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「月8.2万」で築12年の中古マンションを購入→入居者から月11.2万の家賃を徴収…4年後、40代男性を待ち受けていた“異変”

  • 2026.5.4
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「これなら、私に万が一のことがあっても家族に資産を残せますよね?」

6年前、私の前でそう語っていた42歳のAさん(仮名)の晴れやかな顔を、今でも鮮明に覚えています。都内の中堅メーカーに勤務し、年収は720万円。家族思いで、堅実。そんな「属性のいい」彼が選んだのは、都心から少し外れた場所にある築12年の中古ワンルームマンションでした。

販売価格は2,400万円。フルローンを組み、月々の返済は8万2,000円。対して入居者からの家賃収入は11万2,000円です。管理費や代行手数料を引いても、毎月「3万円の副収入」が入る計算でした。

「年金代わりになりますし、生命保険代わり(団体信用生命保険)にもなる。やらない理由がないですよ」その言葉が、わずか数年で思わぬ結果になるとは、彼も、そして当時の私も想像しきれていませんでした。

忍び寄る追加コストと「利益」の消滅

異変が起きたのは、購入から4年が経過した頃です。マンションの管理組合から「大規模修繕に向けた積立金不足」を理由に、月々の管理費・積立金が一気に9,500円値上げされる通知が届きました。

これで、毎月の手残りは約2万円に圧縮。さらに追い打ちをかけたのが、毎年の固定資産税と都市計画税です。年額10万8,000円。月割りに直すと9,000円。

「3万円の利益」だと思っていたものは、いつの間にか「実質1万1,000円」にまで目減りしていました。

「それでも、持ち出しがないだけマシだ」と自分に言い聞かせていたAさんに、決定的な「1通のメール」が届きます。入居者からの退去届でした。

「空室」という恐怖…毎月10万円の持ち出し

次の入居者が決まるまでの3ヶ月間、家賃収入はゼロになりました。しかし、銀行への返済8万2,000円と管理費等の支払いは1円も待ってくれません。毎月10万円以上の持ち出しが、彼の家計を直撃します。

さらに、新しい入居者を迎えるためのハウスクリーニング代とエアコン交換費用、計18万円の請求書が届きました。

「銀行さん、この物件を売りたいんです。今の残債はいくらですか?」

相談に来たAさんの表情には、6年前の面影はありませんでした。しかし、私が出した回答は残酷なものでした。

「売るにも売れない」オーバーローンの罠

現在の物件相場は、入居者が入れ替わる際の家賃下落(11万2,000円→10万5,000円)を反映し、査定額は2,100万円。

対して、ローンの残債は2,180万円。売却しても、仲介手数料などの諸経費を含めると、手出しで200万円近い「現金」を用意しなければ、抵当権を抹消して売ることすらできないのです。

「家族のために残そうとしたマンションが、今や家族の旅行や教育費を削る原因になっている……」

Aさんは、毎月のキャッシュフローが赤字に転じないよう、副業で夜間の配送の仕事を検討し始めていました。

「節税になる」という謳い文句も、実態は建物の減価償却費という「帳簿上の経費」を給与所得と合算することで所得税が還付される仕組みです。現金は出ていかないのに経費として計上できる――その恩恵は、ローン返済が進んで減価償却が終わると消えます。さらに「帳簿の黒字」と「財布の赤字」は別物であり、節税額が持ち出し額を上回ることはほとんどありません。

シミュレーションに欠落していた「最悪の事態」

投資用ワンルームマンションは、好条件のときは「金の卵」に見えます。

しかし、建物の老朽化、家賃の下落、そして金利上昇というリスクが積み重なると、それは瞬時に「所有しているだけで資産を食いつぶす装置」へと変貌します。

「数字のシミュレーションには、常に『最悪の事態』が含まれていない」。Aさんの苦渋に満ちた表情は、現場に立つ私たちが最も重く受け止めなければならない教訓でした。


ライター:CF_SOU

元メガバンク勤務。30年以上の金融業界経験を持ち、現在は証券アナリスト、簿記2級の知識を活かして、現場視点での金融コラムを執筆中。融資審査や債権回収の現場で培った「お金の裏側」を伝えます。