1. トップ
  2. ファッション
  3. 執筆10年! 自費出版は即完売の話題作が、大幅加筆&フルカラーで商業出版化!

執筆10年! 自費出版は即完売の話題作が、大幅加筆&フルカラーで商業出版化!

  • 2026.4.16

「執筆10年」という大作映画のような謳い文句に誘われてページをめくると、見たことのない世界が押し寄せてくる。映像作家がマンガを描いたらどうなるのかを体感できる、この作品。手がけたのは、映像チーム「最後の手段」の有坂亜由夢さんだ。

破壊と創造、ほとばしる生命。見たことのないマンガ表現!

「アニメーションは1シーンに対し何十カットも絵が必要ですが、マンガは1シーン1コマで表現できるのがいいなと思って。子どもが生まれて発見がいっぱいあったものの、育児で制作時間がなかなか取れず、アニメーションで1シーンを作るくらいの熱量を、マンガの1コマに注ぎたいという思いから始まりました」

冒頭、5歳のえんちゃんは母親と行ったコンビニで天災に見舞われ、1歳の頃に時間が巻き戻ってしまう。

最後の手段『えんちゃんち』。リイド社 2420円 Ⓒ最後の手段/リイド社

「1歳くらいまでの赤ちゃんは動物にかなり近く、自然と最も共鳴している時期ではないかと思いました。大きな天災が起きたことで自然の力に引き寄せられ、時間が戻ってしまうというイメージで描きました」

赤ちゃんに返ったえんちゃんは、目に入るもの、触れるものすべてに興味を示し、痛快な破壊神と化す。

「子どもってものを投げたり、なめたり、つぶしたり、動き出すとともに破壊行動が始まりますよね。その姿が見ていて面白く、破壊は人間の本能なのだと思えるほどでした」

予測不能な行動が次々と描かれていくのだが、躍動し続けるその表現は、とにかく圧巻。

「飛び散った破片や欠片(かけら)が別のものに変化していくような、次に起きることまで1コマで描いています。動画は流れていくものなので、作り手が時間の経過も含めすべて編集していますが、マンガはページをめくる読み手が時間をコントロールできる。一瞬を閉じ込められるのは、マンガだからできる表現だと思いました」

セリフを極力抑え、イメージが連なるように破壊と創造、ミクロとマクロを行き来する世界は、思考よりも感覚に訴えかけてくる。それはまるで、えんちゃんを媒介に自らも生まれて間もない状態に戻っていくような、懐かしくも新鮮な体験だ。

「自主制作の映像作品では消化不良なところがあったのですが、初めて達成感を抱くことができました。マンガのほうが受け手がより能動的になれるのか、いろんな感想を言ってもらえるのもうれしいですね」

命という壮大な宇宙へ、えんちゃんと一緒に飛び込もう。

最後の手段

さいごのしゅだん 有坂亜由夢、おいたまい、コハタレンの3人による映像チーム。2010年結成。観る者の内に眠る太古の記憶を呼び覚ます作品を制作。

information

『えんちゃんち』

天災に見舞われ、5歳のえんちゃんの時間は、赤ちゃんの頃へ。2024年に自費出版され、瞬く間に完売した作品を、大幅加筆&フルカラーで商業出版化。リイド社 2420円 Ⓒ最後の手段/リイド社

写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

anan 2490号(2026年4月1日発売)より

元記事で読む
の記事をもっとみる