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「悪影響が出るおそれが」医師が警告。実は『胃薬の服用』には注意が必要だった…飲み続けることで高まる“危険なリスク”

  • 2026.5.17
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

胃が痛いとき、手軽に胃薬に頼っていませんか?特に「胃酸を抑える薬」は症状を劇的に改善してくれますが、長期間飲み続けることで、胃が本来持っている大切な機能まで弱めてしまうリスクがあるといわれています。

胃酸は単に食べ物を溶かすだけでなく、殺菌や栄養吸収など、私たちの健康を守るために欠かせない役割を果たしています。薬の正しい知識と付き合い方を知ることは、健康な胃を維持するための第一歩です。

今回は、胃酸を抑える薬の落とし穴と、根本的な解決につながる生活習慣の改善について、専門家に解説していただきました。

胃酸を抑える薬の落とし穴。「胃酸の本来の役割」とは?

---胃酸を抑える薬を常用すると、体に悪影響があるのでしょうか?まず、胃酸が本来果たしている役割について教えてください。

松岡 雄治さん:

「胃薬のうち、胃酸を抑える薬を常用すると、胃酸が本来果たしている重要な役割を邪魔してしまうことで悪影響が出るおそれがあります。本来の胃酸が果たしている3つの役割は以下の通りです。

  • 消化吸収(食べ物を溶かす):胃酸は非常に強い酸性のプールです。口から入った食べ物をドロドロに溶かし、消化酵素を働きやすい状態にすることで、腸でのスムーズな消化を助けます。
  • 腸内環境の維持(細菌に対するバリア):食べ物と一緒に入ってくる細菌の大部分は、胃の強い酸性環境を生き抜けません。胃酸が『強力な殺菌バリア』として働くことで、有害な菌が腸へ到達するのを防ぎます。
  • 栄養吸収のサポート:カルシウムや鉄、ビタミンB12といった特定の栄養素を、腸で吸収されやすい形に変化させる働きを持ちます。

胃薬には大きく3つのタイプ(胃酸を抑える薬・粘膜を守る薬・消化酵素を補う薬)があるので、まずはどのタイプか確認しましょう。このうち、『胃酸を抑える薬』を長期間飲み続けると、胃酸の本来の働きである『消化吸収を助ける作用』や『殺菌機能』が損なわれることがあるということです。」

長期服用で感染症リスクが増加?栄養吸収や骨折の懸念は

---胃酸を抑える薬を長期間飲み続けると、栄養吸収や骨折、あるいは感染症のリスクなどはどうなるのでしょうか?

松岡 雄治さん:

「例えば、胃薬によって酸性が弱まってしまうと、生きたままの細菌が腸へ到達しやすくなります。その結果、腸内フローラのバランスが崩れ、感染性胃腸炎などの腸管感染症にかかりやすくなるのです。薬の作用と、それが本来の機能をどう抑えるのかという視点で考えてみてください。

栄養吸収障害と骨折については、これまで胃酸を薬で抑えるとリスクが高まるとされ、実際にこれを支持する論文も出ていました。しかし、最近の研究結果は慎重に解釈する必要があります。17,598人以上を対象として3年間観察した近年の大規模な研究では、骨折や栄養吸収障害のリスクは胃酸を抑える薬の内服では明らかな差が生まれないという報告がなされ、問題ない可能性があるとされています。

3年という限られた期間であることから、骨折のリスクについて差が出なかった可能性もありますが、対象人数が多い大規模な研究結果であることは大きな意味を持ちます。

しかし、この研究結果は手放しで「全身への影響がない」と結論づけているわけではありません。骨折や栄養のリスクが否定されたその一方で、実は「腸管感染症」のリスクについては、胃酸を抑える薬の服用で上昇したという結果が出ています。 そのため、胃酸を抑える胃薬の服用を自己判断で続けることには、慎重になる必要があります。」

胃薬は「ブリッジ」として活用。根本治療に必要な生活改善

---胃薬とどのように付き合っていくのが正解ですか?生活習慣で気をつけるべきポイントも教えてください。

松岡 雄治さん:

「基本的には、不要な薬をいつまでも飲むことは推奨されないため、定期的に医療機関を受診し、医師の判断のもと適切なタイミングで服薬を終了するようにすることをおすすめします。胃の不調を根本から取り除くためには、胃薬に頼り切るのではなく、生活習慣の改善にも取り組んでいきましょう。

胃薬(逆流性食道炎や消化性潰瘍などの治療に処方)は、あくまで生活習慣の改善による効果が出るまでの『ブリッジ(橋渡し)』という意識を持ってください。胃の負担を和らげる3つの改善ポイントは以下の通りです。

・高カロリーな脂肪食を減らす:脂肪食は炭水化物などに比べて、嘔気や胃の痛みを強く誘発します。夕食の揚げ物は控えめに調整してみてください。
・喫煙習慣を見直す:喫煙は、胃の不調リスクが高いことが分かっています。
・睡眠を確保し食事の時間を整える:睡眠不足や不規則な食事時間は、胃の働きを調節する自律神経を乱します。

また、胃薬は市販されていますが、自己判断で飲み続けるのではなく、定期的に消化器内科を受診しましょう。適切なタイミングで終了するのはなかなか難しいものです。お気軽に受診してください。問題ないことが確認できればそれが何よりです。」

薬に頼りすぎず、胃が喜ぶ生活を

今回の取材を通じて分かったのは、胃薬は「胃の不調を解決するためのツール」であって、「根本治療」ではないということです。特に胃酸を抑える薬は、長期にわたって漫然と服用すると、胃が持つ本来の防御機能や消化能力を低下させ、予期せぬ感染症リスクなどを招く可能性があります。

「薬を飲んでいるから大丈夫」と安心するのではなく、食事内容や睡眠といった生活習慣を見直すことこそが、本当の意味での胃の健康につながります。もし現在、長期的に胃薬を服用している方がいれば、一度医師に相談して「やめどき」を検討してみてはいかがでしょうか。自分の胃の状態を正しく把握し、薬に頼りすぎない生活習慣を目指していきましょう。


監修者:松岡 雄治
麻酔科専門医。総合病院、大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じ、幅広い周術期管理に従事。現在は急性期病院で麻酔科医として勤務する。日々、美容領域を含む各診療科の手術に携わっている。医師としての知識と経験を活かして医療系ライターとしても活動し、医療・健康・美容分野の記事執筆、医学論文の解説、商品監修、AI技術開発関連プロジェクトへの参加などの実績を有する。睡眠コンサルタント、睡眠検定1級の資格も保有。

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