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駐輪場の屋根を突き破り…10年以上前、マンションで起きた“事故”、格安賃貸に潜む“思わぬ落とし穴”

  • 2026.5.12
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。マンション管理士の資格を持ち、不動産管理の現場実務に10年以上携わってきたライターのS.Kです。安い家賃の物件は経済的に魅力的ですが、その裏には建物の管理コストが削られている事情が潜んでいる場合があります。

今回は、格安の築古賃貸マンションで起きた鉄製手すりの落下事故を紹介します。これは私が不動産管理会社の現場で働いていた、10年以上前の出来事です。

錆びた鉄製手すりの落下と見過ごされた危険な予兆

当時私が勤務していた会社では、元請けの賃貸管理会社から点検業務を受託していました。その物件は、点検内容を月に一度の外観目視のみに絞り込むことで、格安の家賃設定を維持している状態だったのです。

ある日のこと、マンションの窓の外側に設置された鉄製手すりが根元から折れ、落下する事故が発生します。手すりは直下にある駐輪場のトタン屋根を突き破りましたが、たまたま利用者がおらず人的被害は免れました。

公道にも近い場所であり、もし通行人に直撃していれば重大な事故につながる恐れがあった状況です。事故の後、点検報告書を振り返ると、手すりの錆自体は以前から写真に残っていました。しかし、古いマンションにおいて鉄部の錆は珍しいものではなく、私や当時の現場担当者も「落下の危険がある」とまでは判断できなかったというのが正直なところです。

格安家賃を維持するコスト構造と工作物責任の重さ

こうした見落としが生まれる背景には、格安物件特有のコスト構造があります。家賃を安く保つためには、どうしても日常の点検や修繕の費用を削らざるを得ないのが実情です。

オーナーからは点検の責任を問う声も上がりましたが、元請けの管理会社が間に入ってフォローしてくれたため、大きな問題には発展しませんでした。しかし、もし人身事故が起きていれば民法717条の工作物責任により、建物の所有者であるオーナーが無過失でも損害賠償責任を問われる仕組みになっています。

点検業務を委託されていた私の会社も、受託範囲によっては過失責任を問われる可能性もありました。全員が「このくらいは仕方ない」と妥協していたことが、今回の落下事故を招いた要因といえるでしょう。

内見時の確認ポイントと異常を見つけた際の迅速な行動

「家賃が安い分だけ管理が手薄になっているかもしれない」という視点を、入居者側も持っておく必要があります。内見の際にはベランダの手すりや外廊下の柵など、共用部分の鉄部がどの程度錆びているかを確認してみてください。

それだけでも、物件の管理状態はある程度推測できます。また、入居後に手すりのグラつきや塗装の剥がれに気づいた場合は、早めに管理会社や管理員室へ報告することが大切です。「古い建物だから仕方ない」と見過ごしがちですが、鉄部の腐食は進行すると突然崩落する危険性を秘めています。

手すりのグラつきや釘の浮きなどは、建物の劣化が進んでいる具体的なサインです。気づいたその日に報告することが、ご自身と周囲の安全を守ることにつながります。



ライター:S.K(マンション管理士)
不動産管理会社で10年以上の現場実務に携わり、業界団体の評価制度策定委員会に所属していた経験がある。現在はライターとして、自身の豊富な経験・知見をもとに、一次情報を盛り込んだ不動産記事を多数執筆している。


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