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パーカーは若者限定? 年齢でファッションを制限するのはエイジハラスメントに当たるとの声も/何がダサいを決めるのか③

  • 2026.4.24
何がダサいを決めるのか 平芳裕子/ポプラ社
何がダサいを決めるのか 平芳裕子/ポプラ社

『何がダサいを決めるのか』を第1回から読む

『何がダサいを決めるのか』(平芳裕子/ポプラ社)3回【全8回】

ファッションの世界では「おしゃれ至上主義」が常識。しかし、世間一般の価値観は少し違うようです。「似合ってないと思われたくない……」「年相応じゃない服は着たらいけない」なんて、見えないルールに縛られていませんか? まるで「ダサい」ことが悪のように扱われるこの空気、一体どこから来たの!? 本書ではそんなモヤモヤを一気に吹き飛ばすべく、服の歴史や社会背景をもとに「ダサい」の正体を徹底解剖します。常識を脱ぎ捨てて、もっと自由におしゃれを楽しもう! 私たちが囚われているファッションの常識をアップデートしてくれる一冊『何がダサいを決めるのか』をお楽しみください!

※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)
※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)

他人の服装を「ダサい」と言う人たち

そして近年のファッションをめぐる炎上のなかで注目したいのは、これから述べる三つ目のタイプです。それは、他人の着ている服の是非を問うタイプのものです。もちろん、社会の習慣に即しているかどうかが問われることもあるのですが、それ以上に、誰かが着ている服装をけなしたり、「ダサい」と言ったり、ダメ出しをしたりするのです。

特に話題となった例として、「パーカー」をめぐる議論がありました。二〇二四年の年末からしばらくの間、かなりメディアを賑わせたので、思い当たる方もいらっしゃるでしょう。しかし、忘れてしまった、気づかなかったという方もいらっしゃるかもしれませんので、経緯を説明しましょう。

事の発端は、あるYouTubeの動画で、コラムニストの女性が「四〇近くになってパーカーとかを着ているおじさんは結構おかしいと思う」と発言したことにありました。もともとこの動画は、当時三七歳のインタビュアーが「素敵なおじさん」になるために、女性からアドバイスをもらうという企画のもとに作られたそうです。しかし、「四〇歳の男性はパーカーを着るべきではない」とも受け取れる女性の発言が、人々を驚かせました。

この発言がメディアで取り沙汰された初期に私は動画を見たのですが、そのときには、インタビュアーと女性との間で職場に関する話題があったように思いました。ところが、この本を書くにあたってこの動画を見直したところ、私の記憶していた場面はありませんでした。やや唐突にこの発言が登場したのですが、動画が事後的に編集されたのかどうかを知る手だてはありません。そのため発言が出てきた文脈を追うことは難しいのですが、いずれにしても、「四〇近くになってパーカーとかを着ているおじさんは結構おかしいと思う」という表現が一人歩きをして、さまざまな議論を呼び起こしたことは事実です。では、この表現のなにが世間に衝撃を与えたのでしょうか。

「おじさん」という言葉

まずは「四〇」と具体的な年齢が出てきていることです。話し手であるインタビュアーが三七歳であることを意識しての「四〇歳」という数字の選択と思われますが、「四〇歳」は一般的にはもう若くはない年齢です(もちろん、見た目で若々しい人はいるでしょう)。中国の思想家である孔子が『論語』のなかで「四〇而不惑」と述べたように、自分の生き方や考え方に迷いがなくなる。そういった年齢が四〇歳でもあります。「四〇近くになって」ということは、まだ四〇歳になるまで数年ありますが、そろそろ知識や経験を得て、分別をわきまえているはずだというニュアンスが含まれていると思われます。

ところがそういった大人の男性が、ここでは「おじさん」と呼ばれています。「おじさん」とはいったい、どのような存在なのでしょうか。「おじさん」を漢字で記すと「叔父さん」や「伯父さん」となり、それらは自分の両親の兄弟にあたる人のことを指します。「叔父さん」は両親より年下の弟、「伯父さん」は両親より年上の兄を指しています。自分の両親の兄弟ですから、年齢が両親のように離れているケースが多いでしょう。一方で、「おじさん」を「小父さん」と書く場合もあります。これは、年配の男性に対する呼び名ですが、たとえ他人であっても親しみを込めていう言葉として使われてきました。ところが現代では、この「おじさん」を、自分が歳を取っているという事実を自虐的に皮肉ったり、他人が歳を取っていることを侮蔑的に指摘したりするためによく使われています。日常会話で頻繁に使われる言葉といえます。

ちなみに、英語では「叔父さん」や「伯父さん」を指す言葉として「uncle」があります。「uncle」は両親の男の兄弟を指す言葉ですが、両親より年上であるか年下であるかの区別はありません。また、映画などで若者が見知らぬ年配男性に、「Hey, old man!」と言うことがありますが、これは年齢を小馬鹿にする日本語の「おじさん」に近い表現といえるでしょう。

「パーカーおじさん」と「カジュアルおばさん」

さて、この「おじさん」のなかでもここでは、「パーカー」を着ている「おじさん」が「おかしい」、すなわち問題であると述べられています。なぜ、問題なのでしょうか? 後の章で説明しますが、パーカーはよく若者の服だとみなされます。しかし私がある日の電車のなかで確認したように、若者だけが着ているわけではありません。そのため、日ごろからパーカーを愛好している人々が、この発言の存在に気づき、SNSで反応を始めました。特に著名な男性たちが、パーカーについて語り始め、パーカーを着ることの正当性をくりかえし述べたことで、SNS上で大きな話題となりました。

「おじさん」、すなわち年齢によって差別を行う「エイジハラスメント」であるという意見も出ましたし、年配の男性が「パーカー」を着ることに対する賛同も多く寄せられました。SNSだけでなく、どのようにしたら「パーカー」を格好良く着こなすことができるのかというアドバイスがネットの記事に掲載されはじめ、テレビ番組でもその話題が取り上げられるようになりました。これら一連の炎上を指して、「パーカーおじさん」という言葉も生まれました。年配の男性がパーカーを着ることに対する批判をきっかけとして、「パーカーおじさん」擁護の声がネットに巻き起こったわけです。では、女性に相当する言葉はないのでしょうか。

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