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オートロックなのに「顔パス解錠」→マンション管理員の“親切心”に物議「サービスの一環」「厳格なルール化が必要」

  • 2026.5.19
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。不動産管理会社で10年以上の現場実務に携わってきたマンション管理士のS.Kです。マンションのエントランスで両手に荷物を抱えているとき、管理員が中からオートロックを開けてくれた経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、このような管理員の親切心が生み出すセキュリティ上の盲点と、運用ルールを見直した理事会の議論について解説します。

主観的な判断による顔パス解錠が招く防犯上のリスク

マンションの日勤管理員は、居住者の顔と名前を概ね把握しています。そのため、エントランスで荷物を抱えた居住者や高齢者を見かけると、管理員室から出てオートロックを解錠するケースが全国的に見られます。

これは親切心からの行動ですが、一部の居住者から「主観的な判断で解錠する運用はセキュリティ上問題ではないか」という指摘が寄せられるケースが増えているのです。管理員個人の判断に依存する運用は、なりすましや来客の共連れ侵入を招くリスクを含んでいます。

また万が一、事件が起きた際に「どのような方法で入館したのか」が特定しにくくなり、原因究明や再発防止策の検討が難航します。「顔を知っている」という判断基準は主観的であり、引っ越し直後の居住者や親族などの来客を明確に区別するのは困難です。

結果として、多額の費用をかけて導入したオートロックというセキュリティ設備が意味を失ってしまいます。

安全を守る仕組みづくりと親切心を両立させる新たなルール

こうした問題が表面化すると、理事会では様々な意見が飛び交います。「管理員の親切心はサービスの一環である」と擁護する声がある一方で、「居住者の安全を守る仕組みとしては厳格なルール化が必要だ」という意見も上がります。管理員個人の判断に依存した状態では、もし事件が起きた際の対応が難しくなるのは事実です。

そこで解決策として、多くのマンションでは新たな運用ルールを採用しました。まず管理員は原則としてオートロックの解錠を行わないルールを徹底します。荷物を抱えた居住者や高齢者に対する配慮は、居住者自身がキー操作で解錠した後にドアを押さえるなどの支援へと変更することになりました。

管理員への伝え方とルール明文化の意義

ルールの変更を理事会などから管理員へ伝える際は、これまでの対応を否定するのは禁物です。サービスの形を「ドアの解錠」から「ドアを開けた後の手伝いや案内」へシフトする方向で説明しましょう。このような伝え方をするほうが、管理員のモチベーションを維持しながらスムーズに運用を変更できるはずです。

実務の現場を見ると、管理員の「顔パス」による解錠は、長年勤続している管理員ほど居住者との信頼関係から生じやすい傾向があります。だからこそ、善意と安全の線引きを管理組合として明文化することが、トラブルの予防につながります。

マンションのオートロックは、居住者本人のキー操作で解錠するのが原則です。管理員の業務範囲は管理委託契約で明確に定められているため、契約外の対応を期待しすぎるのは、管理員と居住者双方にとって望ましくありません。管理組合として運用ルールを明文化し、契約に基づいた範囲で安全な仕組みを維持していくことが大切です。



ライター:S.K(マンション管理士)
不動産管理会社で10年以上の現場実務に携わり、業界団体の評価制度策定委員会に所属していた経験がある。現在はライターとして、自身の豊富な経験・知見をもとに、一次情報を盛り込んだ不動産記事を多数執筆している。


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