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いま見に行ける、ミース・ファン・デル・ローエの名建築8

  • 2026.4.22
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都市の風景そのものを更新し、現代建築のスタンダードを築いた、20世紀モダニズムの巨匠ミース・ファン・デル・ローエ。装飾をそぎ落とし、構造と素材の美しさだけで空間を成立させるその建築は、静かでありながら強い存在感を放つ。鉄とガラスが生み出す透明で開放的な空間、そして「Less is more」に貫かれた緻密な思想。いまなお多くの建築家を魅了し続けるその名作から、いま見に行ける8件をピックアップ。

Photo Researchers / Getty Images

ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe)

1886年、ドイツ・アーヘンに生まれたミース・ファン・デル・ローエ。近代建築のパイオニア、ペーター・ベーレンスに師事し、近代建築が大きく変化する時代の中で独自の表現を確立していった。1920年代には、有名な「Less is more(より少ないことはより豊かである)」という言葉に象徴される思想を打ち立て、構造と空間を極限まで研ぎ澄ました建築へと到達。その思想は今も世界に影響を与え続けている。1930年にはバウハウス最後の校長に就任し、ナチスにより閉鎖された後はアメリカへ亡命。シカゴを拠点に活動し、ガラスと鉄骨による開放的な建築を発展させた。壁や柱に縛られない「ユニバーサル・スペース」の概念は、現代建築の基準を形づくった。また建築だけでなくデザイナーとしてもその才能をいかんなく発揮したミース。“バルセロナ・チェア”に代表される作品は、建築と同様に時代を超えて愛されている。

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ヴァイセンホーフ・ジードルングの住宅(1927年)/ドイツ

1927年にドイツ・シュトゥットガルト郊外のヴァイセンホーフで開催された住宅展覧会「ヴァイセンホーフ・ジードルング」。近代的かつ合理的な住宅のあり方を提示することを目的としたプロジェクトでミース・ファン・デル・ローエはじめ、ル・コルビュジエやヴァルター・グロピウス、ペーター・ベーレンス、ブルーノ・タウトらそうそうたる建築家が参加した。

プロジェクトの監修者でもあったミース自身は集合住宅を設計。構造体には鉄骨造や鉄筋コンクリート造を用い、内部には自由にスペースを変更できる間仕切りのシステムを採用した。住む人に合わせて変えられる住宅として、後のオフィスビル建築やスケルトン・インフィルの考え方の原型となったと言われる。白い壁に規則的に窓やバルコニーが並ぶシンプルな外観だが、その均衡の取れた端正な美しさが際立ち、後のミース建築につながる要素が見て取ることができる。

ヴァイセンホーフ・ジードルンク(ヴァイセンホフ住宅博物館)
住所/Rathenaustraße 1, 70191 Stuttgart


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バルセロナ・パビリオン(1929年)/スペイン

1929年のバルセロナ万国博覧会のために建設されたドイツ館。近代建築を象徴するこの作品では、水平ラインを強調した屋根を鏡面仕上げの金属柱が軽やかに支え、大きなガラス面と水盤が美しく調和する。内部は壁などによって視界が遮られることがなく、空間が連続して広がる。厳選された素材と緻密に計算された光も一体となり、ミースの掲げた「Less is more(より少ないことはより豊かである)」を美しく体現している。

また、デザイナーとしても活躍したミースの代表作で、モダンデザインの傑作とされる“バルセロナ・チェア”もこのパビリオンのためにデザインされた。建物は1930年に一度解体されたが、1986年に建築家イグナシ・デ・ソラ=モラレス、クリスティアン・シリシ、フェルナンド・ラモスによって元の場所に忠実に再建。現在はミース・ファン・デル・ローエ財団によって管理され、モダンデザインの聖地として多くのファンが訪れている。

バルセロナ・パビリオン
住所/Avenida Francesc Ferrer i Guardia 7, 08038 Barcelona

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トゥーゲントハット邸(1930年)/チェコ共和国

1928〜1930年に実業家夫妻のために当時のチェコスロバキア・ブルノに建設された邸宅。街を一望できる丘の上に建ち、傾斜地に合わせて3階建てで計画された。最大の特徴となるのは、鋼鉄フレーム構造と大きなガラス壁で実現した開放的な空間構成。とくにリビングフロアでは、柱を壁から分離したオープンプランが採用され、壁で仕切られない伸びやかな空間が広がる。また機能主義建築の最高峰とも評され、電動で開閉するガラス窓や空調設備を備えるなど、当時としては画期的な住宅でもあった。

インテリアには、モロッコ産オニキスやイタリア産トラバーチン、希少な熱帯木材などぜいたくな素材もふんだんに用いられ、家具には“バルセロナ・チェア”や“ブルーノ・チェア”など、ミース自身のデザインも配置。息をのむような美しいインテリアが楽しめる。

なお、施主一家は1938年のナチス侵攻により亡命を余儀なくされ、この邸宅はゲシュタポに接収された。戦後には医療施設として利用されたり、1992年には、チェコスロバキア分離交渉の舞台にもなった。さまざまな歴史の舞台ともなった建物は、現在は博物館としてモダニズム建築とデザインにおける重要な施設となっている。

トゥーゲントハット邸
住所/Cernopolni 45, 613 00 Brno

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ファンズワース邸(1951年)/アメリカ

住宅としてはミースが手掛けた最後の作品となる、アメリカ・イリノイ州ブラノに立つ「ファンズワース邸」。エディス・ファンズワース博士の週末の家として緑豊かな場所に1951年に完成した。

8本の鉄骨柱によって支えられる高床式の長方形建築の内部は、浴室やキッチン、トイレ、収納などからなる木製のコアを中心に、壁のないワンルームとして構成されている。全面がガラス張りとなる透明の建物は周辺の景色を見事に取り込み、まさに自然と一体化したミニマルな住宅となっている。

ミースの理念を最も純粋に体現した作品とされる邸宅は、現在はミュージアムとして一般公開され、その美しさを体感することができる。

ファンズワース邸
住所/14520 River Rd, Plano, IL 60545

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860-880 レイクショアドライブ アパートメント(1951年)/アメリカ

1951年に完成した、アメリカ・イリノイ州シカゴに建つ2棟の高層集合住宅。ミシガン湖畔を走るノース・レイク・ショア・ドライブ沿いに位置する。特徴は、鋼構造のフレームをガラスのカーテンウォールで覆った外観。垂直・水平ラインがクリアに表現されており、シンプルでありながら構造そのものの美しさが際立っている。

その端正な姿はシカゴのスカイラインを形づくる重要なランドマークのひとつにも。またモダニズム建築を象徴する存在のひとつで、ニューヨークやシカゴに見られるガラス張りの高層オフィスビルの原型にもなった。

室内の窓はすべて床から天井までのフルハイトで開放感にあふれ、湖を望むぜいたくな眺望が楽しめる住空間に。現在は高級コンドミニアムとして利用されている。

860-880 レイクショアドライブ アパートメント
住所/880 N Lake Shore Dr, Chicago, IL 60611

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クラウンホール(1956年)/アメリカ

バウハウスの第3代校長を務めたミース・ファン・デル・ローエだが、1933年にナチスによってバウハウスが閉鎖されると、アメリカへ亡命。アメリカでは、イリノイ工科大学建築学科の主任教授として活躍した。その流れの中で、ミースは同大学のキャンパス計画も手掛け、現在も敷地内には彼の建築が数多く残されている。その中でも傑作と称され今も多くの学生たちに影響を与えている建物が、1956年に完成した建築学科の施設「クラウンホール」である。鋼鉄とガラスによるシンプルな構造が特徴となり、柱を外部に配置することで、内部は柱のない広々とした「ユニバーサルスペース」を実現。構造そのものが意匠として表現されミースの哲学を体現している。現在も完成当時の美しさを保ったまま、イリノイ工科大学の建築学部施設として使われている。

イリノイ工科大学クラウンホール
住所/3360 S State St, Chicago, IL 60616

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シーグラム・ビル(1958年)/アメリカ

ニューヨーク州マンハッタンのパーク・アヴェニュー沿いに建つ、超高層オフィスビル。1958年にカナダの酒造メーカー「シーグラム」のアメリカ本社として竣工した。設計は、ミース・ファン・デル・ローエと、「ガラスの自邸」で知られる建築家フィリップ・ジョンソンによるもの。鉄骨構造をブロンズで覆い、ガラスのカーテンウォールを組み合わせた外観は、革新性とともに高級感や重厚さも感じさせる仕上がりである。

なかでも特徴的なのが、建物前面にプラザと呼ばれる広場を設けている点である。都市の中にゆとりある公共空間を生み出すこの手法は、その後の都市デザインや建築規制にも広く影響を与え、世界の高層建築のあり方を形作ったとも言われる。

シーグラム・ビル
住所/375 Park Ave, New York, NY 10152

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新ナショナルギャラリー(1968年)/ドイツ

ベルリンのポツダム広場に建つ「新ナショナルギャラリー」は、20世紀初頭から1970年代にかけてのヨーロッパとアメリカの近現代美術を楽しめる国立美術館。この建物は、ミースがドイツからアメリカへ亡命した後にヨーロッパで手掛けた唯一の作品であり、また亡くなる直前に完成した「最後の建築」としても知られている。

建物は、巨大なガラス窓と水平屋根をもつ地上階と、展示空間が広がる地下階の2層からなる。ガラスと鋼鉄が生み出す透明感あふれる構造は、ミースの提唱した「ユニバーサル・スペース」を体感できる場に。開館から約50年が経った2018年からデイヴィッド・チッパーフィールド建築事務所による大規模な改修工事を実施。オリジナルの意匠を尊重しながら現代的な機能を備え、2021年に美しくよみがえった。

改修後は、地上・地下ともに、自然光がやわらかく差し込む心地よい空間となり、アート鑑賞だけでなく、建築そのものを味わうためにも訪れたくなる場所である。

新ナショナルギャラリー
住所/Potsdamer Straße 50, 10785 Berlin

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