投げかけています。

オーストラリアのディーキン大学(Deakin University)の研究チームが約2000人を対象に行った調査によると、優しさと陰険さは同時に存在しうるどころか、むしろ“別々の道具”のように併存することがあるとわかったのです。

この研究は、2025年4月14日付の学術誌『Personality and Individual Differences』に掲載されました。

目次

  • 人を傷つける「陰湿な攻撃」を「性格」だった
  • 優しさでは止まらない?「親切と攻撃は共存する」と判明

人を傷つける「陰湿な攻撃」を「性格」だった

この研究が注目したのは、「関係性攻撃」と呼ばれる行動です。

これは殴る、蹴るといった直接的な暴力ではなく、人間関係そのものを傷つけることで相手にダメージを与える行為を指します。

具体的には、「噂を流す」「無視する」「仲間外れにする」「周囲との関係を断ち切るよう仕向ける」といった行動です。

こうした攻撃は物理的な暴力より目立ちにくく、表面上は穏やかに見えることがあります。

だからこそ、職場や友人関係、地域の集まりのような大人の社会でも起こりやすいと考えられます。

しかも被害を受けた側には、抑うつや不安、孤独感など深刻な影響が出ることが知られています。

では、こうした陰湿な行動はどんな人に起こりやすいのでしょうか。

研究チームは、その背景にある性格傾向を調べました。

心理学では、人の性格の中に、他人を操作しやすかったり共感が乏しかったりするダークな性格傾向があると考えます。

今回の研究では、サイコパシー、マキャベリズム(マキャヴェリズム)、誇大型ナルシシズム、脆弱型ナルシシズムが調べられました。

一方で、人を尊重したり助けたりするライトな性格傾向もあります。

今回はこちらとして、「人は基本的に善だと考えること」「他人の尊厳や価値を重んじること」「人を単なる手段として扱わないこと」が測定されました。

さらに、実際に人を助けたり協力したりする向社会的行動も調べられています。

研究者たちが立てた問いは明快でした。

「ダークな性格傾向は関係性攻撃を増やすのか。逆に、ライトな性格傾向はそれを防ぐのか」というものです。

そこで研究チームは、18歳から82歳までのオーストラリアの成人2014人にオンライン調査を実施。

参加者は、自分が噂を流したり意図的に無視したりするかどうか、また自分の考え方や性格傾向について答えています。

分析の結果、性格の違い(ダークな性格傾向やライトな性格傾向など)を見ることで、人によってどれくらい陰湿な攻撃をするかの“差のうち約3分の1”は説明できることがわかりました。

特に、ダークな性格傾向はいずれも関係性攻撃を高める方向に働いていました。

中でも影響が目立ったのは、サイコパシーと脆弱型ナルシシズムでした。

では、優しさはこうした攻撃の傾向を抑えるのでしょうか。

優しさでは止まらない?「親切と攻撃は共存する」と判明

ここからが、この研究のいちばん興味深いところです。

研究者たちは当初、ライトな性格傾向が高い人ほど関係性攻撃は少ないだろうと予想していました。けれど、実際の結果はもっと複雑でした。

「人は基本的に善だと思うこと」や、「他人の価値を尊重すること」は、それだけでは関係性攻撃を有意には減らしていませんでした。

一方で、人を手段として扱わないという道徳的な姿勢と、実際に人を助ける向社会的行動には、関係性攻撃を減らす方向の関連が見られました。

ただし、その効果は大きいものではありませんでした。

つまり、頭の中で「人は大切だ」と思っているだけでは十分ではなく、より具体的な倫理観や行動にまで結びついているときに、はじめて少し抑制効果が見えてくるのです。

さらに研究チームは、向社会的行動とダークな性格傾向の組み合わせも探索的に調べました。

すると、ダークな性格傾向が強い人では、親切な行動が多くても関係性攻撃の水準がなお高い傾向が見られました。

これはどういう意味でしょうか。

研究者たちは、ダークな性格傾向が強い人の中には、親切な行動と攻撃的な行動が別々の手段として同じ人の中に併存している可能性があると考えています。

たとえば、ある場面では協力的に振る舞い、別の場面では噂や排除を使う、という具合です。

この結果から見えてくるのは、私たちが普段使う「いい人」という見方の危うさです。

人当たりがよいこと、助けてくれること、感じがよいことは、その人が他人を傷つけない保証にはなりません。

性格の中には、善意的な傾向と悪意的な傾向が同時に存在しうるからです。

もちろん、この研究は一時点での自己回答調査なので、因果関係を断定することはできません。

研究者たちも、今後は長期的な追跡調査が必要だと述べています。

それでもこの研究は、少なくとも一つの重要な現実を示しました。

「人の優しさは、その人のすべてを保証するものではない」ということです。

参考文献

Manipulative people use both kindness and gossip as separate tools to control their social circles
https://www.psypost.org/dark-personalities-drive-covert-aggression-while-being-nice-fails-to-stop-it/

元論文

Dark and light personalities: A utilitarian perspective on their impact on relational aggression
https://doi.org/10.1016/j.paid.2025.113209

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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