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プロが「復活」を願うノスタルジックなキッチンスタイル13

  • 2026.4.17
Laurey Glenn

“キッチンは家族の中心”と言われるのには理由がある。そこは、温かい食事を囲み、子供たちが初めてお菓子作りを学び、友人同士の何気ない会話が最も弾む場所だからだ。現代のキッチンはかつてないほど洗練され、機能的で無駄のない調理スペースへと進化を遂げた。しかしその一方で、最近では目にする機会が減ってしまった“懐かしいキッチンの設え”にも、特筆すべき魅力がある。

昔のキッチンは、今ほど洗練されておらず、計算し尽くされた設計でもなかったかもしれない。それでも、甘い装飾やあふれんばかりの料理本に囲まれた、祖母のキッチンを思い出さずにはいられない。キッチンのすべての要素が、必ずしも実用的である必要はないのだ。単に微笑みを誘い、良き思い出を運んでくれる。そんなノスタルジックな装飾品を壁に飾るだけでも、キッチンという場所はより豊かなものになる。それどころか、使い込まれた木の温もりあふれる作業台や、愛らしいボックス席、陽気なキャビネットカラーなど、先代の感性の方が実は理にかなっていたのではないか、と思えることさえある。

今回、3人のデザイナーに「密かに復活を願っている懐かしのキッチンアイデア」というお題の下に意見を求めてみた。その回答はどれも納得のいくものばかり。彼らのアイデアに触れれば、きっと自分のキッチンにも“古き良き要素”を取り入れたくなるに違いない。US版「ベランダ」より。

James McDonald

物置ではない「食品貯蔵庫」

理想のキッチンをデザインする際、誰もがまず優先するのは「収納」。一般的な戸棚だけに頼るのではなく、時代に左右されない実用的な食品専用スペースとして、本格的な「食品貯蔵庫」を取り入れることを検討してみてはどうだろう。

その歴史は中世まで遡る。もともとは家庭内の涼しく風通しの良い場所に設けられた、生鮮食品や乾物、日用品を保管するための専用スペースだった。20世紀初頭に冷蔵庫が普及すると、この機能的な貯蔵室は急速に姿を消していったが、「クーパー・パシフィック・キッチンズ」のデザイナー、スティーブン・クーパーは、今こそこのスペースをモダンに復活させるべきだと考えている。

「それは単なる物置としてのパントリーではない。専用の棚やカウンター、さらにはサブシンクまで備えた、美しく整えられたひとつの“部屋”なのです」とクーパーは語る。「適切に設計し、整理整頓を行うことで、キッチンに完璧な秩序をもたらしてくれます」

Laurey Glenn

朝食のための「小さなカウンター&ボックス席」

あまりにも早く廃れてしまった古き良き要素の中で、スティーブン・クーパーが真っ先に挙げるのが、キッチンの片隅に設けられた「ブレックファスト・ヌック(朝食コーナー)」だ。「こうしたこぢんまりとした席は、家庭に安らぎと日常のささやかな彩りを与えてくれます」と彼は語る。「私たちはこれらを手放して巨大なアイランドキッチンを取り入れましたが、ゆったりとした朝を過ごすための造り付けのベンチ席ほど、時代に左右されない普遍的存在はありません」

「アリソン・バブコック・デザイン」のアリソン・バブコックも、1960年代から70年代にかけて人気を博した「ボックス席(ブレックファスト・ブース)」に愛着を持つ一人だ。「60年代後半に生まれた私は、まさにキッチンのボックス席の時代に育ちました。4人から6人の家族がぎゅっと身を寄せ合い、テーブルを囲んで何時間も過ごしたものです。そこは遊び心のある色のビニールレザーが張られた居心地の良い拠点で、壁一面のベンチ席とはまた少し違う、囲まれた空間ならではの趣がありました」と彼女は振り返る。

Simon Upton for VERANDA

お気に入りを飾る「プレートラック」

お気に入りの皿のコレクションは、実用性を損なうことなく、美しく“見せる収納”を楽しみたいもの。スティーブン・クーパーは、プレートラックを単なる“飾り”や“おまけの要素”として扱うべきではないと言う。現代的なスタイルでは、キッチンの構造的なアクセントとして空間を引き立てつつ、日常的にさっと手に取れる実用的な存在へと進化しているから。

「プレートラックは今や、戸棚の構造そのものに美しく組み込まれるようになっています。全体のプロポーションを整え、木製家具の意匠に馴染ませることで、単なる収納を超えた、必然性のある美しい佇まいが生まれるのです」と彼は語る。

Thomas Loof for VERANDA

造り付けの「立派な食器棚」

見せたいのが皿のコレクションだけではないのなら、古き良き時代の造り付けの食器棚を取り入れてみては?アリソン・バブコックは、とりわけ部屋の隅に設えられた、自慢の食器を飾るためのコーナーキャビネットが印象に残っているという。

「結婚のお祝いで揃えた特別な磁器や、色鮮やかなグラスウェアを並べ、自分らしく整える時間はとても楽しいものです。せっかくの品々を、なぜ扉の奥に隠しておく必要があるのでしょうか」と彼女は力説する。

Dylan Thomas

幸福な一日を呼ぶ「黄色のキッチン」

カリフォルニア州ハリウッドに拠点を置く「オックスフォード・ハウス・プロジェクト」のオーナー兼デザイナー、ジェニファー・レールは、かつては一般的だったキッチンの黄色い壁やキャビネットをこよなく愛している。

「現代のキッチンは、明らかに無機質なものになりがちです。私は明るいイエローのキッチンが大好きです。朝、コーヒーや朝食を作るためにキッチンへ足を踏み入れたとき、温かみのある幸福な空間が一日のはじまりを迎え入れてくれる。それは、とても心地の良いことなのです」と彼女は指摘する。

KeyannaBowen

きれいに並べられる「見せる収納」

「キャスリン・マーフィー・インテリアズ」のキャスリン・マーフィーは、自身が“実用的ディスプレイ”と呼ぶ設えが、キッチンから次第に姿を消していると感じている。

「私は、水切りラックや、豆や米を詰めたガラス瓶、ハンドドリップ用のコーヒーサーバー、そしてティーケトルなどが並んでいる光景が大好きです。料理に使う道具にはそれ自体の美しさがありますし、それらがデザインの一部として組み込まれていれば、どこにあるか一目で分かり、家事の効率もずっと上がるのです」と彼女は語る。

1stDibs

ガラスや陶器の「フルーツ飾り」

「1960年代から70年代にかけて、主にイタリアやポルトガル、スペインで作られた陶磁器製のフルーツ飾りが大きなブームとなりました」とレールは語る。「祖父母の家に飾ってあったのを覚えている人もいるでしょう。私自身もその一人です。こうしたアイテムは“おばあちゃんの家のスタイル”を連想させるかもしれませんが、現代的なキッチンの光り輝く白い大理石のカウンターに置いたり、朝食テーブルのセンターピースにしたりすると、かえって新鮮に映るものですよ」

さらに彼女はこう付け加える。「色鮮やかなものが多く、部屋全体をパッと明るくしてくれます。そして何より嬉しいのは、本物と違って決して傷まないことですね」

Brian Woodcock

料理本だけを収める「ブックシェルフ」

“ブックシェルフ・ウェルス(本棚の豊かさ)”というトレンドワードが一時期話題になったが、このノスタルジックなキッチンのアイデアは、流行に左右されない普遍的なものだ。キッチンに本棚を設ければ、お気に入りの料理本だけでなく、レシピボックスやアート、その他のコレクションを美しく飾ることができる。

「デジタルで手軽にレシピが見られる現代でも、私はやはり紙の料理本をパラパラとめくるのが大好きです」とバブコックは語る。さらに彼女は、キッチンのデザインに馴染む、厳選された料理本を置くためのコーナーを強く支持している。「使い込まれた本が放つ独特の味わいや色彩は、キッチンに深みを与えてくれるのです」

Francesco Lagnese

全員の顔が見える「円形テーブル」

ジェニファー・レールは、長方形の農家風テーブルやキッチンカウンターよりも、円形のダイニングテーブルを好むという。「食事を共にする全員の顔が見渡せるからです」と彼女は語る。

さらに彼女はこう付け加える。「円形テーブルには上座がないため、座る場所による上下関係が生まれません。それに、急な来客があっても予備の椅子を差し込みやすく、柔軟に対応できるのも魅力ですね」

Read McKendree

古き良き時代を思わせる「家具のようなキャビネット」

「壁一面に隙間なく固定されたシステムキャビネットよりも、家具のような独立した設えのキャビネットの方が、キッチンが住まいの一部として馴染んでいた時代を思い起こさせます。当時は、今ほど多くの家電製品を収納する必要もありませんでした」とマーフィーは語る。

彼女は、あえて家具に近いデザインの要素を取り入れることをすすめている。「そうすることで、古き良き時代のキッチンのような雰囲気と機能性を備えた空間を演出できるのです」

Pascal Chevallier

とっておきが壁を彩る「飾り皿」

「壁に皿を飾るという習慣は、古代中国の華麗な装飾皿から、ルネサンス期イタリアのマヨリカ焼きに至るまで、何世紀にもわたって愛されてきました」とレールは語る。

「皿は立体的なものですから、キッチンの壁に掛けることで空間に質感と奥行きを与えてくれます。お気に入りを集めるのも楽しいですし、手軽に掛け替えられるのも魅力ですね。代々受け継がれてきた家宝を飾ってもいいですし、蚤の市で掘り出し物を探したり、新しいものを買い足したりするのも良いでしょう」

Annie Schlechter

重厚感のある「木製テーブルトップ」

「調理の痕跡や、そこで作られた料理の記憶が刻まれた厚手の木材を組み上げた天板には、何とも言えない美しさがあります」とマーフィーは語る。

アリソン・バブコックによれば、アンティークの頑丈な木製天板を使用したアイランドキッチンは遥か昔から存在していたという。年月を経て、かつての素朴な切り株は重厚なテーブルへと姿を変えていったが、現代のキッチンでその姿を目にすることは少なくなった。

「長い歳月を経てようやく生まれる、アンティーク特有の分厚く不揃いな表面が大好きです」と彼女は言います。「キッチンの味わいと個性を引き立てるなら、古い木製天板のテーブルに勝るものはありません」

Eric Piasecki

ヴィンテージ風味の「リノリウムの床」

少しレトロすぎるように聞こえるかもしれないが、レールは現在復活の兆しを見せているリノリウムの床材をおすすめしている。

「リノリウムが再び注目されている最大の理由は、パターンや色のバリエーションが驚くほど豊富になったことです」と彼女は語る。「自分が理想とするヴィンテージ・ルックがどのようなものであっても、今のリノリウムなら必ずお気に入りが見つかるはずですよ」

original text : Shelby Deering and Sarah DiMarco

>>US版『Veranda』のオリジナル記事はこちら

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