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いま見に行ける、ル・コルビュジエの名建築10

  • 2026.4.22
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近代住宅の完成形と言われる「サヴォア邸」から、集合住宅のモデルを提示した「ユニテ・ダビタシオン」、晩年に手掛けた彫刻的で自由な造形の「ロンシャン礼拝堂」など、実物を見に行ける10作品をセレクト。

Hulton Deutsch / Getty Images

ル・コルビュジエ(Le Corbusier)

近代建築の三大巨匠の一人で、モダニズム建築をけん引したル・コルビュジエ。スイスで時計の文字盤を作る職人の家に生まれ、当初は家業を継ぐために彫刻や彫金を学んでいた。だが、視力の問題などから職人の道を断念し美術学校へ。そこで出会った校長の勧めから建築の道へ進むことに。パリに渡り設計事務所で実践経験を積んだコルビュジエは、1914年にはそれまでのヨーロッパの伝統的な建築様式とは異なる、スラブ・柱・階段を主要要素とする「ドミノシステム」を考案する。そして1922年に従弟のピエール・ジャンヌレと事務所を構え、1926年には鉄筋コンクリート構造の可能性を最大限に生かす、現代建築の設計指針となる「近代建築の5原則」を発表した。

機能性と合理性を重視したコルビュジエの建築理論は、建築にとどまらず、現代の都市計画や家具にも反映されている。数多くの機能的で美しい作品が残されており、その革新性は今なお色褪せることなく人々を魅了し続けている。

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小さな家「ル・ラク」(1924年)/スイス

スイスのレマン湖畔に立つその名の通りの「小さな家」。ル・コルビュジエが両親のために設計した作品である。床面積60㎡のコンパクトな空間には、可動式の壁や家具が配置され、光や風を取り込みながらレイアウトも自在に変えることが可能に。また南側の窓の向こうには湖とアルプスの景色が広がり、リビングだけでなく、寝室やバスルームからも眺望を楽しむことができる。屋上庭園やテラスも用意され、自然との一体感も実感できる。父親はわずか1年しか住むことができなかったが、母親は100歳までこの家で暮らしたという。現在は博物館として公開され、コルビュジエのミニマルな設計思想と暮らしの工夫を五感で体験できる貴重な場所である。

小さな家「ル・ラク」
Route de Lavaux 21 CH-1802 Corseaux

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ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸(1925年)/フランス

パリ16区に立つ「ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸」は、ル・コルビュジエ作品の中でも初期の代表作で1925年に完成した。ピエール・ジャンヌレとの共同設計で、銀行家ラ・ロッシュのための邸宅兼ギャラリーと、兄でヴァイオリニストのアルベール・ジャンヌレの邸宅からなる複合住宅となっている。建物にはピロティや屋上庭園、水平連続窓、自由な平面と立面など「近代建築の五原則」が採用されているが、特にピロティはこの邸宅ではじめて登場した。また「ラ・ロッシュ邸」の内部はスロープによって空間がつながり、ギャラリーと住居が有機的に結びつく構成に。コルビュジエが提唱した歩きながら空間の展開を楽しむ「建築的プロムナード」もこの作品ではじめて導入されている。

現在は「ラ・ロッシュ邸」が財団本部として公開されている。建築とアートを同時に体験できるだけでなく、住宅のために特別にデザインされた家具や照明、カラーパレットなども実感できる施設となっている。

ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸
住所/10 Sq. du Dr Blanche, 75016 Paris

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ヴァイセンホーフ・ジードルンク(1927年)/ドイツ

1927年、ドイツで開催された住宅展に出展された住宅で、ル・コルビュジエの革新的な思想を体感できる貴重な建築作品。住宅展自体はミース・ファン・デル・ローエが全体計画を担い、ヴァルター・グロピウスら当時の第一線の建築家が参加した国際的プロジェクトでもあった。コルビュジエはピエール・ジャンヌレとともに2棟の住宅を設計。自身の代名詞とも言える「近代建築の五原則」をはじめて体系的に示し、実際の建築として具現化した。直方体が宙に浮かぶような外観は「空中の直方体」とも称され、その軽やかな造形はぜひ実物を見て実感して欲しい。さらに内部では、引き戸や可動式ベッドによって空間を柔軟に使い分ける仕組みが取り入れられ、機能性と革新性を兼ね備えた住空間が広がっている。現在は「ヴァイセンホーフ博物館」として公開中。

ヴァイセンホーフ・ジードルンク(ヴァイセンホフ住宅博物館)
住所/Rathenaustraße 1, 70191 Stuttgart

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サヴォア邸(1931年)/フランス

近代住宅の最高傑作の一つとも言われるフランス・ポワシーにある「サヴォア邸」。ピエール・サヴォア夫妻の週末住宅として計画されたもので、ル・コルビュジエとピエール・ジャンヌレが設計。1931年に完成した。白い建物はピロティによって持ち上げられ、自由な平面と立面、水平連続窓、屋上庭園を備え、まさにコルビュジエが提唱した「近代建築の五原則」を見事に体現した建築として知られる。

内部は1階玄関から屋上庭園まで、それぞれの空間をスロープでつなげることにより、歩いているうちに空間の変化が楽しめる「建築的プロムナード」の構成に。光と風を巧みに取り入れることで内と外を緩やかに一体化させながら、視線にも気を使いプライバシーに配慮した構成になっている。また当時、色彩によって空間を抽象的かつ絵画的に表現するピュリズムの手法を好んだコルビュジエは、場所ごとに異なるパステルカラーを採用。窓から差し込む自然光の変化と相まって、室内はやわらかく明るい印象となり、機能性と豊かな色彩を兼ね備えた心地よい空間が広がっている。

サヴォア邸
住所/82 rue de Villiers, 78300 Poissy

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マルセイユのユニテ・ダビタシオン(1952年)/フランス

ル・コルビュジエが設計した、20世紀モダニズム建築の象徴的集合住宅。「ユニテ・ダビタシオン」とはフランス語で「住居の統一体」や「住居の単位」を意味し、住宅と都市生活を一体化させる思想が反映されている。フランスとドイツに計5カ所作られたが、その第一号となるのが1952年に完成したマルセイユの「ユニテ・ダビタシオン」だ。

建物は重厚なコンクリート打ち放しの箱型構造で、屋上にプールやジムなどの運動施設が、また住民の交流空間として店舗や郵便局、保育園などが設けられ「ひとつの街」として構想された。住まいは一人暮らし用からファミリータイプまでさまざまなタイプが用意され多くがメゾネット形式で構成されている。そのため室内に光と影を美しく取り込む構造となっている。廊下からはマルセイユ港を眺めることができ、開放的な屋上庭園も設けられ豊かな住空間が広がっている。

1961年には、3〜4階部分にホテルが開業し現在も営業中。また多くの住戸が今も居住用として使われていて、建物は一般見学も可能。

マルセイユのユニテ・ダビタシオン
住所/280 boulevard Michelet 13008 Marseille

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カップ・マルタンの休暇小屋(1952年)/フランス

フランス南東部ロクブリュヌ・カップ・マルタンの海岸沿いに建つ「カップ・マルタンの休暇小屋」は、コルビュジエが自身と妻イヴォンヌのために設計した最小限住宅。わずか13.7㎡の木造小屋には、ベッド、デスク、収納、洗面設備が機能的に収められ、すべてがコルビュジエが考案した人体寸法体系「モデュロール」に基づき設計されている。家具や設備の配置と色のバランスが緻密に計算された空間は、木材のあたたかみも相まって、限られた空間ながらも居心地の良さと生活の快適さが実現している。

窓の向こうに地中海が広がるこの快適な住まいが気に入ったコルビュジエは、1965年に海水浴中に心臓発作で亡くなるまで毎夏をここで過ごした。そしてこの小屋が終の住処となり、今も妻とともに近隣の墓に眠っている。

カップ・マルタンの休暇小屋
住所/promenade le Corbusier 06910 Roquebrune-Cap-Martin

Getty Images

ロンシャンの礼拝堂(1955年)/フランス

フランス東部ロンシャンの丘に建つ「ロンシャン礼拝堂」は、ル・コルビュジエが戦後に再建したカトリック教会。大きく膨らんだ曲面屋根に象徴される有機的な形態が特徴となり、それまでの直線的な近代建築から、より人間的で情緒的な空間を追求したコルビュジエの思想転換を象徴する建築としても知られる。

内部に足を踏み入れると、最大で厚さ3mにもなる壁に配された小さなステンドグラスの窓からの色とりどりの光に目を奪われる。さらに屋根と壁の間のスリットからの光も加わり、神秘的な祈りの空間が広がっている。敷地内には他にもコルビュジエが手掛けた巡礼者のための宿泊施設や、ジャン・プルーヴェによる鐘楼、レンゾ・ピアノ設計のビジターセンターと修道院なども点在し見どころも多い。

ロンシャンの礼拝堂
住所/13 rue de la Chapelle F-70250 Ronchamp

© 国立西洋美術館

国立西洋美術館(1959年)/日本

東京・上野にある「国立西洋美術館」本館は、ル・コルビュジエが設計した日本で唯一の建築物。第二次世界大戦後、フランス政府に接収されていた実業家・松方幸次郎の美術コレクションが寄贈返還される条件として建設が計画された。設計を任されたのは、近代建築の中心人物であったフランスの建築家ル・コルビュジエ。計画がスタートした1955年には本人も来日して敷地を視察。その後実施設計を弟子となる前川國男、坂倉準三、吉阪隆正の3名が行った。

1959年に完成した本館は、展示の中心となる部屋を中央におきながら展示室を周囲に配置し、必要に応じて外側へ増築可能な「無限成長美術館」構想に基づきデザインされている。内部は緩やかなスロープで上階へ上がることができ、展示空間を連続的に体験できるのも特徴。また1階部分はピロティとなり、周囲の公園とも視覚的につながる開かれた建築に。ル・コルビュジエが目指した建築哲学を体感できる空間として高く評価されている。

国立西洋美術館
住所/東京都台東区上野公園7-7

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ラ・トゥーレット修道院(1960年)/フランス

フランス東部エヴーに建つ「ラ・トゥーレット修道院」は、ル・コルビュジエの晩年を代表する宗教建築で1960年に完成した。1965年、海水浴中に心臓発作で亡くなったコルビュジエだが、パリの「ルーヴル宮殿」で行われた国葬に向かう前、本人の希望から遺体が一晩この修道院に安置されたことでも知られる。丘の斜面に沿って建つ建物は、杭で浮かせたピロティ構造で、コンクリート造による直線的で重厚な外観が印象的。建物は4つの直方体からなり、内部には修道士の寝室や勉強室、聖堂、回廊、食堂、図書室などが機能的に配置されている。不規則に配された特徴的な窓の格子には、設計に参加したコルビュジエの弟子で音楽家でもあったヤニス・クセナキスの数学的思考と音楽的感性が反映され、建物にリズミカルな美しさを添えている。また聖堂では、天窓やスリットから差し込む自然光が空間全体に奥行きと詩的な表情を生み出し、その表情も必見だ。修道院は現在、宿泊も可能。回廊を歩いたり、窓からの光を感じながら、コルビュジエの精神性と実践性を体感して欲しい。

ラ・トゥーレット修道院
住所/Route de La Tourette, 69210 Éveux

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チャンディーガルのキャピトル・コンプレックス(1962年)/インド

多くの都市計画を構想したル・コルビュジエだが、その中で唯一実現に至ったのが、晩年に手掛けたこの「チャンディーガル」である。1947年のインド・パキスタン分離独立を契機に、新たな首都建設の必要が生まれ、インド北部にこの近代都市の構想が描かれた。都市は「セクター」と呼ばれる区画によって整然と分けられ、それぞれに生活・商業・公共機能をバランスよく配置。都市そのものを有機的なシステムとして設計している点に、コルビュジエの思想が色濃く表れている。

その「チャンディーガル」の中で、高等裁判所や議事堂、行政庁舎が集まる区画が「キャピタルコンプレックス」と呼ばれ、現在も当初の用途のまま使われている。都市計画と建築が一体となった空間を体感できる貴重な場所となっている。写真は1960年に完成した高等裁判所で、カラフルな柱と大きく張り出した二重屋根が特徴となり、強い日差しや雨から建物を守る工夫が施されている。

チャンディガールのキャピトル・コンプレックス
住所/Sector 1, Chandigarh, 160001

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