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「なぜ女性だけハイヒール?」SNS投稿が浮き彫りにした、従来のファッションルールへの違和感/何がダサいを決めるのか①

  • 2026.4.22
何がダサいを決めるのか 平芳裕子/ポプラ社
何がダサいを決めるのか 平芳裕子/ポプラ社

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『何がダサいを決めるのか』(平芳裕子/ポプラ社)1回【全8回】

ファッションの世界では「おしゃれ至上主義」が常識。しかし、世間一般の価値観は少し違うようです。「似合ってないと思われたくない……」「年相応じゃない服は着たらいけない」なんて、見えないルールに縛られていませんか? まるで「ダサい」ことが悪のように扱われるこの空気、一体どこから来たの!? 本書ではそんなモヤモヤを一気に吹き飛ばすべく、服の歴史や社会背景をもとに「ダサい」の正体を徹底解剖します。常識を脱ぎ捨てて、もっと自由におしゃれを楽しもう! 私たちが囚われているファッションの常識をアップデートしてくれる一冊『何がダサいを決めるのか』をお楽しみください!

※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)
※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)

炎上するファッション

最近、ファッションがSNSでよく炎上しています。SNSの投稿に対する批判や反論自体は珍しくありません。アルバイト先での勤務態度やレジャー施設での迷惑行為など、問題行動を暴露する投稿に対して、不特定多数の人が怒りをあらわにすることはよくありました。ところが近年、身なりやファッションに関する投稿が注目されて、ときには大きな議論を呼び起こすことがあります。

それらは会社の就業規則に違反している、あるいは社会のルールに反しているなど、明白な過ちや間違いというわけではありません。ところがそれゆえに、さまざまな人が意見を述べ始め、批判や反論を巻き起こし、特には誹謗中傷にまで発展してしまうこともあります。良くも悪くも、人々の注目を浴び、社会に影響をもたらすファッションの話題。さしずめ炎上系ファッションとでもいうのでしょうか。このファッションをめぐる議論は、いくつかのタイプに分けられるように思います。

慣習に疑問を投げかける人たち

まず一つ目は、服装をとりまく慣習に疑問を投げかけるタイプです。近年もっとも反響があったものの一つに、女性のパンプス着用に対する議論がありました。きっかけは、ある女性のツイート(現Xのポスト)でした。

引用----

私はいつか女性が仕事でヒールやパンプスを履かなきゃいけないという風習をなくしたいと思ってるの。専門の時ホテルに泊まり込みで一ヶ月バイトしたのだけどパンプスで足がもうダメで、専門もやめた。なんで足怪我しながら仕事しなきゃいけないんだろう、男の人はぺたんこぐつなのに。

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当時俳優でライターの石川優実氏がこのように述べたツイートが共感を呼び、3万回以上リツイートされました。ヒールの高い「靴」とそれが引き起こす身体の「苦痛」、そしてその頃さかんになっていたセクハラや性暴力を告発する「#MeToo」運動をかけあわせ、SNS上では「#KuToo」というハッシュタグが生まれました。パンプスやハイヒールをはかざるをえない状況にある女性たち、そのような状況に疑問を感じている女性たちが連帯し、女性に対してパンプス着用を強制することへの反対運動として広まります。この運動はSNSにとどまらず、新聞などのマスメディアでも注目されるようになりました。

当時の朝日新聞にはさまざまな立場の人の意見が掲載されました。就職活動でパンプスをはくことを「就職セミナーでも靴屋でも薦められた」と述べる女子学生、「その場に合った服装を選べるかという点で、女性のヒールも見るポイントだ」とコメントした就職支援企業の男性。私も意見を求められましたので、「性別をめぐる価値観が変わりつつある今、ヒールへの疑問の声が出るのは当然の流れ。性別によらず個人として、自由に装うことに寛容な社会になれば」とコメントをしました。

その後、この「#KuToo」運動は、国会にまで届き、当時の安倍首相が「単なる苦痛を強いるような合理性を欠くルールを女性に強いることが許されない」と答弁をしたことで、さらなる社会的な関心を呼びました。それからすでに五年以上の月日がたち、現在では職場における女性の靴の着用は多様化が進んでいます。パンプス自体がなくなったわけではありませんが、接客にあたる女性スタッフに対して、ヒールのある靴の着用義務を廃止する企業も登場しました。

長らく、女性たちが抱えていたハイヒールやパンプスといったファッションアイテムに関する不満が、SNSの投稿をきっかけとして公に知られることとなり、改善を訴える社会的な運動となったわけです。SNSでの投稿は、時に過激な主張や的外れな非難を呼び起こすこともありますが、社会にはさまざまな意見があることを明らかにしながら、不合理な服装が実際に改善されるきっかけを作ることがあります。

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