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美容研究家【91歳・小林照子さんの現在】若さを保つ秘訣は?仕事を続けられている理由も

  • 2026.3.26

美容研究家【91歳・小林照子さんの現在】若さを保つ秘訣は?仕事を続けられている理由も

頭脳も体も肌も心も、サビつき、コゲつきを一切忘れたかのような91歳。どうすればこんなスーパーシニアになれるのだろう? 小林照子さんの頭の中と暮らしをのぞかせてもらいました。

小林照子さん(91歳)

こばやし・てるこ●1935年生まれ。美容研究家・メイクアップアーティスト。
美容学校入学後、コーセー化粧品に入社しヒット商品を連発。メイクアップアーティストとしても活躍。
91年、コーセー取締役・総合美容研究所所長を退任後、56歳で美・ファイン研究所を設立。94年、59歳で[フロムハンド]メイクアップアカデミー開校。2010年、75歳で青山ビューティ学院高等部をスタート。19年、84歳のときに女性リーダー育成を目指す「アマテラス アカデミア(ATA)」を開設。91歳の今も現役でビューティビジネスに携わる。
「一般社団法人 日本メイクアップアーティスト協会JMAN」代表理事。著書多数。

ずっと休むことなく仕事を続けてきた

しゃきっと伸びた背筋、キュッと上がった口角、よく通る澄んだ声、淀みない会話、歩くスピードは若者並み。そして、圧倒的美肌の持ち主である小林照子さんはまさに奇跡の91歳。どうすれば、こんな若さを保てるのだろう? 秘訣はどこにあるのか?

「もの忘れがひどくなったり、長く床に伏せることもなく元気でやってこられたのは、常に歩みを止めなかったためかもしれません。今まで、ずっと仕事を続けてきて長期の休みというものを取ったことがないんです」

化粧品会社コーセーの取締役を退職後、56歳で起業した小林照子さんは、その後も次々と美容関連の事業を興してきた。91歳の今もはつらつと仕事をこなし、後進の育成に力を注ぐ。仕事が好きだから、休むことなく働いてこられた?

「仕事が好きというより、メイクで人を喜ばせるのが好きなんです。すべてのことがそこにつながっていて、たとえばテレビで気になる顔の人が出てくると、『この人の眉毛がこうだからこう見えるんだわ』とか思いながら、スマホで一生懸命、画面の動画を撮っています。音声はほとんど聴いていない(笑)。常に人の顔の印象に興味があるので、プライベートと仕事の境目がなくなってしまうんです」

もともと演劇に興味があった小林さん。次第に自分が演じるよりも、演じる人のキャラクターをつくり上げるメイクアップに関心が移っていった。そのテクニックを学びたくて美容学校に入学したが、教えていたのは花嫁さんをいかにきれいにつくり上げるかといったハウツーだった。ここでは自分の求めているものが得られないと思った小林さんは、化粧品会社コーセーに入社。そこで35年以上にわたって美容について研究を続け、ひとりひとりの個性を引き出す「ナチュラルメイク」を創出。時代をリードするヒット商品も数多く生み出した。

いつも言葉を使って何かを考えている

そんな小林さんの頭の中はどうなっているのだろう。「いつも何かを考えていて、頭を休ませていることはほとんどない」という驚きの答えが返ってきた。

「次の仕事のことや、あれをこうしたらどうなるかしら、とか常に言葉を使って考えています」

ぼーっとしたり、頭を空っぽにする時間はないのだという。

「家でネコと遊ぶときも、ずっと話しかけています(笑)」

このインタビューを受けながらも、手はメモを取っていた。

「人の話を聞きながら速記みたいに書くのが習慣で、打ち合わせ中も三角や丸などの図形やマーク、絵も使いながら、頭の中でグループ分けしたりして整理しています」

職業柄、頭の中のイメージを手で描いて表現する脳の回路が発達しているのだろう。

「メイクをするときは、イメージが頭の中にあるんです。その人の個性がさらに輝く完成イメージに向かって、設計図通りにメイクしていく感じです。手を動かしながら次の工程が見えているから速いんです」

頭の中に設計図のない人は、その場でアイラインをどう引こうかとかいちいち考えるため遅いのだとか。経験値が上がるにつれ、「勝手に手が動いて頭の中のイメージを描いてくれる瞬間がある」のだという。常に脳を回転させている小林さん。それが衰え知らずの理由なのだろう。

「よく、講演中などに頭の中が真っ白になって言葉が出なくなったというような話を聞きますが、私はまだそういう経験がないのね。言葉を頭の中で繰り返しているから、言葉がスムーズに出るのかもしれません」

75歳を過ぎて始めた子どもの頃からの夢

小林さんは75歳で彫刻を、80歳頃から絵を、86歳からピアノを始めた。

「75歳を過ぎた頃から、興したそれぞれの会社を任せられる後継者を育ててきました。それと同時に子どもの頃からやりたかったことを始めたんです」

趣味で始めたとはいえ、彫刻や絵画は仕事にも通じる。

「メイクで顔をつくり上げるときも彫刻的に考えています。メイクは刃物ではなく色彩で彫りを入れていく点が彫刻と違うだけ。色彩で陰影を作って、顔を小さく見せたり大きく見せたりするのです。結局、仕事にもつながっていますね(笑)」

念願かなって彫刻家・田島享央己さんに師事している。

「先生が作品を創る様子を見ながら、学んでいます」

会社のミーティングルームに飾られている小林さんの彫刻作品は、ハシビロコウや愛猫など。ハシビロコウの眼差しは強烈で、一度見たら忘れられないインパクトがある。

「あの部屋で取材を受けたときに、インタビュアーの方が『ずっと見られている気がする』と(笑)。ハシビロコウは脚が細いのに頭が大きくてくちばしが大きくて、そんな不安定さの中の強い目が魅力です。鳥は眼差しに注目します」

彫刻も絵も、小林さんの作品からは不思議なパワーがあふれている。

クスノキやケヤキの木を彫って作った作品たち。フクロウの半眼、ハシビロコウの鋭い目が特徴的。

込めた祈りや願いが手から伝わる

指先を使うことは脳にいい、と言われるが、小林さんが手を使うとき、そこには強い思いが込められている。その思いが手を通して伝わっていく。

「私がメイクをすると、その人のスイッチがぐっと入ると言われます。メイクするときは『この人が喜びますように、幸せになりますように』と願いや祈りを込めます。人と人が肌を触れ合うって稀有なことでしょ。私は顔に直接触れさせてもらうわけです。それは鮮烈な経験なので、何十年も前に一回メイクしただけの人が私のことを覚えていてくれたりします」

コシノヒロコさんからは「自分の個性を引き出して尊重してくれるメイキャッパーだ」と評され、初井言榮さんからは「メイクをしてもらっているとき、母に抱かれた乳飲み子になった気分だった。おっぱいを飲んでいるような安堵感があった」と言われた。小林さんが「魔法の手」を持つと称されるゆえんだ。

「メイクされている人は、自分が理解されている感覚になるのかもしれません。年上の人にも、『きれいになりますように、いい舞台になりますように』と母親のような気持ちでメイクしますから」

「思いを込めれば、必ず伝わる」と確信するに至ったエピソードがある。

「18歳の頃、小学校の給仕というお茶くみの仕事をしたことがあります。高齢で退職された前任者は、「彼女の淹れるお茶は最高」と評判の人でした。ぬるめが好きな人、濃いめが好きな人など、30人ほどの教職員すべての好みに合わせて淹れ分けたそうで、安いお茶っ葉でも、とてもおいしくなった、と。私はとてもかなわないので、せめて『おいしくなりますように』と祈りながらお茶を淹れました。すると、『結構じょうずだよ』と言ってもらえて。気持ちを込めれば通じる、とそのとき確信しました。メイクアップアーティストになってからも、その信念は変わりません」

フランス製のオイルパステルを使って描いた作品。昨年、広島三越で展覧会も開催された。手に持った作品には金箔が施されている。

撮影/小笠原真紀
取材・文/依田邦代

※この記事は「ゆうゆう」2026年4月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

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