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多摩動物公園でオランウータンの赤ちゃん誕生 人工哺育の裏側にある「母の愛」と、26頭の未来を繋ぐ決断

  • 2026.3.26
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多摩動物公園で3月10日、ボルネオオランウータンのメスの赤ちゃんが誕生しました。国内で飼育されているボルネオオランウータンはわずか26頭(2024年末時点)。スマトラオランウータンと合わせても30数頭しかおらず、この新しい命の誕生は、絶滅の危機に瀕する種にとって、まさに一筋の光といえるニュースです。

初めての母・チェリアが見せた「懸命な姿」

母親の「チェリア(11歳)」にとって、今回は初めての妊娠・出産でした。一般的に初産の動物は戸惑いを見せることも多い中、チェリアは産後すぐに赤ちゃんを抱き上げ、体を丁寧になめて世話をするなど、深い母性を見せていたといいます。

しかし、24時間体制で見守る飼育スタッフの目に、異変が映りました。生後10日を過ぎたころ、赤ちゃんの体に衰弱の兆候が見られ始めたのです。オランウータンの赤ちゃんにとって、母親の体にしっかりとしがみつく力は生命線ですが、その力が弱まっていました。

「命を繋ぐため」の母子分離という選択

3月22日、多摩動物公園は苦渋の決断を下します。母子を一時的に分離し、人間が育てる「人工哺育」への切り替えです。

「人工哺育」と聞くと、どこか寂しい響きを感じるかもしれません。しかし、今回のケースは決して母親が育児を放棄したのではなく、赤ちゃんの命を守るための「緊急避難」でした。現在、赤ちゃんは保育器の中で安定した状態にあり、チェリア自身も落ち着いて過ごしているとのことです。

園側は、単に人間が育てるだけでなく、なるべく母子の接点を維持しながら育てる方針を立てています。これは、将来的に赤ちゃんを再びお母さんの元へ戻し、オランウータンとしての社会性を失わせないための取り組みです。

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提供:(公財)東京動物園協会

若き父・ロキ(7歳)と、受け継がれる血統

父親である「ロキ」は現在7歳で、オランウータンとしてはかなり若い父親となります。国内の飼育数が限られる中、若き両親による新しい命の誕生は、日本のオランウータン飼育の歴史においても大きな一歩を刻みました。

多摩動物公園のオランウータンの群れは現在10頭になりました。人工哺育というハードルを越え、この小さな新しい命がいつか群れの中を自由に動き回る日が来ることを、温かく見守りたいと思います。

ライターコメント

日本国内にいるボルネオオランウータンは現在26頭あまりで、7頭しかいないスマトラオランウータンよりは少し多いですが、いずれにしろ大変貴重な存在です。そんな中、こうして生まれてきてくれたことがとても嬉しく、ぜひ元気に育ってほしいと思います。

<ライタープロフィル>ゆんち

2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。

現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。

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