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「胸が苦しい…」病院に受診するも、検査では“異常なし”→数年後、激しい発作で救急搬送され…50代女性を襲った“恐ろしい異変”

  • 2026.4.20
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「胸が苦しいけれど更年期のストレスかしら」。

50代のIさんは原因不明の胸痛に悩み、大きな病院でカテーテル検査を受けました。しかし、受診時にはたまたま痛みが治まっており、症状をうまく伝えられず、結果も「異常なし」でした。

「心臓の病気じゃないなら、私の気のせい?」「ひとりで大騒ぎしたみたいで嫌だわ」。そうして時折生じる胸の痛みを我慢し続けたIさんは、数年後に激しい発作で搬送され、心筋梗塞と診断。現在はいつ発作が起きるか怯える生活に後悔を募らせています。
皆様こんにちは。心臓手術を含め、日々循環を守る麻酔科専門医の松岡です。

今回は更年期に起こりうる心臓のトラブルについて解説します。おひとりで悩まずぜひ受診を検討してみましょう。

異常なしの正体は「微小血管の痙攣」

「カテーテル検査が異常なしなら心臓は健康だ」と誰もが納得します。
しかし、太い血管が綺麗でも、心筋の奥深くにある「微小血管」が悲鳴を上げている可能性があります。これが近年注目される新しい概念「INOCA(微小血管狭心症)」です。

【INOCAが心臓を蝕むフロー】

  • 更年期を境に、血管を守る女性ホルモンが急減する
  • 髪の毛よりも細い心筋の奥の「微小血管」が過敏になり、痙攣しやすくなる
  • 痙攣によって極端に血管が狭くなり、一時的に血流が途絶える
  • 太い血管は綺麗なのに、心筋は深刻な酸欠状態に陥り胸が痛む

「更年期のせい」という思い込みと見えない心臓病

「異常なしと言われたし、更年期や自律神経の乱れかしら」と痛みをやり過ごしてしまうのは、ごく自然な心理です。検査で太鼓判を押されれば、その上で病気を疑うのは難しいものです。

INOCAは「気のせい」でも「ただの更年期」でもありません。米国の女性を対象とした大規模研究でも、太い血管に異常がないINOCAの方では、心臓死や心筋梗塞の発症率は10年の追跡で12.8%と決して低くないことが報告されています。

特に女性ホルモンが減少する50代前後で、高血圧や精神的ストレスが重なる場合は危険です。強いストレスは自律神経を乱し、微小血管の痙攣を強く引き起こします。

一般的なカテーテル検査は「太い血管の詰まり」を見るため、極細の血管の異常は写りません。
医師の「異常なし(太い血管は大丈夫)」という言葉を「心臓の病気ではない」と解釈してしまいがちです。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

「ただのストレス」と誤認して心臓を限界まで追い込まないよう、特有のサインを知っておいてください。

1.ちょっとした家事の後や安静時にも胸が苦しくなり、痛みが長く続く

一般的な狭心症と異なり、安静時や軽い労作後にも起こり、休んでも数十分~数時間と痛みがダラダラ続く傾向にあります。

2.胸の痛みに加え、背中の痛みや極端な息切れを伴う

痛みが背中や肩に放散したり、異常な疲労感や息苦しさを伴ったりするのは、女性の心臓病に多く見られる危険な警告サインです。

3.ニトログリセリン(狭心症の舌下錠)が効きにくい、または効くのに時間がかかる

ニトログリセリンを内服されている場合にも症状が変わらない場合には要注意です。太い血管を広げる薬では、心筋の奥深くで広範囲に起きている微小血管の痙攣を十分に解除できないためです。

まとめ

検査で異常がないと言われれば、気のせいだと納得してしまうのは当然です。また、症状には波があるため、受診時に落ち着いていると、説明が大袈裟なのではと感じて、控えめに伝えてしまうこともあります。

残念ながら、医療ではそうしたすれ違いがよく起こります。まずは今日、胸の痛みを感じた「時間帯」と「長さ」をスマホや手帳にメモしてみてください。そして、循環器内科を受診してみましょう。 症状を正しく伝えれば適切な検査と評価が望めます。ひとりで大騒ぎしているだけかもと不安になる必要はありません。すっかり納得できるまで、ぜひお気軽にご相談ください。


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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