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カニが「横歩き」を始めた時代が明らかに

  • 2026.4.24
Credit: canva

カニは他の多くの生物とは違い、「横方向に歩く」という特殊な移動をします。

この奇妙な動きは、一体いつごろ獲得されたのでしょうか?

長崎大学の研究チームが、カニの横歩きの起源について調査。

その結果、カニの横歩きは約2億年前の共通祖先に遡ることが示されました。

研究の詳細は2026年4月21日付で国際誌『eLife』に掲載されています。

目次

  • 横歩きは「一度だけ」生まれた進化だった
  • 2億年前の地球変動とカニの繁栄

横歩きは「一度だけ」生まれた進化だった

カニの横歩きは、動物界全体で見ても非常に珍しい移動様式です。

しかし、すべてのカニが横に歩くわけではなく、中には前に歩く種類も存在します。

では、この横歩きは何度も繰り返し進化したのでしょうか。

それとも一度だけ生まれた特別な特徴なのでしょうか。

研究チームはこの疑問を解くため、50種のカニを対象に行動を観察。

円形の水槽内で10分間の移動を記録し、進行方向を分析したところ、35種が横歩き、15種が前歩きと分類されました。

さらにこのデータを、344種・10遺伝子に基づく最新の系統解析と統合し、進化の歴史を再構築しました。

その結果、横歩きは前方向に歩く祖先から「一度だけ」進化した可能性が高いことが示されました。

そしてこの動きは、その後の進化の中でほとんど失われることなく、多くのカニに受け継がれてきたと考えられます。

つまり、横歩きは何度も生まれた“ありふれた特徴”ではなく、一度の進化で成功し、そのまま広がった「当たりの戦略」だったのです。

2億年前の地球変動とカニの繁栄

横歩きが生まれたと推定されるのは、約2億年前の前期ジュラ紀です。

この時代は、三畳紀末の大量絶滅の直後にあたります。

多くの生物が姿を消したことで、生態系には空白が生まれ、新しい進化が起こりやすい状況でした。

さらに当時はパンゲア大陸の分裂が進み、浅い海域が広がるなど、カニ類が進出できる新しい環境が増えていました。

こうした背景の中で横歩きという新しい移動様式を獲得したことが、カニの多様化につながった可能性があります。

横歩きには、左右どちらにも素早く移動できる、逃げる方向を予測されにくいといった利点があると考えられています。

これは捕食者からの回避に有利に働き、生存率を高めたと推測されます。

つまり、環境の変化と新しい行動の進化が組み合わさることで、カニは現在のように多様で繁栄したグループへと発展したのかもしれません。

「動き方」が進化を左右する

この研究が示しているのは、単にカニの歴史だけではありません。

重要なのは、「どのように動くか」という行動そのものが、進化や多様化に大きく影響する可能性があるという点です。

生物の進化というと、形や構造の変化に注目しがちですが、本研究は行動もまた重要な進化の鍵であることを示しています。

カニの横歩きは、その象徴的な例といえるでしょう。

今後は化石データや実験研究を組み合わせることで、この横歩きがどの程度カニの多様化に寄与したのか、さらに詳しく明らかになると期待されています。

参考文献

カニはいつ「横歩き」を獲得したのか ―約2億年前の共通祖先に由来し、多様化につながった可能性―
https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/science/science450.html

元論文

Evolution of sideways locomotion in crabs
https://doi.org/10.7554/eLife.110015.1

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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