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村上隆が描く“カワイイ”の原点。歌川広重へのオマージュから生まれる「新たなるアートの基準」

  • 2026.4.12

東京・元麻布にあるカイカイキキギャラリーで今年1月まで回刺された、「ジャポニズム」をテーマにした村上さんの版画展。実際に購入できるエディション作品が並んだ、貴重な個展の様子をレポートする。

※この記事は2026年smart3-4月合併号に掲載した記事を再編集したもので、記載した情報もその時点のものです。

「ジャポニズム」は西洋美術を大きく改革した起爆剤

東京・元麻布のKaikai Kiki Galleryで、村上隆エディション展「JAPONISME→ Cognitive Revolution: Learning from Hiroshige」が開催されている(すでに終了)。この展覧会のテーマは「ジャポニズム」で、タイトルを直訳すると「ジャポニズム→認知革命・広重に学ぶ」となる。

ジャポニズム(Japonisme)は、主に19世紀後半のヨーロッパで起こった、日本美術・日本文化への強い関心と影響の潮流を指す。その大きなきっかけのひとつは1867年にパリで開かれた万国博覧会での日本美術の紹介だ。そこで特に注目されたのは、葛飾北斎、歌川広重などの浮世絵だった。遠近法を中心とした従来の西洋美術の美の作法とは異なり、フラットな構図、大胆なトリミング、明確な輪郭線、陰影をあまり使わない表現等が特徴だった日本の絵画は、モネ、ドガ、ゴッホ、マネなどに影響を与え、ポスト印象派確立、新たなるアートの基準に大きな革命をもたらせた。

さて、今回の展示は、村上による版画展になる。先立ってニューヨーク・ガゴシアンギャラリーで開催された個展「JAPONISME → Cognitive Revolution:Learning from Hiroshige」で展示された絵画作品のほぼすべてを版画として制作したものだ。ちなみにオリジナル原画であるが、今は世界各所に分散していて、再び一堂に会したものを見ることは難しいだろう。「ジャポニズム」のテーマにより制作された多くの版画は、歌川広重の浮世絵シリーズ「名所江戸百景」へのオマージュから始まるジャポニズムと西洋美術史との関係性を検証するいいきっかけとなっている。

また浮世絵と村上アート作品にはとても共通点が多い。まず浮世絵は狩野派の絵画などと比べ当時としては決して高尚なものではなかった。それが19世紀後半になりヨーロッパに流出してから前述したように逆輸入のカタチ(かなり後になるが)で評価をされる。アニメや漫画をモチーフとした村上アート作品も当初は日本では酷評だった。それが浮世絵と同様に海外での新しいアートの流れを形成、“カワイイ”を中核としてストリートやハイブランドカルチャーとのフュージョンというコラボレートの起爆剤となり、そのムーヴメントが日本でもポジションを掴むこととなる。その先駆者が村上隆であり、本展覧会のテーマにもある“認知革命”をもたらせたファーストランナーというわけだ。本展覧会の開催に際し村上は次のように語っている。「芸術鑑賞において、今までとは全く違った概念と出会ったときに、何もかもが変わって認知されてしまい、その過激な出会いこそ、現代美術の存在理由です。(中略) 芸術もひたすら具象的かつ、ロジカルに展開していた西洋の美術が、浮世絵の発源、浮世絵を解釈しようとした瞬間から、解体せざるを得なくなったという歴史的な事実がありました。」

村上を大きく世界に知らしめた要因のひとつにルイ・ヴィトンとのコラボがあるが、ルイ・ヴィトンのデザイン、特にモノグラムもまた日本の文化に大きく影響を受けたものであることはとても興味深い。

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