1. トップ
  2. ヘルスケア
  3. 「少しお腹が痛む…」“ただの食べ過ぎ”と放置→数時間後、あまりの痛みに意識を失い…60代男性を待っていた“思わぬ悲劇”

「少しお腹が痛む…」“ただの食べ過ぎ”と放置→数時間後、あまりの痛みに意識を失い…60代男性を待っていた“思わぬ悲劇”

  • 2026.7.19
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさまこんにちは。周術期管理において、あらゆる病気をお持ちの患者さんを日々安全にお守りしている麻酔科専門医の松岡雄治です。

「少しお腹が痛む、ただの食べ過ぎだから温めて寝ていれば治る」。心臓に不整脈の持病があるにもかかわらず、Cさん(60代男性)は布団に横になりました。

数時間後、Cさんはあまりの痛みに意識を失い救急搬送されます。病名は「急性腸間膜動脈閉塞症(きゅうせいちょうかんまくどうみゃくへいそくしょう)」。

緊急手術によって一命は取り留めましたが、血流が途絶えた小腸の大部分がすでに壊死しており、大半を切り落とさざるを得ませんでした。食事から十分な栄養がとれない「短腸症候群」となり、点滴で栄養を補う生活を送っています。

なぜ、お腹の痛みを少し我慢しただけの油断が、一生点滴が手放せないような事態を招くのでしょうか。

心臓の「血の塊」が腸の息の根を止める時限爆弾

実はCさんは心房細動という病気を患っていました。

なぜ心臓の持病が、腸を腐らせる悲劇を招くのでしょうか。それは、心臓で作られた血の塊が、お腹に栄養を送る太い幹線道路を急激に塞いでしまうからです。

【血栓が腸を壊死させるフロー】
心臓での血の塊の発生:不整脈(心房細動など)があると心臓内で血液が淀み、小さな血の塊である血栓が作られます。

血栓のお腹への跳躍:血の塊が血流に乗り、心臓から送り出され、小腸を栄養する最も太い血管へと突然流れ込みます。

数時間での腸管壊死:血管が完全に塞がれると、腸はわずか4〜6時間で元に戻らない壊死に陥り、腸の壁に穴が開いて命に関わる状態(敗血症)を引き起こします。

「ただの食あたり」ではない「致命的な血流途絶」の落とし穴

undefined

「不整脈は薬を飲んでいるから大丈夫」「お腹が痛いだけなら胃腸薬を飲んで様子を見たい」。忙しい日々の中でご自身の小さな不調をやり過ごしてしまうのは、無理もありません。

しかし、この病気には意外な落とし穴があります。それは、のたうち回るほどの激痛が始まっているにもかかわらず、初期の段階でお腹を触っても「柔らかく、押してもそれほど痛くない。」という症状と所見のギャップがあるのです。

通常の食あたりや胃痙攣であれば、お腹を触ると硬く緊張したり、押したときに飛び上がるような痛みがあったりします。しかし血管が詰まった直後は、腸の内側だけが酸欠で悲鳴を上げているため、お腹の表面は柔らかいままなのです。

この「見かけの平穏」に騙され、救急を受診しても「ただの胃腸炎ですね」と帰されて手遅れになるケースもあるのです。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

大切な腸と命を守るために、お腹に異変を感じたら以下の3つのサインを静かに確認してください。

1. ある瞬間から突然始まった、のたうち回るような猛烈な腹痛

「じわじわ痛くなる」のではなく、スイッチが入ったように急激に始まった激痛は、血管が閉塞したサインの可能性があります。

2. 痛みが尋常ではないのに、お腹を触ると柔らかく張っていない

体の中は激しく痛むのに、お腹の表面を触ってもカチカチに硬くならず、押しても響かないという不気味なギャップが生じます。(※ただし、腸が完全に腐って穴が開き、腹膜炎を起こすと、お腹はカチカチに硬くなります。その段階ではすでに命に関わる極めて危険な状態です。お腹が柔らかい『今』こそ、一刻を争う救急要請のタイミングなのです)。

3. 不整脈(心房細動など)の持病がある、または日常的に動悸を感じる

お腹の血管を突然詰まらせる「血の塊」を送り出す、大元の原因が心臓に潜んでいる可能性があります。

お腹の不調を感じたら即座の救急要請を

お腹の不調に襲われたとき、「いつもの食あたりだろう」と横になってやり過ごそうとしてしまうのは、よくあることです。
だからこそ、普段と違うことには注意を向けてみてください。何時何分と指摘できるくらいのある時点での突然の発症などです。
もし「突然の猛烈な腹痛」が起きたら、ためらわずに救急車を呼び、医師に「不整脈がある」と伝えてください。
また、不整脈について受診していない方はまずは、循環器内科を受診してみてください。
医療をうまく活用して、恐怖や不安を取り除き、平穏な毎日を守りましょう。


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

の記事をもっとみる

注目コンテンツ