1. トップ
  2. ホンダ GB350S インプレッション|中野真矢【2022年 試乗レビュー/RCアーカイブ】

ホンダ GB350S インプレッション|中野真矢【2022年 試乗レビュー/RCアーカイブ】

  • 2026.4.21

排気量350cc。リッターマシンに乗り慣れてしまった我々には、このシングルエンジンはなんとも小さく感じてしまう。しかし、ライダーのポテンシャルを大きく凌駕することがないマシンだからこそ得られる、ライディングプレジャーがある。

※この記事は『ライダースクラブ 2022年1月号(No.573)』に掲載された内容をもとに構成しています。

丸目1灯の空冷ネイキッド。バイクらしいバイクの存在価値

丸目のネイキッドバイクは、いかにも正統派という雰囲気で安心感がある。

GB350Sは意外にも大柄だ。その佇まいは堂々としていて、ミドルクラスの枠組みを超えた存在感がある。このGB350Sに対して、僕はちょっとした期待を抱いている。

先日、CB1100シリーズの国内販売向け生産終了がアナウンスされた。日本の伝統的な空冷ビッグネイキッドが姿を消すのは、とても寂しいことだ。特にホンダは「CB」の名に並々ならぬ熱意を込めている。空冷1100シリーズも細部に至るまで高品質なパーツが使われており、「ニッポンのネイキッド、かくあるべし」という強い気持ちを感じる。

そのCB1100シリーズが終わりを迎えてしまうのは本当に残念なことだが、ふと気付けばGB350Sも空冷ネイキッドなのだ。

もちろん名称はCBではなくGBで、排気量も違えば価格帯もまったく違う。決して同列で語ることはできない。だが、空冷ネイキッドが存続することは手放しで喜びたい。

……と言いつつ、現役時代の僕の目の中に空冷ネイキッドはなかった。バイクといえば「ハイパフォーマンス」。エンジンはパワフルで、ハンドリングはシャープで軽量コンパクトなフルカウルモデルでなければならないと思い込んでいたのだ。

HONDA GB350S
HONDA GB350S

今になって振り返ればかなり極端な偏りだった。現役を退いてからはバイクの楽しみ方も大きく広がり、GB350Sのような空冷ネイキッドも「いいものだなぁ」と素直に思えるようになった。

公道をゆったり走るにはまったく文句がない。バイクらしいバイクであり、コストパフォーマンスにも優れている。このGB350Sが今も人気を集めているのも大いに頷ける。

だが、かつてハイパフォーマンスバイクにしか興味がなかった元レーシングライダーとしては、意地悪を自覚したうえで限界域の走りも見てみたい。

本来GB350Sがいるべき場ではないことは重々理解しながら、今回はあえてサーキットに持ち込み、それなりのライディングで攻め立ててみた。

ピットロードを走るトトトッという鼓動感が心地いい。

「これはもしかするともしかするぞ……」と期待感が胸をよぎる。

コースインしていつものように様子を探る。

少なくとも1、2周はゆっくり走るのが僕のセオリーだ。GB350Sには今どきのスーパースポーツモデルのような電子制御はほぼない。後輪のスリップを抑える「ホンダ・セレクタブルトルクコントロール」は搭載されているが、トラクションコントロールのように積極的に前進を助けるものではない。モードセレクトもクイックシフターもない。

すべて自分で操作するフィーリングは、「バイクは本来こうだよな」とどこか懐かしい。

せっかくなのでスロットルを大きく開けていく。すると……。

ホンダ GB350S インプレッション|中野真矢【2022年 試乗レビュー/RCアーカイブ】
HONDA GB350S

サーキットでは低速域とも言える80km/h付近から、エンジンがかなり苦しみ始めた。心地よかった鼓動が振動に変わり、走らせているこちらがかわいそうに感じてしまう。

ハンドリングに破綻はなく、ペースを上げてもニュートラルさは損なわれない。車体より先にエンジンが音を上げている印象だ。

だが、ペースを上げるにつれてシングルディスクブレーキの制動力にやや不安があったため、攻めの走りはそこで切り上げた。

不満というわけではない。バイクに追いつこうとするのではなく、手の内にあるバイクと遊ぶ感覚は心地いいものだった。

「どこを走るバイクか」を見極めた開発姿勢に好感

あえて本来の舞台ではないサーキットを走ることで、GB350Sのキャラクターがより明確になった。このバイクは本当の意味で公道向けに作られている。

多くのバイクは「アレにも使える、コレにも使える」という汎用性を求める。特に近年は電子制御の進化により、「公道でもサーキットでも楽しめる」と謳うモデルが増えている。

それはそれで魅力的だが、どこか擬似的な印象もある。バイクは本来、向き・不向きがはっきりした乗り物であり、それ自体が魅力のひとつだ。

GB350Sは違う。偽りなく公道向けだ。エンジンの鼓動感も、大らかなハンドリングも、ブレーキ性能も、すべてが公道で気持ちよく走るために最適化されている。

そして、その範囲を超えると「これ以上は無理です」とバイクが自然に伝えてくる。ライダーは無理に抑えなくても、自然と適切なペースで走ることができる。

この割り切りは実に潔い。走るステージに最適化された性能だからこそ、多くのユーザーに支持されているのだろう。

HONDA GB350S
HONDA GB350S

今回試乗したGB350Sは、17インチのリアタイヤやマットブラック塗装のマフラー、ワディングシート、樹脂製フェンダー&サイドカバーなどの専用装備が与えられている。ノーマルに比べて引き締まった印象で、スタイリッシュだ。

しかし、カスタムはやりすぎていない。完成度が高い一方で、「こうしたい」「ああしたい」と想像を膨らませる余白も残されている。

性能もカスタムも、ユーザーが本当に求めるものに絞り込んだGB350S。こうしたスタンダードな公道バイクこそ、長く作り続けてほしいし、多くのライダーに愛され続けてほしい。

元記事で読む
の記事をもっとみる