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奥歯を“インプラント”にした50代男性→「費用も手間もかかる」通院を止めたところ…数年後、歯に起きた“思わぬ異変”

  • 2026.7.20
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。歯科医師として、日々、食べることと口の機能のつながりを診ている鷹巣多紀です。

インプラント(人工歯根)を入れた後、「人工歯だから虫歯にはならないはず」と定期的な通院をやめてしまうケースを耳にすることがあります。

今回は、そうした判断が後になって歯茎の異変という形で返ってきた、60代男性の体験を紹介します。

Bさんに起きたこと

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

Bさんは60代の男性で、50代のうちに奥歯を数本インプラントにしました。術後しばらくは定期的に歯医者へ通っていましたが、「人工歯だから虫歯にはならない。費用も手間もかかるし」という気持ちが重なり、2〜3年ほどで通院をやめてしまいました。

それから数年が過ぎたころ、奥歯のあたりに違和感を覚えるようになりました。特に強い痛みはなかったものの、歯茎が腫れぼったく、触ると血が出たり膿が出たりすることが増えてきました。

再び歯医者を受診したところ、インプラント周囲の骨が部分的に減っていることがわかりました。「インプラント周囲炎(しゅういえん)」という状態と診断され、Bさんは「虫歯にならないから大丈夫だと思っていた。骨が関係するとは知らなかった」と話していたそうです。

インプラント周囲炎とはどういう状態か

インプラントは、失った歯の代わりに顎の骨に埋め込む人工歯根です。人工の素材でできているため、虫歯菌によって歯が溶けることはありません。

ただし、インプラントを支えている歯茎や骨は自分の体の一部です。インプラントと歯茎の境目にプラーク(歯垢)がたまると、細菌が周囲の組織に炎症を起こすことがあります。これがインプラント周囲炎で、天然歯の歯周病に似た経過をたどることも知られています。

進行すると骨が減り、インプラントがぐらつく場合もあります。痛みが強くなくても出血、腫れ、膿、違和感が出てくることがあるため、気づいたときには状態が変化していたというケースも少なくありません。

さらに恐ろしいのは、インプラント周囲炎は天然歯の歯周病に比べて「進行のスピードが非常に早い」という点です。自覚症状(痛み)がほとんどないまま急速に周囲の骨が溶けていき、ある日突然、インプラントが根元からポロッと抜け落ちてしまうこともあります。一度骨が大きく溶けてしまうと、再度インプラントを入れ直すことは極めて困難になります。痛みがなくても、決して油断できないのがこの病気の特徴です。

天然歯とインプラントで清掃が異なる理由

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

天然歯の根には歯根膜(しこんまく)というクッションのような組織があり、歯茎との間に密なつながりを持っています。
一方、インプラントには歯根膜がなく、骨に直接結合する構造です。

この違いにより、インプラントの周囲は天然歯に比べて血管が少なく、細菌と戦うための免疫細胞(防衛軍)が届きにくい構造になっています。そのため、一度細菌が侵入すると防壁をあっさりと突破され、周囲の組織や骨へと一気に炎症が広がってしまうのです。
また、形が天然歯と異なるため、自宅での清掃時に道具の当て方を工夫する必要が出てくることもあります。

歯医者でのメインテナンスは、プロによる清掃だけでなく、インプラント周囲の状態を定期的に確認する機会でもあります。

メインテナンスを続けるうえで意識したいこと

インプラント後のケアを続けるうえで、次のことが参考になります。

  • インプラントと歯茎の境目はプラークがたまりやすいため、ていねいに磨く
  • 歯間ブラシやフロスを使って、インプラントの側面も清掃する
  • 出血、腫れ、膿、違和感が続く場合は、早めに歯医者へ相談する
  • タバコ(喫煙)はインプラントを支える血管を収縮させ、免疫力を著しく低下させる「最大の危険因子」。喫煙習慣のある方は、そうでない方に比べてインプラント周囲炎のリスクが数倍に跳ね上がるため、より入念なメインテナンスが必須

定期的な通院は、せっかく入れたインプラントを長く使いつづけるための確認の場でもあるのです。

インプラントのメインテナンスは「入れた後」も続く

インプラントを入れた後も、周囲の歯茎や骨は変化します。「虫歯にならないから通院は不要」ではなく、インプラントを支える組織を守るためのケアが引き続き必要です。

違和感や出血が続くようであれば、強い痛みがなくても早めに歯医者へ相談してみてください。


執筆・監修:鷹巣 多紀

大学病院口腔外科にて研修後、一般歯科にて勤務。現在は1児の母として子育てと仕事に奮闘しています。
歯科医師ママkiki|note: https://share.google/uUYsDiSMnkNKZCrOw

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