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男の子の性被害は表面化しにくいのはなぜ? 性被害にあった子どもが、それ自体を“被害”と受け止めていないケースも【監修者インタビュー】

  • 2026.4.17

【漫画】本編を読む

※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。

ある日突然、学校に行けなくなった小学3年生の勇。理由がわからず数ヶ月経った頃、おぞましい事件に巻き込まれていたことが判明し――。

漫画『性被害のせいで、息子が不登校になりました』(あらいぴろよ:著、斉藤章佳:監修、飛田桂:取材協力/KADOKAWA)は、息子の性被害を知った家族が、周りの支援を受けながら事件と向き合おうとする。けれども、自分を責める勇の具合はますます悪くなり、明るかった家族は崩壊に向かい……。

監修を務めたのは、精神保健福祉士/社会福祉士であり、西川口榎本クリニックの副院長を務める斉藤章佳氏。最近増加するSNSを通じた性犯罪の手口や、性加害者の認知の歪み、性被害を避けるためにできることなどをうかがった。

――性被害を受けた勇は、「死んじゃいたい」という言葉が出るほど追い詰められていました。でも、性被害にまっすぐ向き合う母親の英子に対して、父親の健は割と長いこと「大事になってしまった」と事件を軽く見ていましたね。性教育に関しても、お父さんの賛同が得られないケースは少なくないと思います。父親の意識を変えるには、どのように働きかければいいのでしょうか。

斉藤章佳さん(以下、斉藤):実際、健のようなお父さんは多いと思います。男の子が性被害にあうわけがないし、被害にあう子がいたとしたら、よっぽど美男子なんだろう…とか、遊びの範囲内で起こることだ…とか。でも、それは想像に過ぎません。男の子の性被害は一般の人たちが想像する以上に多いし、被害を受けた男の子は重大なダメージを受け、その後も苦しい人生を歩んでいくことが実際にあるのです。まずは、その事実を知ってほしいです。そういう意味でも、本作はお父さんたちに読んでもらうためにも、とてもいい漫画だと思います。

――なぜここまで、母親と父親の性被害に対する認識が違うのでしょうか。

斉藤:男の子の性被害は、親に打ち明けない子が多く、表面化しにくいです。情報量が圧倒的に少ない分、お父さんは男の子の性被害を想像しにくいのかもしれません。そもそも、性被害にあった男の子自身が、それを性被害と受け止めていないケースも多いです。この漫画の加害者と同じように、幼い頃に性被害を受け、大人になってから自分も性加害者になってしまったタイプは少なくないのですが、刑務所などで彼らの話を聞くと、それがラッキーな出来事として記憶に残っている人もいます。

漫画でも、加害者が「大人の男性が気持ちよくしてくれた」と語っていますよね。これが女性からの加害であったとしても、本当は人権や性的自己決定権を奪われるような性被害にあっているのに、周りから「お前ラッキーだったな」と羨ましがられたりして、ラッキーな経験だったと記憶が上書きされてしまう。でも、そのねじ伏せられた経験がその人の性の価値観に大きな影響を及ぼしていて、たとえば、「力が強い側が弱い側を支配していいんだ」などと歪んだ価値観につながってしまうことがあります。このように、母親と父親に認識の差は、「男はこうあるべき」という社会構造が生んだバイアスが原因であることがほとんどです。

――勇もまた、性被害が発覚しなかったり、ケアされなかったりしたら、同じような道を辿る可能性があったということですね。男性が性被害自体に興味を持つ機会が増えることを切に願います。

斉藤:日本では特に、男性の性被害が軽視されている傾向があります。ただ、女性から言われるとシャッターを閉めてしまうお父さんは多い。同性からの発信のほうが素直に聞ける方もいるので、私も、お父さんがセミナーに参加された時には、男の子の性被害について「性被害は力の不均衡や権力勾配を利用した人権侵害行為である」と意識的に伝えるようにしています。

取材・文=吉田あき

斉藤章佳:

1979年生まれ。大学卒業後、国内最大規模といわれる依存症施設「榎本クリニック」にソーシャルワーカーとして勤務。現在、西川口榎本クリニックの副院長。25年にわたり、アルコール依存症、ギャンブル、薬物、摂食障害、性犯罪、児童虐待、DV、クレプトマニアなどさまざまなアディクション(依存症)問題に携わる。専門は加害者臨床で、3500人以上の性犯罪者の再犯防止プログラムに携わる。著書に『「小児性愛」という病-それは、愛ではない』(ブックマン社)、『子どもへの性加害-性的グルーミングとは何か』(幻冬舎新書)、『夫が痴漢で逮捕されました-性犯罪と「加害者家族」』(朝日新書)、最新刊に『10代のための「性と加害」を学ぶ本: 暴力の「入口」「根っこ」「しくみ」を知る包括的性教育マンガ』(時事通信出版局)などがある。

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