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≪戸田恵梨香主演≫Netflixシリーズ『地獄に堕ちるわよ』瀧本監督「細木数子のことが嫌いだった」【インタビュー前編】

  • 2026.4.25

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「地獄に堕ちるわよ」など歯に衣着せぬ物言いで注目を集めた占い師・細木数子。著書が世界で最も売れた占い本としてギネス世界記録を樹立するなど圧倒的な人気を誇りメディアを席巻、一世を風靡した。

一方で霊感商法や裏社会との繋がりなど、当時から黒い噂も絶えなかった細木。そんな彼女の生き様を、戦後から平成にかけての時代とともに描くのがNetflixシリーズ『地獄に堕ちるわよ』だ。

本作について、監督の瀧本智行氏にインタビュー。「細木数子が嫌いだった」と語る監督が、何を頼りに占い師・細木数子の半生を描いたのか。

細木数子は「戦後から平成にかけての日本の歩みを象徴している人」

――監督は当初、本作の依頼を断ったと聞きました。なぜでしょうか?

瀧本智行監督(以下、瀧本):正直に言うと、細木さんのことが嫌いだったからです。それで「もっとふさわしい方がいっぱいいるから」と断ったのですが、再度お願いされて。その時プロデューサーから「(細木さんを)嫌いな人が撮った方が、絶対面白いものになると思うんです!」と殺し文句を言われて、絆されてしまいました(笑)。

――撮り終えた今、細木さんへの印象は変わりましたか?

瀧本:変わったというか、今思えば彼女がどんな人なのかを当時はよくわかっていなかったんですよね。嫌いだったからテレビに映ればチャンネルを変えてしまうし、雑誌の記事や小説も読んだことがありませんでした。

今回、この作品を監督することになり、初めて細木さんの小説や記事を読んだんです。細木さんの資料って小説だけで4冊、雑誌の記事だとかなり膨大な量があるんですよ。それに目を通していくうちに、好きか嫌いかよりも「この人、面白いな」と感じましたね。まさに戦後から平成にかけての日本の歩みを象徴している人。この人を描くことで“時代”というものも描けるなと。昔から昭和史に興味があったので「昭和のいろいろな出来事に絡めて物語を進めていけたら……」と本作への想像も膨らんでいきました。

――そこからさらに紆余曲折を経て現在の作品が生まれたわけですが、台本はどう完成していきましたか?

瀧本:一番初めは『細木数子 魔女の履歴書』(細木数子自身による『女の履歴書―愛・富・美への飛翔』の内容に異議を唱えるなど、彼女のテレビ降板のきっかけともなったルポルタージュ)を原作にして、著者である溝口(敦)さんのような人物を登場させようと考えました。主人公である細木数子と溝口さんのような立場の登場人物が対決する構成にしてはどうかと。

しかしプロデューサーから「これは私が見たい細木数子ではない」と言われてしまいまして。そこで話し合ううちに、僕自身も「確かにこの構成にしてしまうと、僕のように細木さんが嫌いな人の溜飲を下げる作品にはなるかもしれないけれど、彼女が持っているいろいろな顔が零れ落ちていってしまうかもしれない」と思ったんです。エンターテインメントにしたときに、彼女の人生ってすごく間口が広いんですよね。そこをより多くの人に届けるべきだと考えると、これは違うなと。

「この人意外と…」僕自身が伊藤沙莉さん演じる魚澄美乃里だった

――ベースの部分から再考されたわけですね。

瀧本:そうして思いついたのが、僕自身の分身を置いてみることでした。それが伊藤沙莉演じる売れない作家・魚澄美乃里です。信頼できない語り手として細木数子がいて、美乃里がそれにだんだん取り込まれていく……この構図は僕自身があの人と対話をしていたら「きっと取り込まれているだろうな」という考えから生まれています。「あんたねぇ、ちょっと飲みなさいよ」なんて飲み始めて、「あんたちょっとかわいいとこあるわね」とか言われたら、もう「この人意外と……」みたいな(笑)。ドラマの中で美乃里がどんどん細木数子に好感を持っていくのと同じように、視聴者も細木数子のことを好きになる瞬間もある、しかしそこから「表」と「裏」がひっくり返り、混乱していくという構造は最初から決まっていました。

――私自身、細木数子の人生を全く知らないまま本作を見始めたので、まさにそこに驚きました。でも最後まで観ると、ただ悪い人間とも思えなくて。

瀧本:とにかくプロデューサーが、最初から最後まで「私はこのドラマを観終わった後に『この女、あっぱれ!』と思いたいんです」と言い続けていたんです。だからいろいろあっても最後は「すごい女じゃないの、この人」という印象を残したいなと。最後のギリギリまでラストシーンとその一連はこだわりました。

銀座のママの衣装の戸田恵梨香の迫力は“すごかった”

――多くの方のこだわりが詰まった結果があのラストなんですね。

瀧本:実は最初に戸田(恵梨香)さんにラストを渡したとき、「このラストでいいんですか?」とそこまで言うかくらいの勢いで詰められまして。ちょうど銀座のママの衣装で和服を着た戸田恵梨香の迫力は、すごかったですね(笑)。

――そうやって役者の方が台本に対して意見を言うのは瀧本監督の現場ではよくあることなんですか?

瀧本:いたって普通というか、僕は必ず役者に「本(脚本)についてどう思う?」と聞くんですよ。とにかく意見を言わせようというスタンスです。戸田さんは「監督ここなんですけど……」とセリフのニュアンスなど細かいことまで割とフランクに言ってくれたので、僕としてはすごく助かりました。結局、演じる人が一番その役のことをわかっていると思うんですよね。もっと言うと、僕は「これでええんか? もっといいものはないのか?」と常にシナリオに対しても、自身の演出に対しても思っているんです。だからいろいろ意見がほしいし、言ってもらえたら嬉しいんですよ。

――役者の方からの意見を取り入れることで、よりよい作品になっていくんですね。

瀧本:そうですね。いつも僕の中では「ここに達したらOK」というラインを決めています。それがないといつまで経っても完成しませんから。でもそのラインが例えば60点だとしたら、ずっと60点では正直つまらないわけです。それを超えられるのは役者やスタッフ、他者の意見が出てきたときなんですよね。そのために常に役者、スタッフがポテンシャルを最大限に発揮できる環境を作って、周りからいいものをどんどん引き出していく。それが僕の、演出の仕事だと思っています。

後編は、主役を演じた戸田恵梨香の「すごさ」、そして細木数子の波乱の人生を映像化するにあたり、瀧本監督がどのようにして映像をつくりあげていったのか。制作秘話を伺う。

取材・文=原智香

Netflixシリーズ「地獄に堕ちるわよ」

4月27日(月)よりNetflixにて世界独占配信

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