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「手が震えましたよ」50代男性が部屋を借りるため、長年絶縁の子どもに電話した結末

  • 2026.4.26
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

部屋探しでは「家賃はいくらか」「駅から何分か」といった条件に目が向きがちです。しかし、実際にはそれだけでは決まらないケースが少なくありません。

見落とされがちですが、審査で重視されるのが「保証人」と「人間関係」です。

今日は、入居審査をきっかけに、長年断絶していた家族と向き合うことになった50代男性の実話をご紹介します。無事に契約は成立したものの、その裏で突きつけられた現実は想像以上に重いものでした。

住み替えを機に訪れた「想定外の条件」

今から2年ほど前、私が担当したお客様に50代の男性Aさんがいました。離婚後は一人暮らしを続けており、勤務先も安定している方です。

「今の部屋が手狭になってきたので、そろそろ住み替えたいんです」

そうご相談をいただき、条件に合う物件をいくつかご案内しました。立地・賃料ともに納得できる部屋が見つかり、申込みまでは非常にスムーズに進みます。

ところが、審査の段階で思わぬ条件が提示されました。

「連帯保証人を立ててください」

その場でAさんは少し表情を曇らせ、こう返しました。

「保証会社への加入だけじゃダメなんですか?」

今回の物件は、オーナーの意向により「保証会社への加入+連帯保証人を立てることが必須」という契約条件でした。

現在では保証会社のみで契約できるケースが主流になりつつありますが、オーナーによってはリスク回避のため、人的保証も求めるケースが一定数存在します。

ここから先、単なる部屋探しでは済まない問題へと発展していきます。

「頼れる人がいない」という現実

Aさんに保証人の候補を確認すると、しばらく沈黙が続きました。

「…正直、頼める人がいないんです」

ご両親はすでに他界。兄弟とは疎遠。

離婚後、親族との関係もほぼ途絶えていた状況でした。

「誰かお願いできる方はいませんか?」

不動産会社としては形式的に確認するしかありません。ただ、この問いがAさんにとってどれほど重いものか、表情から伝わってきました。

保証人が立てられなければ、この物件は契約できません。別物件を探すしかない状況です。

しかし、Aさんはこう言いました。

「どうしてもこの部屋がいいんです」

その理由は、職場までの距離。通勤時間が往復で1時間短縮できる立地でした。もしこの物件を逃せば、年間で250時間以上のロス(1日1時間×年間250日)が発生する計算になります。

時間=収入に直結する仕事だったAさんにとって、これは年間で30万円以上の機会損失にもなり得る条件でした。

最後に残った選択肢「連絡を絶った子ども」

数日後、Aさんから連絡がありました。

「一人だけ、思い当たる人がいます」

それは、長年連絡を取っていなかったお子さんでした。過去の事情から関係はほぼ断絶状態。連絡先は知っているものの、何年も会っていないとのことです。

「正直、連絡したくなかったんですけど…」

それでも、審査を通すために連絡する決断をされました。後日、Aさんはこう話してくれました。

「電話をかけるとき、手が震えましたよ」

事情を説明し、保証人を依頼。結果として、お子さんは了承してくれました。

契約は成立…しかし残った“別の問題”

保証人が確保できたことで、審査は無事通過。契約も問題なく完了しました。

ただし、その裏で起きていたことがあります。保証人の書類手続きのため、Aさんは久しぶりにお子さんと対面しました。

「…書類、これでいい?」

「うん、それで大丈夫」

会話はそれだけ。必要最低限のやり取りだけで終わったそうです。

Aさんは後日、こう漏らしました。

「部屋は手に入ったけど、なんとも言えない気持ちになりました」

関係が修復されることはなく、あくまで“保証人としての関係”だけが成立した状態でした。仮に保証人を断られていた場合、次のような現実的な損失も発生していた可能性があります。

  • この物件の契約ができない
  • 再度部屋探しで1〜2ヶ月のロス
  • 通勤時間の増加による体力・時間の消耗
  • 焦って条件の悪い物件を選び、結果的に家賃や環境で後悔するリスク

一つひとつは小さく見えるかもしれませんが、積み重なると「お金・時間・生活の質」すべてに影響します。入居審査は単なる手続きではなく、その後の生活そのものを左右する分岐点でもあります。

審査は「お金」ではなく「関係性」も見られている

入居審査は、収入や職業だけで決まるものではありません。むしろ今回のように「誰に頼れるか」で結果が変わるケースも少なくありません。

特に以下の点は、事前に考えておくべきです。

  • 保証人を頼める人がいるか
  • 保証会社のみで契約できる物件を選ぶか
  • 自治体の居住支援制度(家賃債務保証制度の利用支援など)を検討するか

準備を怠ると、契約ができないだけでなく、引越しの遅れによる収入減や生活リズムの崩れなど、気づかないうちに大きな損失へとつながっていきます。

住まい探しは、単なる条件比較ではありません。その人の「背景」や「人間関係」まで問われる場面でもあります。

だからこそ、部屋を探す前に一度立ち止まり「いざという時に頼れる人はいるか」という視点を持っておくことが、後悔を防ぐ大きなポイントになります。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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