1. トップ
  2. 「尿潜血が陽性」健康診断で発覚するも“痛くないから”と放置…→数年後、医師から50代男性に言い渡された“恐ろしい病名”とは

「尿潜血が陽性」健康診断で発覚するも“痛くないから”と放置…→数年後、医師から50代男性に言い渡された“恐ろしい病名”とは

  • 2026.4.19
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「そういえば尿潜血が陽性だったけど、見たところ赤くないし、痛くもない。最近忙しかったから疲れが出ただけだろう」
50代の会社員Fさんは、春の健診結果を思い出しながら、トイレを後にしました。

しかし、数年後。突然の真っ赤な血尿に驚き病院へ駆け込んだFさんに告げられたのは「膀胱がん」でした。幸い内視鏡手術ですみ、膀胱は残せました。しかし、膀胱がんは再発率が非常に高いため、数ヶ月ごとに尿道からカメラを挿入して膀胱を観察する検査や、排尿時に痛みに耐えながら予防治療(BCG注入)を繰り返しています。

皆様こんにちは。日々手術室で泌尿器がんの患者さんに向き合う麻酔科専門医の松岡です。今回は、「痛くないから大丈夫」という油断が招く泌尿器の病気について解説します。

尿潜血は「静かに発せられたサイン」

目で見て血が混じっていないし、排尿時の痛みもない。だから自分は大丈夫だと、誰もが最初は考えます。

しかし、泌尿器科の領域において、「痛くない微量の出血」は実は危険なサインです。

【尿潜血陽性から膀胱がん進行へ至るフロー】

  • 膀胱の内側にがん細胞が発生し、少しずつ大きくなる
  • がんの表面は非常に脆く、尿が触れるわずかな刺激で微量に出血する
  • 肉眼では黄色い普通の尿に見える「目に見えない出血」を捉えたのが「尿潜血(+)」である
  • 痛みがないため放置され、がんは膀胱の壁の奥深くへと根を張っていく
  • 進行して初めて、肉眼でもわかる「痛みのない真っ赤な血尿」が出る

「痛くないから大丈夫」という思い込みと終わりのない治療ループ

私たちは「痛い=悪い病気」と考えがちですが、尿に血が混じる場合は逆です。「痛みのない血尿」こそ、膀胱がんが隠れているリスクが跳ね上がる危険なサインなのです。
尿潜血陽性でがんが見つかる確率は約4%ですが、目で見てわかる真っ赤な血尿(肉眼的血尿)になると約17%に上昇します。

特に以下に該当する方は、がんが静かに進行しているリスクが高まります。

  • 50代以上
  • 喫煙習慣がある
  • 毎日コーヒーを多飲する男性(非喫煙者でもリスク増)

    「たばこを吸わないから安全」という油断は禁物です。
    さらに、膀胱がんは「30〜70%の確率で再発する」厄介な病気です。発見が遅れると、内視鏡で切除できても以下のような過酷な治療が待っています。
  • 数年にわたる痛みを伴う定期的な膀胱鏡検査
  • 副作用の強い「BCG注入療法(※)」の繰り返し
    ※結核ワクチンを膀胱内に注入し、意図的に強い炎症を起こして再発を防ぐ治療。効果は高い反面、トイレから出られないほどの頻尿や排尿痛を伴う

尿潜血という早期のSOSで受診していれば、この「終わりのない治療ループ」を回避できたかもしれないのです。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

「疲れが出ただけ」と誤認してがんを進行させないよう、膀胱がん特有のサインを知っておくことが不可欠です。以下の症状には特に注意してください。

1.一度だけ「真っ赤な尿」が出たが、すぐ普通の尿に戻った

膀胱がんの出血は一時的に止まることがよくあります。「治った」と勘違いしやすい、最も危険なサインです。

2.頻尿や排尿時痛があり、膀胱炎の薬を飲んでも治らない

がん細胞が膀胱の壁を刺激している「膀胱刺激症状」の可能性があります。特に「上皮内がん」という特殊なタイプは、出血よりも膀胱炎に似た症状がダラダラと続く特徴があります。

3.健診で「尿潜血(+)」を連続して指摘されている

一時的なものではなく、お腹の中に出血源(腫瘍や結石など)が潜み続けている証拠です。一度結石を指摘されていても、念のためあらためて受診しましょう。

まとめ

痛くないからと様子を見た結果、終わりの見えない通院や検査、治療が続いてしまう可能性は誰しも抱えています。特に膀胱がんの再発率はとても高く、膀胱鏡での手術を複数回することも決して珍しくありません。いずれにしても生活の質を著しく下げてしまう病気といえます。

まずは今日、引き出しにしまった健診結果の「尿潜血」の項目を確認してみてください。もし陽性(+)であれば、自己判断せずに泌尿器科を受診しましょう。超音波や尿検査など、痛みのない検査で今の状態がよくわかります。

がんが膀胱に深く根を下ろしてしまう前に早めに対応して、健康で快適な毎日を守りぬきましょう。


監修・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

の記事をもっとみる