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「肌に貼るだけだから大丈夫」は間違いだった。実は『湿布』が胃痛や潰瘍を引き起こす…意外とやりがちな“誤った使い方”とは?

  • 2026.4.26
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

肩や腰の痛みに欠かせない湿布。飲み薬とは違い「肌に貼るだけだから体への影響は少ない」と思っていませんか?実は、痛み止め成分を含む湿布は、使い方を誤ると胃にダメージを与える可能性があります。

なぜ外用薬である湿布が胃に影響するのか、そして安全に使うための注意点とは。皮膚科医・竹内さんに、知っておくべき正しい知識を伺いました。

なぜ「貼るだけ」の湿布で胃が荒れてしまうのか?

---湿布は飲み薬と違って外用薬です。それなのに、なぜ胃が荒れるリスクがあるのでしょうか?

竹内さん:

「湿布薬で胃が荒れる可能性があるのは、主にロキソプロフェン、ジクロフェナク、ケトプロフェン、フェルビナクなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を含む貼付剤です。外用薬は飲み薬より局所中心に働くため、一般には全身への影響は少ないと考えられますが、「皮膚に貼る=胃に影響しない」という意味ではありません。

湿布薬は有効成分の一部が皮膚から吸収されて血中に入り、体内でプロスタグランジンという物質の産生を抑えます。このプロスタグランジンは痛みや炎症に関わる一方で、胃では粘液や重炭酸の分泌を保ち、粘膜の血流を維持して胃酸から胃壁を守る役割も担っています。そのためNSAIDs成分が全身に回ると、飲み薬ほどではなくても胃の防御機構が弱まり、胃痛、胃部不快感、胃炎、場合によっては潰瘍や出血につながることがあります。
実際に添付文書にも、上腹部痛や胃部不快感などの消化器症状、製品によっては消化性潰瘍や出血への注意が記載されています。さらに、貼る枚数が増える、広範囲に使う、長期間続けると、体内に入る薬の総量は増えやすくなります。

つまり、湿布による胃への影響は「ゼロか100か」ではなく、成分が吸収される以上、使用量・使用範囲・使用期間に応じてリスクが積み上がると理解するのが適切です。」

ついやりがち? 胃への負担を大きくする「危険な使い方」

---「外用だから大丈夫」と油断してしまいそうです。特に避けるべき、胃への負担がかかりやすい使い方を教えてください。

竹内さん:

「胃への負担を大きくしやすい使い方として、まず挙げたいのが広い範囲に何枚も貼ることです。肩だけでなく腰、膝、首など複数部位に同時に貼ると、体全体としては吸収されるNSAIDs量が増える可能性があります。
次に注意したいのが、決められた貼り替え回数を超えて頻回に交換することや、効きが弱いからといって重ね貼りすることです。これらは局所の皮膚トラブルだけでなく、全身曝露量を上げる方向に働きます。

また、飲み薬の鎮痛薬を使用しているのに、湿布は別物と思って追加するのも見落とされやすい危険なパターンです。内服NSAIDsやアスピリン、ステロイド、抗凝固薬などは、消化管出血リスクを高めることが知られています。ここに貼付剤が加わればより消化管の副作用に注意が必要と考えられます。加えて、長期連用、喫煙、飲酒、高齢、既往の胃潰瘍がある人では、同じ使い方でもリスクが上がります。

皮膚が傷んでいる場所に貼ることも、局所刺激を強めるだけでなく適切な使用とはいえません。つまり「外用だから安全」ではなく、枚数・期間・併用薬・貼り方の条件が重なるほど、胃への負担は内服に近づく方向へ動くと考えるのが大切です。」

胃を守りながら安全に湿布を使うための3つの鉄則

---私たちはどのように湿布と付き合えばよいのでしょうか。安全に使うためのコツを教えてください。

竹内さん:

「最も大切なコツは、湿布を「気軽な貼り薬」ではなく、全身にも影響しうるNSAIDs製剤として扱うことです。実践面では、まず1日の上限枚数と貼り替え回数を必ず守ることが基本になります。
例えば市販のロキソプロフェン貼付剤では、1日4枚まで・連続して2週間以上使用しない、といった明確な使用制限があります。効かないからといって自己判断で増量したり、複数部位に次々追加したりするのは避けるべきです。

次に、飲み薬の痛み止めや頭痛薬、低用量アスピリンを使っている人は、湿布を追加する前に薬剤師や医師へ確認することが重要です。本人は「飲み薬1種類、湿布1種類」と思っていても、実際にはNSAIDsの重複になっていることがあります。また、傷や湿疹のある皮膚に貼らないことも安全のポイントです。使用期間も漫然と延ばさず、「数日使っても改善しない」「貼らないとすぐぶり返す」なら、原因検索が必要なサインと考えたほうがよいでしょう。

さらに、みぞおちの痛み、黒色便、吐血、胸やけの悪化、強いだるさなどが出た場合は、単なる胃もたれと決めつけず使用を中止して受診を考えてください。外用剤はたしかに便利ですが、安全に使うコツはシンプルで、決められた量を、決められた期間だけ、他の鎮痛薬と重ねずに使うことに尽きます。これが胃を守るうえで最も現実的で効果的な予防策です。」

湿布は「薬」であることを忘れずに、賢い活用を

湿布は便利で身近な存在ですが、NSAIDsという鎮痛成分を含んでいる以上、全身への影響を無視することはできません。大切なのは「外用だから安全」という思い込みを捨て、あくまで「薬」として正しく扱うことです。

決められた枚数や期間を守り、飲み薬との併用に注意するだけで、リスクはぐっと抑えられます。万が一、体調に変化を感じたら自己判断せずに受診することが肝心です。正しい知識を身につけて、賢く痛みと付き合っていきましょう。


監修者:竹内
医学部を卒業後、現在は皮膚科医として病院やクリニックで外来診療を行っています。 皮膚科医として専門的な内容をわかりやすく伝えることに重点をおき、WEB記事監修や執筆活動も行っています